第25話 生きてる生きてく


 魔法の森にはワグマと言う、紫色の毛をした小熊がいます。


 ある日のこと、森の管理人コバヤシとギフト君とムルムルとで『滝壺(たきつぼ):ふかいみずたまり』に釣りにでかけました。


 ムルムルは肉や魚を特に食べない体質で、釣りに疑問を持っているようでした。


 ギフト君はそのことについて、気にしていません。


 そしてコバヤシとムルムルの会話を聞いていた『レイン滝の洞窟(どうくつ)』に住むワグマが出てきました。


 石置き漁の具合をコバヤシが様子を見に行くと、魚が五匹獲れました。



「泳ぎたいなぁ。ワグマも一緒にどう?」


「そうだな。エビが食べたい。うんと大きなやつ」


「網(あみ)を持って行くといいよ」


 ワグマとギフト君は滝壺、と言う、深い水溜まりにもぐりました。


 ムルムルはそれを見送って、コバヤシにどうしても不思議でならないと言いました。



 するとコバヤシが応えてくれました。


「自分に合った栄養を保たなきゃ、生きてはいけない。みんなおぎないあっているんだ。僕は食べた分だけ、いつか役に立つことで恩返しをする。助け合い。そのことを『かてになってもらう』と言うんだよ。昔から受け継がれている言葉だ」



 ムルムルは少し泣いて、わたしはきっと感動しているのです、と言いました。



 水中花の中にかなり大きなエビを見つけたギフト君とワグマ。


 網を魔法で大きくして、エビをつかまえると水の上に戻って来ました。


 コバヤシにお願いして一緒に網を引っ張ってもらうと、ギフト君の身体より大きなエビが網の中にいました。


 


 コバヤシとギフト君が料理をしている頃。


 ムルムルはワグマに、コバヤシから聞いたことを言いました。



「僕だって食べなきゃ生きていけないし、料理をするコバヤシとギフトはスゴイです」


「自分ができないことをできる存在って、尊敬にあたいするよな」


「そうです。それです!」


「うん・・・少し分かったつもりになって、ほこらしい今の自分は認めたい」




 焼き魚と焼きエビを食べてお家に帰ったワグマ。


 ワグマは「ありがとう」とつぶやいて、お昼寝をしましたと、さ。   

 


 

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