第9話 告白
水曜日。
もう、この静かな制裁から逃げるのは終わりだ。俺は自分のくだらない臆病さに決別するため、美月のいる場所へ向かった。
放課後、美月は誰もいない教室の窓際で一人、静かに窓を眺めていた。
俺は迷わず、美月の席の前に立った。
「相沢」
美月は顔を上げると、驚きと、どこか傷ついたような表情を見せた。
「…篠宮くん。どうしたの?」
その声は、優しかったが、拒絶の壁を感じさせた。
「悪かった」俺は、深く頭を下げた。「俺のせいだ。お前が俺を避けている理由が、わかった」
美月は何も言わず、静かに俺の言葉を待っている。
「俺は、お前との関係が、ノエルちゃんへの愛を超えそうになったとき、怖くなって逃げた。誰かと深く関われば、また傷つくと思っていたからだ。だから、お前が俺を避けて、もう一度1人になった時、俺が求めた孤独が、こんなにも冷たいものだと初めて知った」
俺は、美月が俺から離れたことで、彼女の存在が、俺の孤独を埋める唯一の光だったことを、全て正直に話した。
そして、深く息を吸い込んだ。
「相沢。お前は、俺になんで聞くのって言った。だから、俺が、今度は質問じゃなくて答えを用意した」
俺は、美月の目を見て、迷いのない言葉で告げた。
「俺にとって、お前がいない孤独は、ノエルちゃんのいない世界よりも、ずっと寂しい。お前との『推し活』は、ノエルちゃんがいたから始まったけど、もう、お前との時間は、推し活を超えた特別なものになった」
俺は一歩踏み出し、美月の手を強く握った。
「相沢美月、好きだ。俺と、付き合ってほしい」
美月は、俺の告白を聞いて、涙を止められずにいた。彼女は、握られた俺の手を、さらに強く握り返した。
「ばか…!私が好きなの分かってたくせに!ずるいよ!」
彼女は泣きながらも、満面の笑顔で頷いた。
「推し活パートナー、卒業。そして、恋人。…もちろん、Yesだよ!」
俺の『パーフェクト・ボッチ』という名の世界は、相沢美月という一輪の花によって、『二人の世界』へと、幸せに再構築されたのだ。
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