第二章 異世界文明大接触編!!

第26話 シュヴァンデンベルクの森

 校門の前には、物騒にも五人の騎士が佇んでいた。

 何事かと蔵人も武器を持って外に出た。

オルフェリア「……ここが“城塞”だと? 堀も城壁もないではないか。物見は何を見たのか」

 生徒たちはその場で立ち止まることした出来なかった。

 蔵人はその騎士たちを見て、血の気が引く思いをした。

蔵人(盗賊たちとは、違う。身なりが良すぎる。この世界には、確かに文明があるんだ)

 その文明が、自分たちを受け入れてくれるのか。蔵人が懸念したことだった。

オルフェリア「我が名はオルフェリア・フォン・ナミューア! この森の領主フーゴー・フォン・シュヴァンデンベルク辺境伯の名代だ。そこの男! キサマがここの首領か?」

蔵人「えっ、ぼくぅ?」

 指を差されたのは、蔵人だった。

蔵人(やっぱり、言葉は通じるんだな)

 盗賊との戦闘でも思ったことだが、異世界人の言葉は不思議と理解できる。それが唯一のチートなのかも知れないと、蔵人は思った。

蔵人「違う。俺は首領じゃない。俺は……えっ? 俺ってなんだ?」

楓「ほ、保護者?」

アレックス「年長者、では?」

蔵人「そう、年長者だ!!」

オルフェリア「なんでもよい。ここがシュヴァンデンベルク辺境伯の領地と知っての狼藉か?」

蔵人「狼藉って……俺なにかやっちゃいました?」

オルフェリア「勝手に城を建てよって、何をいうのか」

蔵人「別に俺達が立てたわけじゃないし」

 オルフェリアは小さく「ふむ」と呟き、思案するように目を細めた。

オルフェリア「ならば、即刻退去せよ」

蔵人「ざっけんじゃねーよ。どこへいけって言うんだよ!!」

オルフェリア「知るものか」

蔵人「ぜってー出ていかねえからな!!」

 その言葉に、オルフェリアは腰の剣を抜いた。鋼の音が響き、背後の騎士たちも一斉に抜刀する。生徒会を含め、その場にいた生徒たちは恐怖に凍りついた。

 ――ただ一人、蔵人を除いて。

蔵人「やんのか? 俺の背後には499人の部下が居るぜ?」

ディートリヒ「それがどうした。農民風情が寄せ集まったところで、我々の敵ではない」

蔵人「戦いは数だぜボーイ?」

ディートリヒ「なんだと?」

 蔵人の挑発に乗った若い騎士ディートリヒ・フォン・ハーゲンが、憤然と前へ踏み出した。蔵人は片手を高く掲げる。その一瞬の動作に、ディートリヒは思わず足を止めた。

ディートリヒ「伏兵か!?」

蔵人「ふん、丸腰で来ると思ったか間抜けが」

 実際のところ、蔵人は丸腰だった。完全なハッタリである。

 その時――背後から矢が飛来し、ディートリヒの足元に深々と突き刺さった。

蔵人(えっ!?)

 遥か彼方、校舎の三階から弓を放ったのは、弓術部部長土御門月絵だった。

 心臓が跳ね上がるのを必死に抑え、蔵人はポーカーフェイスを崩さなかった。

 更に、背後からは狼牙たち不良グループが武器を携えて加勢に来た。

 蔵人は思わぬ援軍を、さも自分が用意したことにした。

蔵人「多勢に無勢とはこのことだな。大人しく武器を下ろせよマヌケ!!」

ディートリヒ「くっ!」

蔵人(ヤバイヤバイヤバい!! これからどうしよう!!)

 必死に動揺を隠した。事実数ではまさるものの、鋼の胸当てを装備している騎士五人を相手に勝てる保証はない。

 ――打開策は見つからない。

オルフェリア「少々ナメていたな。あやつらとは多少出来が違うようだ」

蔵人(あやつら……?)

 気になる言葉だったが、今は考える余裕はない。

オルフェリア「武器は下ろす。だからそちらも矛を納めろ」

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