第6章:まとめ買いと連続クエストと、いつもの報酬(後編)
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俺は裏紙を見ながら、節約魂に問いかけた。
「……本当に、効率って節約なのか?」
問いは、答えをくれなかった。
代わりに、次の任務がやってきた。
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魔石採取任務:粘液洗浄と瓶の悲鳴
浅層ダンジョン「魔力の窪地」。
魔石は地中に埋まっているが、粘液で覆われていて採取が難しい。
セイがスライム粘液を瓶に詰めて、洗浄剤代わりに使う作戦を提案した。
「粘液はまとめて取った。洗浄に使えば、魔石の純度も上がるはず!」
俺は瓶を受け取る。
リュカが魔力分析を始める。瓶が鳴く。
「ぷしゅぷしゅぷしゅぷしゅぷしゅぷしゅぷしゅぷしゅ!」
……鳴きすぎだ。
「それ、魔導具じゃなくて悲鳴だよ!」
「ケイさん、瓶が熱を持ってます!魔力過負荷です!」
瓶の底がひび割れた。
俺は裏紙に「瓶:摩耗率85%」と書き込む。
摩耗は、思想の証だ。
でも、思想が疲れてきてる。
セイが魔石を洗いながら言う。
「効率は、魂より速い!」
俺はその言葉を、記録しなかった。
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ゴブリン保護任務:投網と誤訳の嵐
次の任務は、迷子ゴブリンの保護。
小型の個体が、魔力草の群生地で迷っているらしい。
現場に着くと、ゴブリンが「ふもも!」と鳴いていた。
セイが反射的に投網を展開。
「今だ、捕獲!」
網が飛ぶ。ゴブリンが絡まる。
「ふもももももももももももももももも」と鳴きながら、ぐるぐる巻きになっている。
「それ、保護じゃなくて漁獲だよ!」
リュカが翻訳札を取り出す。
札が震え、「ふもも=爆発」と誤訳される。
「それ、誤訳じゃなくて災害予告だろ!」
マリナが斧で網を切る。ゴブリンが転がる。
俺は裏紙に「翻訳札:誤訳率40%」「投網:摩耗率60%」と記録する。
ゴブリンが「ふもも……」と静かに鳴いた。
俺の節約魂も、少し静かになった。
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魔力草収集任務:瓶の最期と思想の残響
最後の任務は、魔力草の収集。
魔力草は瓶で保存しないと、魔力が揮発してしまう。
「まとめ買いした保存瓶、あと1本ある!」
セイが叫ぶ。俺は受け取る。
瓶は軽い。魔力の残留が少ない。
俺は魔力草を詰める。瓶が鳴く。
「ぷしゅ……」
最後の声だった。
瓶が静かに割れた。魔力草がこぼれた。
俺は裏紙に「瓶:摩耗率100%」「思想:揮発中」と書き込む。
マリナが焦げた布で草を包む。
リュカが魔力を封じる呪文を唱える。
ゴブリンが「ふもも」と鳴く。
俺は、瓶の破片を拾った。
節約魂は、使い切った。
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ギルド報告:思想と手数料
ギルドの報告窓口に、セイが素材の束をドンと置く。
「これで報酬も3倍……いや、4倍いけるかも!」
受付の技術班が素材を確認し、魔力反応を測定し、報酬を計算する。
俺は静かに、裏紙の隅に「魂の摩耗率:高」と書き込んだ。
数分後、報告が返ってきた。
「素材の質は良好。魔力草の保存状態も安定。スライム核の純度も高いです。ですが……」
技術班が言葉を濁す。
「報酬は、通常任務3件分とほぼ同額です。まとめて提出された分、手数料が加算されてます」
セイが固まった。
「……え? 手数料?」
「はい。素材の一括処理、魔力草の瓶洗浄、ゴブリン語翻訳札の誤訳補正など、追加費用が発生しています」
俺は、節約魂が静かに笑った気がした。
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セイが肩を落とす。
「まとめ買いして、連続任務こなして、効率化して……なんで、いつもと同じくらいしか稼げてないんだよ……」
俺は裏紙を見ながら、言った。
「節約魂は、効率より思想だ。使い切ること、記録すること、摩耗を受け入れること――それが、俺たちのやり方だ」
ゴブリンが「ふもももももももももももももももも」と鳴いた。
瓶の破片が静かに転がる。
斧の布が焦げた匂いを残す。
でも、俺たちは全部使い切った。
それは、節約魂の勝利だ。
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(第6章 完)
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