14
それからすぐ、千歳は朝比奈を長に置いた班を率いて現場へと急いだ。報告に来た隊士によると、出現した悪鬼は二体、隊士二名で対応しており、苦戦しているとのこと。千歳は刀を握る手に力を込め、目的地を目指した。
「院瀬見副隊長、あそこです!」
声をあげた朝比奈が指し示す先を、千歳はぐっと目を凝らして見る。額から突き出ている一本角、尖った長い爪。醜い容貌の悪鬼は、鋭い牙を剥きだしにして飛びかかる隊士たちを威嚇していた。援軍の到着に、報告担当の隊士が「副隊長!」と、千歳の元へ駆けてくる。
「周辺市民の避難状況は」
「すでに退避は完了しています!」
「出現した鬼は、あのニ体だけで間違いないか」
「はい!」
隊士の報告を聞き終えると、千歳が刀に手をかける。
「総員、抜刀!」
「手前の鬼は俺がやる」と高らかに命じた千歳の凛とした声に、「はっ!」と返事をした後、刀を抜いて駆けていく朝比奈班の面々。千歳も自身の刀を鞘から抜き、地面を大きく蹴って高く飛ぶ。
「離れろ!」
千歳の合図とともに、ほかの隊士たちは手前の悪鬼から素早く離れた。
それから千歳は柄を持つ手に力を込め、そのまま刀を振り切った。が、寸でのところで身を躱され、振り下ろした太刀は空を切る。すかさず体勢を整え、今度は真正面から飛び込んだ。
悪鬼は大きく口を開け、そのまま向かってくる千歳に噛みつこうと牙を剥く。そこで半身をずらし、ひらりと躱す。背後を取ると、後ろから鬼の首めがけ、刀を大きく振り下ろした。
刀の刃が悪鬼の体に触れる瞬間、首だけこちらを向いた敵。ぎょろりとした不気味な目が見開かれたが、その瞳は一瞬で色をなくし、大きな体は地面に崩れた。
悪鬼の体から吹き出た鮮血が、千歳の頬を赤く染めた。千歳はそれを煩わしそうにぐいと隊服の袖で拭うと、もう一体の悪鬼を相手にしていた朝比奈たちの方へと視線を遣った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます