第4話
病室のベッドから、昔のアルバムを眺める。高校に入ったばかりの彼と私。あの頃の私は、本当に太陽みたいに笑っていた。
あれは高校に入学して間もない日。私は自販機で買ったばかりのサイダーを彼の頬にくっつけた。
「わ、つめた」
そう言って驚く彼の顔がかわいくて、私はわざといたずらっ子みたいに笑った。
「なんだあ、いい感じじゃん」なんて囃し立てるクラスメイトの声が耳に届く。彼はその輪から逃げるように教室を飛び出す。いつもそうだ。彼はちょっぴり臆病だ。やっぱり私がいなくちゃね。
私が彼にただの幼馴染以上の感情を抱いたのは、いつからだろう。
遠足、体育大会、文化祭。数えきれない思い出のどれも、彼と一緒だった。
まるで、この世に生まれ落ちた時から私の人生の枠にはめ込まれていたように、彼は私の隣にいた。
私は教室を飛び出したまま帰ってしまう彼を追いかけた。通学路をゆっくりと歩く彼の手には、私が渡したサイダーがしっかりと握られていた。
「ダテに生まれてから16年一緒にいるわけじゃないんだなあ。」
齢16歳には思えないコメントを呟く彼が、なんだか面白かった。
「なにそれ笑」
そう言って、私は彼の隣を歩く。彼とはいつも一緒だった。高校だってそう。私が選んだ場所に、彼もついてきてくれた。
その日の帰り道。急に足を止めた彼が、私を振り返る。いつになく真剣なまなざしにドキドキしたことを鮮明に覚えている。
「僕、君のことが好きみたいだ。」
突然の告白に、思わず笑ってしまった。「好きみたい」って。そんな言葉、彼らしいったらありゃしない。まあ、そういう不器用なところに惹かれてしまったのだが。
「私も、君のこと好きみたいよ。」
照れ隠しで、少し上目遣いになってみた。私の頬は、きっと真っ赤に染まっていたにちがいない。
「あーあ、私も喉乾いちゃった。」
そう言って、私もサイダーを開ける。「プシュ」と弾ける音。
「乾杯」
彼とサイダーを突き合わせた。あの時の炭酸は、喉が痛くなるほど強かった。それは、青春の喜びの味だった。
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