配信者コンビを組んでる幼馴染に、ライブ配信中「実は俺、引っ越すんだ」ドッキリを仕掛けたら、「ずっと前から好きだったのにッ!!」と号泣された!?

間咲正樹

配信者コンビを組んでる幼馴染に、ライブ配信中「実は俺、引っ越すんだ」ドッキリを仕掛けたら、「ずっと前から好きだったのにッ!!」と号泣された!?

「「みんなのハートにニャッポリート!」」

「どーも、『マサカナ』の目玉焼きには醬油をかけるほう、マサハルでーす」

「ニャッポー! 『マサカナ』の目玉焼きをハンバーグに乗せるほう、カナコだよー!」


 ライブ配信開始と同時に、チャット欄に大量のコメントが流れる。


『マサカナキターーー!!!!(大歓喜)』

『ついえら』

『ついえら』

『ついえら』

『ニャッポリート!』

『ニャッポリート!』

『これが生き甲斐』

『明日仮免試験だけどこれだけは観る』

『ニャッポリート!』

『ついえら』

『ニャッポリート!』

『カナたん今日もカワイイ!!』

『またバイトクビになったけどこれだけは観る』

『ニャッポリート!』

『神に感謝』

『ついえら』

『ニャッポリート!』

『マサハル俺と付き合ってくれ!!』

『ニャッポリート!』

『ニャッポリート!』

『配信ありがとうございます!』

『””ってたぜェ!! この”瞬間とき”をよォ!!』

『妻に浮気がバレたけどこれだけは観る』

『ニャッポリート!』

『ニャッポリート!』

『ニャッポリ~ト~!!!』


 よしよし、今日も立ち上がりは好調みたいだな。


「ねえねえ聞いてよマサハル! 私前からどうしても許せないことがあるの!」

「どうした急に」

「よくコンビニのトイレに、『いつもトイレを綺麗にご使用いただきありがとうございます』って貼り紙があるじゃん!?」

「ああ、あるな」

「あれがどーしても受け入れられないのッ!」

「なんでだよ」

「だってそれって、遠回しに『お前らトイレを綺麗に使えよオラァ!!』って言ってるようなもんじゃん!? そういう回りくどいの私大嫌いなんだよね! だったら最初から、『お前らトイレを綺麗に使えよオラァ!!』って書いといてほしいわけよ!」

「そんなコンビニあったら逆に嫌だろ」


 むしろこいつは、『お前らトイレを綺麗に使えよオラァ!!』って書いてあったら、それはそれでブチギレるタイプだ。


『わかる』

『わかる』

『クッソわかる』

『わかる』

『わかる』

『よくぞ言ってくれた』

『わかる』

『わかる』

『それでこそカナたん』

『わかる』

『わかるマン』

『ニャッポリート!』

『わかる』

『さすがカナたん! おれたちに言えない事を平然と言ってのけるッ。そこにシビれる! あこがれるゥ!』

『わかる』

『わかる』

『わかる』

『マサハル俺と付き合ってくれ!!』

『わかる』

『わかる』


 えぇ?

 チャット欄は加奈子かなこを全肯定じゃん。

 まあここに来るみんなは、加奈子のガチファンばっかだからな。

 そりゃこうなるか。


 ――幼馴染の加奈子と高校生配信者コンビを組んで早や半年。

 モデル並みに可愛い容姿を持ちながら、その歯に衣着せぬ加奈子の豪胆な物言いが多くの視聴者に受け、今では俺たちの『マサカナチャンネル』は、チャンネル登録者数60万人超えの人気チャンネルになっていた。

