第6章:まとめ買いと連続クエストと、いつもの報酬(前編)
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ギルドの朝は、だいたい騒がしい。
でも今日は、セイの声が一段と響いていた。
「ケイ!見てくれ!投網10枚セット、まとめ買いしてきた!」
俺は思わず裏紙を落とした。
節約魂が、揺れた。
投網。10枚。まとめ買い。
それは節約なのか?それとも、ただの浪費の予感か?
「それ……漁師の魂じゃないか?」
「違う!これは探索者の革命だ!スライム掃討任務を一網打尽にする!」
セイは商人系探索者。計算と効率が命。
でも、節約魂は“使い切ること”が命だ。
俺の節約は、摩耗の記録と再利用の思想。
セイの節約は、まとめて買ってまとめて使う。
……思想が違う。
「まとめ買いは、節約じゃなくて先行投資だぞ……?」
「だからこそ、連続任務で回収するんだよ!」
セイの目は輝いていた。
俺の節約魂は、少しだけ黙った。
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ギルドから受けたのは、スライム掃討任務×3。
浅層ダンジョン「粘液の窪地」。
スライムは弱いが、素材回収が面倒。粘液、核、膜――全部バラバラに動く。
「ケイさん、瓶の鳴き方でスライムの粘度がわかります。今日は……ぷしゅ、ぷしゅ、ぷしゅぷしゅです」
リュカが瓶を振る。魔力分析士の彼は、瓶の鳴き声で粘度を読む。
俺は靴底で地形を確認。摩耗角度は浅い。滑りは少ない。
「よし、地形は安定。節約魂、摩耗記録開始」
マリナが斧を構えながら言う。
「ケイ、干し肉は使わないよ。今日は塩だけで戦う」
「それ、料理じゃなくて呪術だろ!」
俺の節約魂が、また少し揺れた。
塩で戦う。投網で捕獲。瓶で粘度を読む。
……俺の節約魂は、置いてけぼりになってないか?
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セイが投網を広げた。
スライムがぬるりと現れる。粘液が地面を覆う。
セイが叫ぶ。
「今だ!投網、展開!」
網が飛ぶ。スライムが絡まる。粘液が網に吸われる。
核が転がる。膜が揺れる。
「一網打尽……!」
俺は裏紙に記録する。摩耗角度、粘液の流れ、網の破れ率。
リュカが瓶を鳴らす。「ぷしゅぷしゅぷしゅぷしゅぷしゅ!」
情報が渋滞してる。
「それ、瓶じゃなくて合唱団だろ!」
ゴブリンが「ふもも!」と鳴いて、網の端を引っ張る。
スライムが一箇所に集まる。素材回収が一気に進む。
マリナが塩を撒く。スライムが震える。
「それ、戦術じゃなくて調味料の暴力だ!」
俺は記録を続けながら、ふと考える。
この効率は、節約なのか?
この連続任務は、魂を摩耗させてないか?
セイが笑う。
「これで3件分の素材、全部回収!報酬も3倍だ!」
俺は裏紙を見ながら、節約魂に問いかけた。
「……本当に、効率って節約なのか?」
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(後編へ続く)
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