「2話 – 星座の導きで」
濃いグレーの絵の具を流したように、海は黒く染まっていた。
その果てには黒雲が広がり、地平線は見えない。
濡れた木材が焦げる匂いと煤のにおいがまだ砂粒に残り、波の先は金属のように冷たい光を放っていた。
ユニ――グロリアは仮設診療所のテントの横、畳まれた救急毛布の上にあいまいな姿勢で腰を下ろしていた。
体は疲れきり、頭はぼんやりしている。
昨日吐き出した自分の声が人々を落ち着かせ、どこかに光の線を描くように広がっていった――そんなこと、信じられるはずがなかった。
何をすればいいのかわからない。ついさっきまで古びたワンルームでレコーディングの準備をしていたフリーターが、気づけば人前で歌い、救助に貢献していたなんて。
♪
「昨日のデータ解析の結果、きみの声の波動は天の川みたいに広がったにゃん。だけど――人によって見えた形がちがったにゃん。」
ジェイコアがホログラムのカエルの姿で、ぴょこんと目の前に跳ねた。
瞳の奥にはHUDのような小さな文字がまたたき、口元は勝手に吊り上がっていた。
「……天の川?」
グロリアは言葉をつかみ損ねた。その響きは舌の上ですべる油のようだった。
すぐにEEが数値を重ねる。
「民間レポート集計――獅子座を見たと答えた者、鯨の尾と答えた者、失われた家の屋根と答えた者。同一波動、異なる認識。」
グロリアは息を整えながら、ぼそりとつぶやいた。
「……おんなじ音を聞いても、それぞれちがう絵を見たってことにゃん。」
♪♪♪
その頃、MOCの状況室にも同じデータが流れ込んでいた。
SeaComのソラが手首のデバイスをたたきながら報告する。
「民間報告パターン送信完了。天の川、星座、鯨の尾……全部バラバラです。」
ハルトは眉をひそめて視線を落とした。
「同一波動にマルチ認識……数理的に説明はできるが、自然発生の確率は低い。」
メイはドローン映像を拡大し、ノイズを除去した。
「残光が星座のようにつながっていました。体感ではなく、実際の波形にパターンが生まれていたんです。」
モニターに赤い警告が点滅する。
【Correlation Detected – Variable Subject : GURORIA】
EEが冷ややかに付け加えた。
「観測対象、確定。継続追跡を要する。」
♪
「レポート完了。」EEの乾いた声が無線を走った。
「生体パルス波形、天球座標群と類似。偶然にしては相関性が高い。継続観察を推奨。」
グロリアは長く息を吐いた。
「……はぁ、なんでよりによって私にゃん。」
「宇宙がきみを選んだんだにゃん。」ジェイコアは当然のように言う。
「それに正直――声のスペクトラムは宝石みたいだにゃん。カラーパレットはライラック+ピン――」
「ストップ。」
グロリアが手のひらを上げた。眉間にしわが寄り、しっぽがだらりと垂れて左右に揺れ、砂を巻き上げる。
「コーヒーを飲んでから考えるにゃん。」
そのとき、足元を影がスッと横切った。
「……?」
顔を下げると、猫耳の生えたカモメが砂の上で首をかしげていた。
ミドジマ特産種――ニャモメだった。
「……ほんとに耳がついてるにゃ……。」
グロリアのつぶやきをよそに、ジェイコアが目の前でぴょんと跳ねて叫んだ。
「視聴者のみなさん! ミドジマのマスコット登場にゃん! 登録者アップの予感にゃん〜!」
ニャモメは人々の視線を理解しているかのように、耳をぴくりと動かしながら「ニャー…カァ!」と鳴いた。
配信チャットはすぐにざわついた。
[KamomeLover] えっ!? ニャモメ実在してたのwww
[NyanNyan89] 耳付きカモメwww こんなのあり?
[Seira推し] かわいいけど今は救助中でしょ? 集中して…
[FishDealer] 🐟 サバなくしたの、あいつのせいだなww
[UniFan01] スタンプ化して! エモート確定だろ
[ArcadiaLab] 鳴き声の周波数解析求む…データ希望
[Guest_222] グロリアの隣、完全にマスコットじゃん
グロリアは両手で顔をおおい、ぶつぶつ文句を言った。
「配信されてたの……? もう帰りたいにゃん……。」
近くの子供が指をさして叫ぶ。
「ママ、猫の鳥だ!」
疲れ切った人々に短い笑いが広がったそのとき――海の方から不吉な振動が伝わってきた。
海の方から不吉な振動が伝わってきた。
砂漠の真ん中に置かれた大皿の水を誰かが突いたみたいに、遠い水平線がゆらめく。
巨大な円が海面に描かれ、中心がへこみ、水流が内側へ吸い込まれていく。
やがて渦が生まれた。
「海流変化を感知。自然現象の確率、四七%。」
EEのレポートと同時に、MOCの警報ランプが赤く点灯する。
ソラ「座標同期完了! 漁船の位置を確認!」
ハルト「データ干渉を検出……DECG残留信号の可能性。」
メイ「VF-578、進入角度安定。バリア配置、同期中。」
EE - ##「異常周波数を記録。原因:不明。タグ――DECG?」
状況室の空気が張りつめる。
ただの災害ではなく、人為的な介入の気配。
ジェイコアはホログラムの鼻をひくつかせ、海の方へ首をかしげた。
「匂いがちがうにゃん……塩気だけじゃない。錆びた鉄、古い船のカビ……不吉にゃん。」
波の音が、釣り糸が引かれるみたいに急に太くなる。
遠くで小さな漁船が渦の縁に呑み込まれかけ、揺れていた。
その甲板で、誰かがかすかに手を振っているのが点のように見えた。
「マリナス・オペレーションセンター、起動。」
EEが短く告げる。
砂浜の一角に設置された移動式アンテナが青い光を放った。
同時に遠くの艦内――MOCの状況室が一斉に動き出す。
「電波妨害を解除! マップ実時間送信します!」
SeaComのソラがコンソールに身を乗り出した。
手首のラバーバンドが弾け、都市図のように精緻な海岸線マッピングがスクリーンを埋め尽くす。
「盗聴波キャッチ! 漁船の座標確保、データリンク!」
ハルトが歯を食いしばりながらキーを叩く。
「現場映像、中継開始!」
メイがドローンフィードを上げると、海岸、波、人々、VFの残光まですべてが画面に流れ込んだ。
現場も同時に動く。
SeaOpsのエミリーが腕にかけたレンチをカンカン鳴らしながら、バリアモジュールを引き出した。
「バリア展開! ニコ、VF-578のエンジンチェックは?」
「出力安定! 吸気口の砂侵入0.2%、清掃完了! いつでも離陸OK!」
ニコは機体の下から転がり出ながら叫ぶ。手の甲は油で光っていた。
医療区画ではSeaMedが忙しく動いていた。
ミズホが静かな表情で看護兵に合図する。
「蘇生キット、ライン2。アイリス、ドローン搬送ルートを確保して。」
「は、はいっ! ドローン……離陸!」
アイリスの声は震えていたが、指先は正確だった。
白い小型ドローンが砂塵を巻き上げ、高く舞い上がった。
ジェイコアはその最中でも、やっぱり浮かれたタイプだった。
「せい――ちゅう――けい! ライブ! いまこの瞬間をぜんせかいと共有だにゃん〜! 視聴率一二〇%、行くにゃん!」
「非効率的発言。」
EEが冷たく切り捨てる。
「エンタメ効率は三〇〇%だにゃん!」
ジェイコアは負けじと返した。
荒れ狂う海に描かれた波の円は、だんだんと致命的な形に裂けていく。
渦がひとつ裏返り――すぐに爆ぜるように荒れ狂った。
まるで水面下で巨大な筋肉が蠢き、自分自身をひっくり返すかのように。
水柱が半分ほど突き上がり、そのまま屈服するように崩れ落ちた。
