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「まあ、隊のために結婚しろと言った俺が言えた義理じゃねぇがな」
深くソファに腰かけた相模に、千歳は「そうですよ」と返す。
「相手からも『仕事優先で構わない』と言われたことですし、結婚したからといって今後の任務に支障をきたす心配はないので安心してください」
「……ったく、かわいげのねぇ奴」
「隊長にかわいさアピールして何になるって言うんですか」
「そういうところだよ、お前……」
ソファの背もたれに両手を置き、またもため息をつく相模をちらと見遣った後、千歳は机の上にある書類の束を手に取ろうとした。そのとき──。
『緊急出動、緊急出動!』
室内に悪鬼出現を知らせる放送が鳴り響く。相模も千歳もその音に、すぐさま表情を引き締めて立ち上がる。
『隊舎から東方向、松前町付近で悪鬼発生との報告あり!現在、現場付近を巡回中の隊士二名で交戦中!』
「ここ最近おとなしいと思っていたが、出やがったか」
「1週間ぶりですね」
千歳は隊帽と壁の刀掛けに飾っている刀を手に取ると、相模の方へと向き直った。
「朝比奈班を連れて応援に行ってきます。追加の応援が必要な場合は、すぐに知らせを寄こしますので」
その言葉に「おう、行ってこい」と返した相模。千歳は敬礼をした後、隊帽を深く被り、ひらりと片肩マントを翻す。その頼もしい背中を見つめながら、相模はにやりと笑みを深めた。
「……存分に力を見せてこい、特務部隊の氷月よ」と呟いて──。
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