わたし だいっきらい!
@UsuiTakao
わたし だいっきらい!
とある町にマリーという女の子がいました。
マリーは優しい子で、とてもおとなしい子です。
お友達にからかわれても困った顔をするだけで言い返すことができないぐらい、おとなしい子でした。
お友達も、マリーのことは好きでしたが、みんな子どもなのでつい優しいマリーをからかってしまうのです。
ある日のこと、マリーのクラスにハンナという女の子がやってきました。
ハンナは遠くから引っ越してきた子で、つんと澄ました顔に口をへの字にした、気の強い女の子です。
ハンナはクラスの子とすぐに仲良くなりました。もちろん、マリーもハンナとお友達になりました。
ただ、ハンナはズバズバと物を言うので、お友達からはちょっと怖がられていました。
ある日、いつものようにハンナと一緒に遊んでいたマリーは、クラスのお友達からからかわれてしまいました。いつものことなのでマリーは困った顔をして、ハンナの裾を引いてそのお友達から離れます。
意地悪なことを言われるのは困るけれども、いつもお友達は優しいので、マリーは気にはしませんでした。
少し離れたところでまた遊ぼうとしたマリーに、ハンナはムッとした顔で言いました。
「マリー、わたし、あなたのことだいっきらいよ」
不機嫌そうに、真っ直ぐとマリーの目を見て言った言葉に、マリーはビックリして目を丸くして固まってしまいました。
何秒、何十秒、時間が過ぎたことでしょう。
石のように固まっていたマリーでしたが、どうしてハンナがそんなことを言うのか気になってしまいました。
「ごめんね、ハンナ。どうして、わたしのこと嫌いなの?」
「そういうところよ」
ツンとしたハンナの言葉に、マリーの鼻もつんとしてきて、涙が出そうになってしまいます。
そういうところ、と言われても、どこがダメなのか。マリーにはさっぱりわかりませんでした。
泣きそうな顔で悩んでいるマリーに、ハンナはため息をつきました。
「マリー。わたし、マリーのことは大事なお友達だと思ってるの。
でもね、マリーのこと、好きなところもあるけどだいっきらいなところもあるの。
そうやって、誰かに意地悪されても怒らないところ、マリーの嫌いなところよ」
そう言われてマリーは目をぱちくりさせてしまいました。
だって、今まで怒るのは良くないことだと教わっていたのです。
お父さんもお母さんも、怒るのは良くない、他の人には優しくしなさいと言っていたのですから。
ハンナはそのまま続けます。
「あのね、マリー。
自分に意地悪されても怒らないのは、自分のことを大切にできないことと同じよ。
お友達のことを大切にできない子は、嫌いだわ。それはお友達でも、嫌いだわ。
だから、マリーは自分のこと大切にするためにも、ちゃんと怒るべきよ」
ぷんぷんと怒っているハンナは、マリーのことを心配していたのです。
そのことが嬉しくなって、マリーはつい笑ってしまいました。
「ハンナったら、酷いこと言うからわたし、泣いちゃうところだった。
ううん、怒っちゃう。
ハンナのそういう、意地悪な言い方、わたし、だいっきらい!」
「あら、ごめんなさい。気を付けるわ。
ねぇ、わたしと仲直りしてくれる?」
「うん、いいよ。
だいっきらいなころがあっても、大好きなお友達だもん」
こうしてマリーとハンナは仲直りをして、また遊びはじめるのでした。
それからは、マリーはお友達にからかわれたら、ちゃんと怒るようになったようです。
もちろん、その時はハンナも一緒に怒るのでした。
わたし だいっきらい! @UsuiTakao
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