【短編版】隣の席の負けヒロインと青春フラグが立った話

桜井正宗

◆青春 - 負けヒロインの佐田さん

「うわぁぁぁぁ…………」


 誰もいない放課後の教室。隣の席の佐田さださんが俺の隣で泣いていた。俺も最近、フられて泣きたい気分なのだが、今は感情を押し殺していた。

 ――どうやら、この佐田さんもフられたようだ。相手は誰なのだろうか……こんな美少女を捨てるなんてもったいない。もらっていいのなら、俺が欲しいくらいだ。


 しかし、慰めの声を掛ける勇気もない俺は席を立ち……扉を目指す。


 が。


 佐田さんが前に立ちはだかった。……え、なんで。



「ちょっと! 泣いてる女子を放っておくとか、千久間ちくまくん、酷くない!?」

「……ごめん。俺の役目ではないかなって」

「慰めてよおぉぉぉ」

「えぇ……」



 まさかの俺の役目だったらしい。てか、なんで俺?

 他にイイ男なんていくらでもいそうなものだが。それこそ、同じクラスならイケメンの坂田とかさ。……いや、ヤツはすでに恋人がいたっけな。


 仕方ない。佐田さんと話せるいい機会だ。これが初めてで俺もちょっと嬉しかったし。 だから俺は佐田さんに聞いた。



「ど、どうしたの?」

「フられちゃったの……」

「へ、へえ~…」

「なんか微妙な反応!」

「いや、その……俺もだからね」


「え、そうなの!?」



 佐田さんは驚いていた。俺は昨日、三日間だけ付き合っていた彼女のことを打ち明けた。すると佐田さんは同情してくれ、慰めてくれた。……って、あれ、逆に慰められてるぞ?



「――というわけで、現在進行形で絶望してる」

「なんだ、一緒だね」

「そうかもな。つっても俺はたったの三日だけど」



 今思えば、あれは女子間での罰ゲームだったのではないかと思った。話しかけられるまで相手の名前すらしらなかったしな。告白されたから一応で付き合っていた(?)けど。 それでも、俺にとっては人生ではじめてできた彼女だった――はずだった。


 しかし、世界とは実に残酷にできている。

 俺のようなスペシャル陰キャでは、彼女なんてもう二度とできないだろうな。



「そっか、意外だったな。千久間くんも辛い目に遭ってたんだ。わたしだけじゃないんだね」


「ああ、だから死ぬことはないぞ。佐田さん、その……可愛いからさ、チャンスあるって」


 俺がそう助言すると、佐田さんはビックリするくらい顔を真っ赤にしていた。まるで沸騰しているみたいに。……え、俺なんか言ったかな?



「なななな、なに言ってんのさ。可愛くないし!!」

「そうかな。佐田さん、めちゃくちゃ可愛いと思うけど」


「ば、ばかっ!」



 なぜか怒られた。でも可愛い。本当に。



 ――それからだ。俺はなぜか佐田さんと過ごす時間が増えた。以前よりも会話が増えたし、それこそ他を寄せ付けないほどに。


 気づけば、お昼のお弁当を作ってきてくれたり、放課後も一緒に下校したり……あれ、なんか恋人っぽくね? みたいな、でもそうでもないような雰囲気になりつつあった。



 ああ、そうか。


 隣の席の負けヒロインと青春フラグが立った――ってコト?



 いやいや、そんな馬鹿な。世間から目立たず生きている俺のような陰の者に、こんなスーパーアイドル級の佐田さんが付き合ってくれるわけない。ナイナイ。ありえない。


 今はそう、たまたま話しているし、たまたまお昼ご飯を作ってくれているし、たまたま一緒に下校しているだけ。そう、利害の一致ってヤツだ。



 ……なんのだ?


「被害者の会だ!」

「え、突然どうしたの、千久間くん」


 俺の発言に???を浮かべる佐田さん。しまった、変なことを口走ってしまったぜ。


「いや、その……なんだフられた同士の同盟かなって」

「ああ、そうだね! わたしたち同盟関係だよ。うん、今はそれでいい」


 佐田さんは嬉しそうに納得し、俺とガッチリ握手を交わす。……指、細っ。



 更に一週間後。

 俺と佐田さんは、クラスメイトから公認カップルの烙印らくいんを押されていた。――いや、勝手に押すなよ、そんなもん。……ん? まてよ、むしろアリか。



「千久間、お前、佐田さんと仲良すぎだろ!」「毎日おアツイねえ」「もうヤったのか?」「手ぇ繋いだのか!?」「どんなプレイしてるんだ」「あのおっぱい揉んだのか!?」


 と、男共が俺に殺到する。

 なんでいちいち答えなきゃならんのだ。てか、お前たちは少し前まで俺のことなんて、透明人間扱いしていたクセによぉ!?

 今になって、どういうつもりなんだかな。



「知らん」


「知らんだぁ!? とぼけんじゃねえ!」「そうだ、そうだ!」「佐田さんとどこまでやったんだ!」「付き合ってるんだろ?」「さっさと認めろ、千久間!」「いらないなら俺が貰うぞ」「そうだよな、恋人じゃないなら遠慮する必要ないよな」



 最後の方は聞き捨てならん。ちょっとムッときた。なんだこの感情は……。佐田さんと俺なんでもないはずなのに、ムカムカきた。


 何でコイツ等はそんなに俺と佐田さんとの関係を気にしているんだ。


 あ、もしかして狙っているのか!

 だとすれば許せん。



「佐田さんに手を出すなよ。俺と佐田さんは同盟関係なんだから!」


「はあ?」「同盟関係?」「なんだそりゃ」「よく分からんが、俺たちにもチャンスはありそうだな」「……よぉし、佐田さんに告白してみよ!」「いいねえ、俺も」



 ってうぉい、コイツ等人の話を聞いていたか!?


 クラスの男共は一斉に走り出し、佐田さんのところへ向かっていた。……しまった、野郎共、俺と佐田さんの関係を知って行動にでやがった! 機会を伺っていたのか。


 急いで向かうと、佐田さんは告白してきた男共を即斬り捨てていた。



「ぐはあああああ!」「フられた!!」「ちくしょおおおおおお、なんで!!」「千久間とはそういう関係じゃないのかよ」「うそだろ……」「おわった」



 次々に撃沈していくアホ共。


 佐田さんは、斬り捨て御免を終えると俺のところへ。



「千久間くん。付き合ってください」

「……マジか。そりゃ、もちろん」



 まさかの告白。しかも男共がいる目の前で。



「うぉい、マジかよ!」「やっぱり、千久間と佐田さんデキてたんだ」「地獄だ、地獄だ」「死にてええ」「あああああああああ!!」「くそ、マジでクソ!!」「爆発しろ!!」



 そうか、俺は佐田さんが好きなんだ。ようやく気付いた。

 そして、佐田さんも俺が好きなんだ。納得した。



 佐田さんとなら、きっと楽しい日々を送れる。まだ味わったことのない青春を送れるはず。

 本当の彼女と共に。




◆短編版を読んでいただき、ありがとうございます

 いつか長編版にする予定でございます!

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