 今日みたいにライブ配信をすれば、常時1万人近くの人が観に来てくれる。

 やっぱかわいいは正義なんだなと、つくづく実感する日々だ。


「まあそれよりも、今日は何のゲームで遊ぶんだっけ、カナコ?」

「ふっふーん! 今日はこれ、『公務員ファイター』じゃい!」


 加奈子は『公務員ファイター』のパッケージを、カメラに向かってドヤ顔で掲げる。

 『公務員ファイター』は各種公務員を使って戦う、最近配信者たちの間で大流行している格闘ゲームである。

 やはり配信者たるもの流行りに乗るのは何より大事なことなので、今回俺たちも遅ればせながら取り入れてみた次第だ。


『公務員ファイターキターーー!!!!(大歓喜)』

『カナコ……やるんだな!? 今……! ここで!』

『こ れ を 待 っ て た』

『ありがとう! そして、ありがとう!』

『こういうのでいいんだよこういうので』

『ニャッポリート!』

『マサハル俺と付き合ってくれ!!』

『またカナ虐が見られるのか(胸熱)』


 よしよし、視聴者にも好評みたいだな。


「私は『警察官』を使うよ! 国家予算でピストルを撃って撃って撃ちまくるんじゃい!」

「目玉のお巡りさんかよ。俺は『体育教師』にするかな」

「因みに負けたほうは罰ゲームで、この激苦センブリ茶を一気飲みしまーす!」


 加奈子がコップになみなみ注がれたセンブリ茶をカメラに向ける。


『センブリ茶キターーー!!!!(大歓喜)』

『大丈夫カナたん? おっぱい揉む?』

『懲 り な い カ ナ た ん』

『ニャッポリート!』

『いや、今日のカナたんならやってくれる(フラグ)』

『マサハル俺と付き合ってくれ!!』

『頼むぞマサハル!』


「大丈夫だよみんな! 今日こそは私勝つから! そこで見ててね!」


 どこからその自信がくるんだか。

 加奈子はゲームがド下手クソな割には自信家なので、こうしていつも俺にゲームで挑んできては、返り討ちに遭って罰ゲームを受けている。

 まあ、そんな様が視聴者からも愛されているので、ある意味キャラ得とも言える。


「それじゃあ公務員ファイター、レディー・ゴー!!」


 さて、今日もみんなの期待にお応えして、上質なカナ虐をお見せするかな。


「おりゃおりゃおりゃああああ!!! 死ね死ね死ね死ねええええ!!!」

「警察官が一番言っちゃいけない台詞」


 加奈子が操作する警察官が闇雲に発砲してくる弾を、俺の体育教師は『昭和の体罰ビンタ』で華麗に弾きながら間合いを詰める。


「ああ!? こ、来ないで! 来ないでえええ!!」

「薄い本にありがちな台詞。でも行きまーす」

「ひええええええ!!!!」


 完全に間合いに入った俺は、『昭和の体罰アルゼンチンバックブリーカー』からの『昭和の体罰スクリューパイルドライバー』、そしてラストは『国語教師との結婚』でトドメを刺した。