崩れ落ちた水の壁が陸へと突進する。津波だ。
四メートル――いや、現場に立つ人間には小さな建物ほどもある水の壁だった。
悲鳴が一斉に四方からあがる。
赤子が泣き出し、大人たちの口からは荒い叫びがもれた。
空を呆然と見上げて泣きじゃくる者もいた。
その一瞬で、砂浜は修羅場となった。
足音が乱れ、持ち主をなくしたサンダルが絡み合い、色あせたシェルターから飛ばされた紙コップが宙を舞った。
「リオン、水面で漁船を確保! マリサ、エイリン、市民をバリアの後ろへ誘導!」
カイレンの声は風より速く、短く鋭く、それでいて確かな重みがあった。
VF-578が稲妻のように跳ね上がる。
リオンは機体を左右に振り、水飛沫を切り裂きながら渦の縁へ張り付いた。
「掴んだ! ロープ射出、舵を右へ、そのまま――固定!」
「了解。」
マリサは砂浜を切り裂くように走った。
両腕で右往左往する人々の肩を軽く叩き、進むべき方向を示す。
「こっち! バリアの後ろへ! 走って!」
エイリンは負傷者の手首を取り、柔らかく、しかし確かに引き上げた。
「転ばないで。呼吸はゆっくり。」
バリアの上ではSeaDefが警戒態勢を整え、SeaArcのリツ、ナオ、エラ、ハクが画面を共有していた。
「周期がずれている。」
「海底地形の変化の可能性……自然現象にしては説明がつかない。」
短い言葉がデータを超えて、不吉な予感を現場に広げていく。
カイレンの視線がグロリアに突き刺さった。
グロリアは、自分の足首が砂に沈みかけているのをようやく気づいた。
遅れて驚いたウサギのような目を見開き、飛び跳ねかけた、その瞬間。
「お前。」
中途半端な姿勢で固まったグロリアを、彼は一瞬だけ呆れた目で見た――だが次の言葉は容赦なかった。
「もう一度、あれができるか。」
グロリアの喉は焼け付くようにかさつき、答えが出なかった。
指先は氷のように冷え、片方の肩が理由もなく震えていた。
そのあいだに、ジェイコアがぐいっと割り込んできた。
「歌えにゃん! こんどはテンポぴったりにゃん! メトロノームモード行くにゃん――いち、に、さん、しっ!」
呆然としていたグロリアのくちびるが、ゆっくりと開いた。
部屋にひとりでいると、つい口ずさんでしまうあの旋律。
自分に言い聞かせるように――けれど心臓の鼓動のように隠せない速さで、短いフレーズがこぼれた。
星を… 廻せ… 世界の… まんなかで
その言葉は、言葉である前に響きとなり、グロリアの喉を抜けて風のなかへ広がっていった。
歌に重なるように、波の音が薄れていく。
生き残りたい
まだ 生きて いたくなる
光が声を追いかけたのか、それとも声が光を生んだのか――判別できない。
空気のなかに細い線のような波が広がる。
まるで星座をつなぐ線が、浜辺の上に描き足されていくように。
星座のように波動が広がった。
同時に、MOCの計器にも線が絡み合うように表示された。
ソラ「群衆パニック指数 六三% → 一四%、急落を確認!」
メイ「ライブチャット同期――『道案内されてるみたい』という反応多数。」
ハルト「変数がアイコンへ移行中……データベースにない人物が、群体の中心点になった。」
##「周波数同期完了。共鳴波動 八七%。」
EEの声は冷たく一定のままだったが、数値だけは恐ろしいほどのカーブを描いて上昇していく。
SeaComのソラが叫んだ。
「群衆フロー安定! 避難ルートのボトルネック解消!」
星座の導きで いま、見つめ合った
メイが画面をさらに引き寄せる。
「表情が変わっていく……みんな、顔を上げてる。」
グロリアは自分の歌詞に合わせて呼吸をした。
キラリ 枯れて ゆく
「大丈夫」「こっちだ」「手を取って」――言葉より短く、言葉より速かった。
ジェイコアもとなりでリズムに合わせて首を振った。
