第2話 ゴブリン、なぜか強くなる

「はいに決まってるだろーーー!!」


俺が叫んだ瞬間、視界がまたも切り替わる。

耳をつんざくエンジン音、地面を揺らす振動。

さっきと同じ、クラッシュサーキットのスタートラインだ。


「ギィィ!」

ゴブリンはすでにカートに座り、ハンドルをガシッと握っている。

さっきよりも妙にやる気満々な顔つきだ。


「お、おい……お前、さっきよりノリノリじゃねぇか……」


上空のランプが点滅を始める。

3、2、1――GO!!


第2戦

レース1


今回は俺も冷静だ。

スタートを決め、ドリフトでカーブを駆け抜ける。

後ろから聞こえるゴブリンのエンジン音が、さっきよりもリズムよく響く。


「……は? あいつ、ドリフト覚えてね?」


振り向くと、ゴブリンが車体を斜めにしてギリギリでカーブを回っていた。

不器用ながらも、ちゃんとスピードを落とさずついてきている。


「マジかよ!? 俺の真似してきたのか!?」


焦りながらもトップを守り、俺が先頭でゴール。


【結果】俺1位10pt(10pt)/ゴブリン2位8pt(8pt)


レース2


アイテムボックスを奪い合う俺とゴブリン。

俺の手に出たのは赤いボール。

「よし、また勝ったな!」


狙いを定めて投げ、直撃!

派手にクラッシュするゴブリン。


「はっはー! これで俺の勝ちだ!」


……と思ったら、ゴブリンの投げた緑のボールが俺にヒット。


「うそだろ!? 当て返してきやがった!」


結果、逆転負け。


【結果】ゴブリン1位10pt(18pt)/俺2位8pt(18pt)


レース3


最終レース。

俺は薬(スピードアップ)で加速。

「これで決める!」


だがゴブリンの黒いボール(爆発)が炸裂。

俺は吹っ飛ばされ、スピン。


「ぐわぁぁぁ!?」


【最終結果】ゴブリン1位10pt(28pt)/俺3位6pt(24pt)


俺、また敗北。


「ゴブリンつよすぎワロタ……」

ゴブリン「ギィギィ!」(めちゃくちゃ楽しそう)


第3戦


「もう一回だ!」

またもやゴブリンがカートを指差し、ウィンドウが表示される。


【対戦相手からの再戦提案を受諾しますか?】


「はいに決まってるだろーーー!!」


再びスタートラインに並ぶ俺とゴブリン。


レース1


コースが映し出された瞬間、俺はニヤリと笑った。


「ここはさっき走ったコース……なら、ショートカットを使わせてもらうぜ!」


カーブ手前で芝生を突っ切り、ジャンプ台を利用してゴール前に一気に飛び出す。


「よっしゃあああ! これが俺の十八番!」


ゴブリンは驚きの表情。

「ギイ!?」(なにそれ!?)


【結果】俺1位10pt(10pt)/ゴブリン4位5pt(5pt)


レース2


今度は初見のコース。

俺もゴブリンも道を手探りで走る。


「やべ、ここ曲がり角見えねぇ!」

俺は壁に激突。


一方、ゴブリンは運よく赤いボールを拾い、俺を吹き飛ばして悠々ゴール。


【結果】ゴブリン1位10pt(15pt)/俺5位4pt(14pt)


「ぐっ……アイテム運まで持ってやがる……!」


レース3


画面に映ったコースを見て、俺はニヤリ。


「ふふ……また同じコースだな。今回もショートカット決めてやるぜ!」


勢いよく突っ切ろうとした瞬間――。


横からゴブリンのカートが飛び出してきた。

全く同じショートカットを使い、俺を追い抜いていく。


「お前も使うんかい!?」


そのままゴブリンがトップゴール。


【最終結果】ゴブリン1位10pt(25pt)/俺2位8pt(22pt)


俺、また敗北。


「いや……もう、こいつ強すぎだろ……」

ゴブリン「ギィ!」(ドヤ顔)


そして再び浮かび上がるウィンドウ。


【対戦相手からの再戦提案を受諾しますか?】


「……はいに決まってるだろーーー!!」


第4戦以降(ダイジェスト)


それから何戦も繰り返した。

ゴブリンはドリフトもショートカットも完璧にこなし、アイテムまでフル活用。

気づけば俺は完全に置いていかれる側になっていた。


「いやもう師匠やんけ……」


終幕


「……なぁ、もうやめようぜ。俺は疲れた」

俺はカートから降りかけながら言った。


ゴブリンは首を振る。「ギィ!」(まだ走りたい!)


「じゃあさ、引き分けってことで、俺は抜ける。お前はここで走り続ければいいだろ?」


ゴブリンはしばらく考え、満足そうにコクリと頷いた。


「……いいやつだな、お前」


俺はフラフラになりながら現実に戻った。

頭に浮かぶのは、あのドヤ顔のゴブリン。


「……俺の初スキル、思ってたのと全然違うんだけど……」


――第2話、完。

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