「ウボァー!!!!」


 ハイお疲れ、解散解散。


『ウボァーキターーー!!!!(大歓喜)』

『こ れ を 見 に 来 た』

『廃 車 確 定』

『ニャッポリート!』

『カナたん俺恥ずかしいよ』

『マサハル俺と付き合ってくれ!!』

『ホッヒヒ』


「さあカナコ、負けたほうは罰ゲームが待ってるんだったよな? まさか女に二言はないよな?」

「ぐっ! あ、あたぼーよ! こんなの、信長に比叡山を焼き討ちされた時の苦しみに比べたら!」

「お前の前世は延暦寺の僧侶だったのか。まあいいから早く飲めよ、センブリ茶をさ」

「ええい、ままよ! いっけええええ!!!!」


 加奈子はコップになみなみ注がれたセンブリ茶を一気飲みした。

 こういう気っ風のよさも、視聴者に愛されてる一因だろうな。


「オゲエエエエエ!!!! 苦い苦い苦い苦い苦いッ!!!! 口の中が爆発してるッ!!!! 蜂を食べた時のピクルみたいになってるうううッ!!!!」

「バキを読んでない人には通じないぞそれ」


『ピクルキターーー!!!!(大歓喜)』

『やっぱ罰ゲームをしてる時のカナたんが一番輝いてるな』

『俺もセンブリ茶飲んだことあるけど、マジでこうなるよ』

『ニャッポリート!』

『マサハル俺と付き合ってくれ!!』

『カナ虐たすかる』

『カナ虐からしか得られない栄養がある』

『っぱカナ虐なんだよなー』


 こうして今日の俺たちのライブ配信も、大盛況のうちに幕を閉じたのだった。




「クッソー! 次こそは負けないかんなー、将春まさはる!」


 加奈子が八重歯を剝き出しにしながら、俺にビシッと指を差す。


「ハイハイ、楽しみにしてるよ」


 どうせ何回やっても同じだろうけど。


「はー、とりあえず私はウンコしてくるわー」

「女の子がウンコとか言うんじゃありません!」


 本当にこいつは見た目に反して、中身はオッサンなんだよな。

 ……さて、と。

 加奈子が部屋から出て行った途端、俺はおもむろにパソコンを操作し、あらかじめ用意しておいた、『緊急ドッキリ企画』とデカデカと書かれたサムネでライブ配信を開始した。

 ほどなくしてチャット欄がまた賑わい始める。


『ドッキリキターーー!!!!(大歓喜)』

『待ってました!』

『ニャッポリート!』

『久しぶりだな』

『ニャッポリート!』

『明日盲腸の手術だけどこれだけは観る』

『ニャッポリート!』

『やってみせろよ、マサハル!』

『何とでもなるはずだ!』

『ドッキリだと!?』

『鳴らない言葉を(ry』

『ニャッポリート!』

『ニャッポリート!』

『会社に横領がバレたけどこれだけは観る』

『ニャッポリート!』

『マサハル俺と付き合ってくれ!!』

『ニャッポリート!』

『ニャッポリート!』

『今回はどんなネタを!?』

『ニャッポリート!』

『明日中忍試験だけどこれだけは観る』

『ニャッポリート!』


 おお!

 既に2万人以上の人が観に来てくれてるじゃないか。

 この緊急ドッキリ企画はマサカナチャンネルの人気企画の一つで、たまにこうして俺が加奈子にドッキリを仕掛ける様をライブ配信しているのだ。

 前回は明らかに雑な作りのUFOのフェイク動画を加奈子に観せたところ、「本物だあああああ!!!!」と大絶叫して視聴者の腹筋を崩壊させた。

 そして今回のドッキリネタは――。


「今回は『実は俺、引っ越すんだ』ドッキリを仕掛けまーす」


 定番といえば定番のドッキリだが、それだけに加奈子がどんなリアクションをするか、楽しみではある。


『あー、なるほどねー』

『そうきたかー』

『ニマニマ』

『ニマニマ』

『神 回 確 定』

『ニマニマ』

『みんな、ブラックコーヒーを用意しておけ!』

『ニマニマ』

『ニマニマ』

『ニャッポリート!』

『ニマニマ』

『マサハル俺と付き合ってくれ!!』

『ニマニマ』

『ニマニマ』

『知らないって罪だよな』

『ニマニマ』

『ニマニマ』

『ニマニマ』


 あれ?

 なんでみんなこんなニマニマしてんだ?

 ま、まあ、楽しみにしてくれてることは確かみたいだから、別にいいか。

 俺はライブ配信で流れる映像を本棚にセットしてある隠しカメラのものに変更し、パソコンのモニターを俺だけに見える位置にズラした。

 これで準備完了、と。

 ほどなくして加奈子がトイレから帰って来た。


「はー、出た出たー。アナコンダみたいなぶっといウンコが出たわー」

「オォイ!?」


 本当にお前は!!

 羞恥心をゾルトラークされたのか!?


『アナコンダキターーー!!!!(大歓喜)』

『その話詳しく』

『ちょっとアナコンダ買ってくるわ』

『カナたんが言うと全然エロくないのは何故だろう?』

『ニャッポリート!』

『ちょうどアナコンダ切らしてたからたすかる』

『マサハル俺と付き合ってくれ!!』

『アナコンダトレンド入り確定』


 ま、まあいい。

 早速ドッキリ開始だ――!


「加奈子、実は大事な話があるんだ」


 俺は居住まいを正し、加奈子に向き合う。


「な、何だよ改まって」


 俺の前にドカッと胡坐をかいた加奈子が、困惑の色を浮かべる。

 よし、いくぞ――。


「――俺、今度引っ越すんだ」

「…………え」


 途端、加奈子は大きな目を更に見開き、言葉を失った。

 よしよし、ドッキリだとは気付いてないみたいだな。


「父さんの仕事の都合でさ。来月から北海道に住むことになったんだよ」


 俺たちが住んでるのは千葉県だから、これで下手したら今生の別れになってもおかしくはないだろう。

 引っ越すのが本当ならだが。

 さて、加奈子はどんな顔をしてるかな?