「いいにゃん! 高音パターン二%アップだにゃん! 星座のラインがつながるにゃん!」
VF-578のエンジン音が低く地面を震わせ、砂浜を揺らした。
海風に砂と破片が舞ったが、その巨大な翼は揺るがなかった。
白い機体――VF-578。
救助部隊はそれをこう呼んでいた。〈ウソダ〉。
リオンはコックピットの中で短く呼吸を整え、操縦桿を握りしめた。
「VF-578、展開……行くぞ、ウソダ。」
VFが地を蹴って舞い上がった瞬間、砂嵐の中でもはっきりと見える文字があった。
機体側面に薄く残る、古びたペイント。
USODA。
グロリアは思わず唇を動かした。
「……ウソダ?」
「“嘘だ”って意味にゃん。」ジェイコアが横で耳をぴくりとさせた。
「この機体が初めて実戦投入されたとき、瓦礫の中で生存信号が途切れかけていたにゃん。
みんな諦めかけたその時、一人の救助隊員が叫んだにゃん――『嘘だ! まだ中に人がいる!』って。
そして本当に、生きている人が出てきたにゃん。」
それ以来、VF-578は“諦めない救助”の象徴となった。
嘘のようでいて、本当に人を救い出す機体。
だからこそ、みんなウソダと呼ぶのだ。
「希望は嘘なんかじゃない――その証明を、今も見せてやる。」
リオンは歯を食いしばり、機体を傾けた。
VF-578は水平線を切り裂き、風のなかへ飛び込んだ。
同時にEM送信機が作動し、グロリアの歌声と波動を増幅する。
その瞬間、機体の表面から銀色の光が拡がった。
まるで機械が歌に応えるように、サーチライトが海面に星の軌跡を描いた。
「……歌が、機械を揺らしてる?」
グロリアが驚きに息を呑む。
EEの声が冷たく落ちてきた。
「人間―機体共鳴率 七六%。正常値を超過。特異現象を記録。」
VF-578の救助アームが射出され、漁船の欄干を正確に掴んだ。
風と波が機体を引きずり込もうとしたが、まるで誰かが必死に踏ん張るように、ウソダは揺るがなかった。
「捕まえた! ロープ射出、舵を固定!」
リオンの叫びと同時に、プロペラが轟音をあげる。
救助アームの先端から光が弾けた。
ただの金属の腕ではなかった。
漁船のバランスを整え、揺れる人々を包み込むように、細やかに角度を調整していた。
「こいつは戦闘機じゃない。」
リオンは低くつぶやいた。
「救うことが任務だ。だから今日も……嘘じゃなくしてやる。」
その言葉と同時に、グロリアの歌の波動が機体のEM送信機と重なった。
光と声がひとつになり、漁船を覆っていた恐怖を吹き払った。
子どもの泣き声が止まり、老人の指先に力が戻った。
人々はVF-578を見つめながらつぶやいた。
「嘘みたいな希望が……本物だったんだ。」
ジェイコアがしっぽを振りながら叫ぶ。
「見ただにゃん! 今日もウソダが証明するにゃん! 救助に嘘はないにゃん!」
VF-578はその声に応えるように、機体のサーチライトをきらめかせた。
波の白い飛沫の上で、機体と歌声、そして希望が共鳴した。
エイリンはバリアの裏で倒れかけた老人を支え、椅子に座らせた。
「呼吸、とてもいいですよ。もし倒れそうになったら、私に預けてください。」
グロリアはもう一拍、声を押し上げた。――生きている。
誰かが泣きやみ、誰かがスマホを下ろした。
子供は母親の手を強く握った。
水の壁が目前まで迫っても、足取りは乱れなかった。
津波がバリアを叩いた。
金属が深い太鼓のように鳴り、白い飛沫が宝石の粉みたいに砕けて、人々の肩に降り注いだ。
だがその瞬間、全員の呼吸はすでに整っていた。
胸が爆ぜるかわりに――リズムがあった。
「民間人被害ゼロ。任務完了。」
EEの宣言は墓碑銘のように簡潔で、それがかえって安堵を強くした。
ジェイコアが両腕を突き上げた。
「見たにゃん! 星座の導きだにゃん〜! 今日も天才な俺だにゃん!」
