第4話 FPV疑似体験 

ゴーグルを装着してドローンを操縦する――

そんなFPV(First Person View/一人称視点)の世界。

まるで自分が機体そのものになって飛んでいるような没入感だ。


その感覚を、天体観測でも味わえないかと思った。


カメラには、超広角から望遠までをカバーするズームレンズを装着。

その映像をPCに映し出し、さらにミラーリングでゴーグルへ送る。

即席の“宇宙船コクピット”の完成だ。


もちろん、普通のカメラでは明るい星や月しか映らない。

それでも、広角から望遠へとゆっくりズームしていくと――

まるで、自分が星々へと近づいていくような錯覚を覚える。


これも、昔の“アナログ時代”を知っているからこそできる体験かもしれない。


かつては、光学望遠鏡のアイピースをCCDセンサーに換装し、

NTSCやPALでアナログ変調してテレビモニターへ出力していた。

その映像をさらにゴーグルやプロジェクターに投影していたのだ。


今では、RGBやHDMIといったデジタル信号のまま、

遅延も劣化もなく映像を投影できる。

技術は進化した――けれど、やっていることの根っこは変わらない。


「おじい、すごい! 本当に宇宙船に乗ってるみたい!」


(心の中で、ガッツポーズ!……その言葉が聞きたかった)


「じゃあ、明日はドローンを飛ばしに行こう」


「うん!」

弾んだ声が、夜気の中に跳ねた。


今は、誰もが“鳥の目”を手に入れられる時代。








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