第2話 リリア視点

――またや。

 ウチは、また置いていかれた。


 「役立たずは死んどけ!」

 さっきまで仲間やと思ってた傭兵たちが、笑いながらそう言い残して去っていくのが見えた。

 膝は震え、矢筒は空。弓を握ってても、もう戦えへん。

 ……ここで終わりか。


 本当は、それでええと思ってたんや。

 獣人ってだけで疎まれて、どこでもお荷物扱い。

 18歳になっても、居場所なんてどこにもなかった。

 せやから、この戦争で死んでも……きっと楽になれるって。


 そのとき。


 「おい! 君!」

 岩陰から飛び出してきた人間の若い男。

 ……顔が童顔すぎて十六歳ぐらいにしか見えん。ひょろひょろで、頼りない。

 ――なんやこのガキ。


 「俺には……仲間を“ユニット”にして戦わせる力がある! 俺と契約すれば、もう一度戦える!」


 はぁ? なに言うてんのコイツ。頭おかしいんちゃうか。

 けど、その目は本気で、ウチを見とる。


 「……ウチなんか、誰にもいらんって……そう言われて、捨てられたんや」


 「だったら俺がもらう! お前は役立たずなんかじゃない!」

 「このまま死ぬよりマシだろ! 戦って、生き延びたいなら……俺に賭けてみろ!」


 胸に刺さる言葉やった。なんでこのガキが、そんな真っ直ぐに……。


「……わかった。ウチは、まだ死にたくない」



 うなずいた瞬間、体が光に包まれた。


 * * *


 目の前になんか出てきた……これ、この戦場の地図か?

 わけも分からんけど、確かに戦況が見える。


 アイツが地図を見ながら何か指を動かしていた。

 「今回の勝負のカギはここだ……! よし、配置するぞ――リリアいってこい!」


 気づいたら、高台に立っていた。

 矢筒は空だったのに、矢が次々と湧いてくる。これならいくらでも撃てる。


 弓を引き、矢を放つ。敵兵が次々と倒れていく。

 そのとき、敵の矢が飛んできた。


 一本が肩に当たり――けど、痛みはなかった。

 視界の端に文字が浮かぶ。


 【弓兵リリア:HP 100 → 92】


 「……え、当たったのに、なんともない?」


 その瞬間、アイツの声が響く。

 「HPがゼロにならない限り無敵だ! どんどん撃て!」


 「……なんやこれ。怖くない。全然怖ない……!」


 気づけば敵は撃退され、味方の歓声が響いていた。


 * * *


 元の場所に戻ると、アイツが近づいてきた。

 「な? 痛くなかっただろ! HPがゼロになるまでは無敵だ! だから安心だろ! ハハハ!」

 「……ゼロになったら?」

 「消える。その戦闘で勝てば無事に戻れるけど、負けたら……死ぬ」

 「……は?」

 耳がぴくりと動く。アホちゃうか。


 「俺も一緒に死ぬけどな! だから安心だろ!なっ!」


 「……馬鹿やん」

 思わず頭を抱えた。

 「自分も死ぬのに、ようそんなこと言えるわ……」


 でも――胸の奥がざわついていた。

 本当はこの戦争で死ぬつもりやったのに。

 アイツに拾われて、生きたいって思ってしまった。


 ガキで、馬鹿で、頼りなくて。

 でも、なぜか――ついていきたくなる。

 ……ほんま、ウチはどうかしてるわ。

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