「功績配分、過大。」
EEが即座に訂正する。
「褒められれば猫は踊るにゃん。」
ジェイコアは勝手にしっぽを振った。
砂浜はゆっくりと人の土地に戻っていく。
最初の拍手が一点で鳴った。
二度目、三度目――やがて波のように広がっていった。
名前も知らない子供がとことこ歩いてきて、手を振った。
「猫のお姉ちゃん! もっと歌って!」
青いベストの漁師はマスクを外し、荒れた唇を震わせた。
「助けてくれて……ありがとう。」
涙が砂に点を作った。
そのすべての視線が、グロリアに注がれた。
グロリアは本能的に一歩退いた。
背後のバリアが肩甲骨を冷たく押した。
歓声はひとつに膨らみ、そして突然、耳に押し寄せる波のように一斉に流れ込んできた。
「わ、私……帰りたい。」
声は大きかった。
いや、ユニにとってはあまりに大きすぎた。
口にした瞬間、もう後悔が唇の端に座っていた。
ジェイコアが即座に画面にテキストを出した。
『エネルギーゲージ 0%! 回復アイテム要だにゃん〜! カフェイン・水分・甘塩スナック推奨!』
EEが追記する。
「生体リズム低下。即時休息を推奨。群衆接触、最小化が必要。」
グロリアはそっと頭を下げ、バリアの影へと身を移した。
胸の奥ではまだ波動の残響が鳴っていたが、足はゼリーのように力が抜けていた。
歓声は遠ざかったり、近づいたり、また遠ざかったりした。
視線は依然として彼女を追っていたが、彼女は小さな影のように身を縮めた。
――だがその光景は現場だけに留まらなかった。
SeaComのドローンフィード、ジェイコアの帯域欲張り、MOCの拡張送信網を通して、映像は海を越え、都市のビル群、砂漠の基地、軌道上ステーションの狭い通路にまで流れ込んだ。
それぞれ異なるモニターの前で、それぞれ異なる誰かが、その場面を見ていた。
暗い部屋。
大きなモニターがひとつだけ灯っている。
音は絞られ、画面の色温度は冷たく落ちていた。
銀色の髪を帽子に隠し、薄い眼鏡越しに画面を見つめる男がいた。
表情は揺れなかった。
いや――揺れまいと必死に抑え込む表情だった。
アスレン。
彼の瞳に、グロリアのシルエットが小さく映り込んでいた。
「生きたい」という短い言葉が、画面を越えて彼に届くのに、それ以上のものは要らなかった。
「この声……」
ようやく落ちた一言は、自分に投げかける問いのようだった。
隣で小さなホログラムが瞬いた。
魔法使いの帽子の飾りをつけた、ふざけた球体インターフェイス――アスレンのライブサポートAI、ユーレイ氏だった。
「観測完了。波形固有値、あなたとは別系統です。」
アスレンは答えなかった。
画面の中で、グロリアが歓声を避けバリアの影に半歩隠れるシーンがリピート再生されていた。
指が無意識に再生バーを触れ、止まる。
「……星座の導き、か。」
彼が低くつぶやいたその言葉は、古い歌の題名には聞こえなかった。
ひとりの道、あるいは抗えない流れの名前のようだった。
モニターの光が彼の顔の輪郭を細く切った。
外ではまだ波の音があった。
だがその波はもう、互いを呑み込むことはなかった。
耳の奥で――ごく微かに――誰かの拍手が残っていた。
画面がゆっくり暗くなっていく。
♪♪♪
MOC内部、管理ラインにも通知が走った。
ソラ「現場ログ整理完了。仮コードネーム付与――グロリア。」
メイ「ライブ編集版、すでに外部ネットに拡散中。」
ハルト「確認不能対象が……もう『記録された人物』になったな。」
EE - ##「状態変更:Unknown → Temporary Assist」
短くも重い事務処理。
こうしてユニ=グロリアは、ただの変数から――公式記録に刻まれる存在へと移った。
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