第5章:風と干し肉と瓶と、ハーピーの巣(後編)
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俺は風圧を読み、靴底の摩耗角度を逆手に取って跳んだ。
風が背中を押す。靴が滑る。体が浮く。
――飛んだ。いや、飛ばされた。
「うおおおおおおおおおお。節約魂は、飛ばなくても届く!」
ハーピーの巣が見えた。干し肉がぶら下がってる。
……俺のだ。俺たちのだ。保存食の尊厳が、空に吊るされてる。
「ケイさん、瓶の鳴き声が止まりました! 風が安定してます!」
リュカが叫ぶ。瓶が静かになった。情報が整理された。
俺は空中で体勢を整え、干し肉ブーメランをもう一度投げる。
ハーピーが反応。翼を広げて回避――したつもりが、風に流されてブーメランに直撃。
「それ、戦術じゃなくて風任せだろ!」
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マリナが崖下から斧を投げる。
干し肉を巻いてない。純粋な打撃。
斧が岩壁に当たり、跳ね返ってハーピーの翼をかすめる。
「それ、ビリヤードじゃなくて戦闘だよね!?」
ゴブリンが「ふもも!」と鳴いて、干し肉を空中に投げる。
ハーピーがそれを追って降下。俺の射程に入った。
「今だ!」
俺は瓶の破片を構え、風を読みながら滑空。
ハーピーが干し肉を咥えた瞬間、俺の瓶が翼に命中。
魔力が拡散。ハーピーがよろめく。干し肉が落ちる。
「節約魂、空中でも響いた……!」
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戦闘終了。
俺たちは干し肉を回収し、巣の魔力源を記録した。
裏紙に、風の流れ、瓶の鳴き声、斧の反射角度、ゴブリンの擬音をまとめる。
ギルドに戻ると、技術班が報告書を受け取った。
「ケイさん、瓶の破片、干し肉ブーメラン、風圧ジャンプ……全部、非公式技術として残します」
「節約魂は、空中でも記録されなくても、響いてる」
ゴブリンが「ふもも」と鳴いた。
干し肉を俺の手のひらに乗せながら。
「それ、供物じゃなくて……お疲れ様のご褒美か?」
俺は笑った。
飛ばなくても、届く方法はある。節約魂があれば。
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(第5章 完)
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