「……う、うぐ」

「――!?」


 その時だった。

 加奈子の綺麗な瞳から大粒の涙がボロボロと零れ、カーペットを濡らした。

 加奈子!?!?


『あーあ、泣ーかした、泣ーかした』

『ちょっと男子ー』

『盛 り 上 が っ て ま い り ま し た』

『ニャッポリート!』

『マサハル俺と付き合ってくれ!!』

『まあそうなるよね』

『さあ、男を見せろマサハル』


 あれ!?

 みんなはこうなることが予想できてたってこと??

 なんで……。


「あ、あの……加奈子?」

「…………好きだったのに」

「――!!?」


 今、何と???


「将春のこと、子どもの頃からずっと好きだったのにッッ!!!」

「……加奈子」


 加奈子は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、震える拳を握った。

 そんなまさか……。

 こんなに可愛くて人気者の加奈子が、俺みたいな凡人を……。


「お願い将春ッ! どこにも行かないでッ!! 私、将春がいなかったら、生きていけないッ!!」

「――!!」


 加奈子は俺にガバリと抱きついてきた。

 その様はまるで迷子センターで親に再会した子どもみたいで、俺の胸はズキンと痛んだ。

 ……クッ。


『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『大胆な告白は女の子の特権』

『てぇてぇ』

『これは責任取らなきゃ(使命感)』

『女の子にここまで言わせて、黙ってていいのかマサハル!?』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『ニャッポリート!』

『てぇてぇ』

『マサハル俺と付き合ってくれ!!』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『次はマサハルの番だぞ(後方保護者面)』

『てぇてぇ』

『さあ、男を見せろマサハル』


 何だよ……。

 みんなはとっくに気付いてたのかよ、加奈子の俺に対する気持ちに……。

 気付いてなかったのは俺だけ――。

 ――本当に、バカだな俺は。


「……安心してくれよ、加奈子」

「ふえ?」


 ポンポンと優しく背中を叩くと、キョトンとした顔で俺から離れる加奈子。

 オイ、鼻水が伸びて俺のシャツに付いてるじゃないか……。

 ま、まあ、今はそれはいい。


「俺はどこにも行かないよ。――だって俺も、加奈子が好きだから」

「――!!」


 俺だって子どもの頃から、ずっと加奈子が好きだった。

 加奈子に対する気持ちだけは、地球上の誰にも負けない自信がある。

 だからもう、俺は自分に噓はつかない。

 俺の正直な気持ちを、2万人の視聴者に見届けてもらう――。


「好きだ、加奈子。――俺と付き合ってくれ」

「う……うぶ、うぶぶぶぶ、ぶえええええええ!!!!」

「っ!」


 加奈子は再度俺に抱きついてきた。


「私も将春が大大大好きいいいい!!!! もう一生離さないからねええええ!!!!」

「ああ、望むところだよ」


 俺は加奈子を、強く抱きしめ返した。


「……将春――んっ」

「――!」


 おもむろに俺と顔を合わせた加奈子が、そっと目を閉じた。

 こ、これは――!?


『ベーゼキターーー!!!!(大歓喜)』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『( ´・ω・)⊃ご祝儀』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『マサハル……やるんだな!? 今……! ここで!』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『キース! キース! キース!』

『てぇてぇ』

『ニャッポリート!』

『てぇてぇ』

『結婚したのか、俺以外のヤツと……』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』


 クソッ、これはもう、ベーゼするしかない流れじゃないか――!

 俺は震える手で加奈子の肩に手を置き、加奈子のプルンとした柔らかそうな唇に――。


「コラッ! 将春、加奈子ちゃん! 流石にライブ配信中のベーゼは見過ごせないわよ!」

「「っ!!?」」


 その時だった。

 物凄い勢いで俺の母さんが部屋に入って来た。

 えーーー!?!?!?

 ま、まさか母さん、ずっと俺たちのライブ配信観てたんじゃ……。


『親フラキターーー!!!!(大歓喜)』

『マサハルママメッチャ美人!!』

『ママーーー!!!!(迫真)』

『こ れ は 恥 ず か し い』

『お母さん、マサハルを産んでくれてありがとう!』

『マサハルはお母さん似なんだね』

『息子に彼女が出来る瞬間をライブ配信で目撃する母の心境とは?』

『お母さん俺と付き合ってくれ!!』

『ニャッポリート!』


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