第21話パートナー

「リリィ!私と一緒にドレスを探すわよ!」

「えぇ!もちろんよ!私に掛かればそんなのすぐですわ!」

「え、いや流石に申し訳なっ」

そう断ろうとしたところでプレッテが腕をガシッと掴んでくる。

「じゃあプレッテは、リトのパートナー探しに全力を注ぐねー!明日は丸つけで学校ないけど、男子寮に突撃しようね、リト!今日はこのまま部屋で作戦会議だー!」

「じゃあ取り敢えず資材を集めてくるわ。行くわよリリィ!」

「えぇセリー!」


と圧に流されてプレッテのお喋りに付き合わされた。

「なんでみんなそんなに私に……」

(それとも友達ってこんな感じなの?)

「リトは鏡見たことある?」

「あるけどそれがどうしたの?」

「聞き方が悪かったね、自分の裸を全身鏡で見たことある?」

「な、な、ないに決まってっ……」

「脱いでそこに立って待っててね」

その力強い言葉に逆らえるはずもなく裸になって待っているとプレッテが鏡を持ってやってきた。

「長髪の銀髪、ガラスみたいに透明な肌、スラリとしつつも凹凸もあるライン、眩しい黄色の瞳、平坦だけど愛くるしい顔……逸材すぎます。着飾らないなんて勿体無いよ。」

鏡を自分で見てみるけど、あまりピンとこない。

「あはは、ありがと……ってうわっ、なにこれ?!」

気づくと私の周りに黒い糸が巻き付いていた。

「リトの体の周りの空間を利用して、採寸してみたんです。」

「闇魔法ってこんなこともできるんだ。」

「はい!そうなんです!闇魔法ってすっごく便利で!」

闇魔法を熱弁していたが、時間も経たないうちに私は眠りについてしまった。


瞼を開けるとリリィとセリーが戻ってきていた。

(あれからどれくらい時間が経ったのかな)

「リト、おはよー!」

「うん……おはよプレッテ」

「あら、リト起きたのね」

明るい光が、日が差している。今はお昼前くらいの時間なのだろう

「うん、おはよ……セリーは寝てるの?」

セリーは机に突っ伏す形で目を閉じている。

「えぇ、昨日一晩中かけてドレスを仕立てていたのですから疲れてしまったのでしょう。」

(たったの一晩で?!)

思わず目を見開いてしまった。

「凄く驚いていますのね。少しドレスの長さを調節して、デザインをアレンジしただけですのに。」

そう話すリリィの視線の先には美しいドレスがあった。緑と青が重なって出来たような深く、明るい黄色をしたドレスがそこにあった。

「こんなに綺麗なドレス……」

ぽぉーっとドレスを見つめる。

(キラキラと輝いているドレス。これを自分が着るなんて……)

「じゃあ次はリトに釣り合うパートナー探しに行きましょう!」

「えぇ、そうね……と言いたいところですけど」

リリィは寝てるセリーをちらちら見ている。

「心配なんですね。セリーのこと。」

「ち、違いますわ!私もす、少し休憩をと思っただけですわ!」

「ふふっ、そういうことにしとくけど………じゃあ、リトのことは任されました。行くよ!」

「え、ちょっ」

「いってらっしゃいませですわ〜!」

プレッテに勢いよく引っ張られて私たちは部屋から駆け出した。


「まずはリトの好みのタイプを探そしましょう!で、好みのタイプはなに何でしょうか?!」

寮の前まで着いて、そう聞かれ好きなタイプの男性を考える。だけど思いつかないため、適当に言うことにした。

「……普通な人かな」

「普通かー、性格が?それとも見た目?」

「えーと…両方?」

「やっぱり嘘だー!それで本当に好きなタイプは?」

私は諦めて正直に言うことにした。

「特に好きなタイプとかはないんだ」

「じゃあ一番最初に思い浮かぶ男性は誰かいる?」

(そう言われても簡単に思いつくものじゃない……し……)

一人の顔が頭をよぎる。

「…………ドレアン先生」

ボソッと小さく呟いた。プレッテがそれに気づいて私の口を両手で覆う。

「あっ、ごめんなさい。手を出すつもりはなかったの。」

「ううん、私の方こそ軽率だったよ。気遣ってくれたんだよね。」

ドレアン先生は今回の事件の首謀者として王族の名で処理されている。そのため彼を擁護することはもちろんのこと、話題にすることは自分たちの平和を考えるならしてはいけないことなのだ。

(………めんどくさい)

「え…と……それなら見知った人の方がいいかもですね。クワイル、シオル、ゲニウス、あとあれだよ学年首席の子………もちろんダズはダメだからね」

(別に誰でも良いけど……クワイル、シオル、ルミナス辺りは女子が面倒くさそうだから……)

「その中ならゲニウスがいいかな」

「それではゲニウスを探しましょう!」

取り敢えず、私たちは男子寮へ向かった。男子寮への女子の立ち入りは禁止となっているが、ロビーへの立ち入りは許可されている。部屋番号さえ分かれば自室にいるかどうかは確かめられて、呼び出すことも可能だ。それは女子寮も同じである。

「あれ、ロビーの前に人だかりが何でしょうか?」

そう言われて前を見ると、男子寮ロビーの前に驚くくらいの人だかりが出来ている。近くに近づくに連れ言葉がはっきりと聞こえてきた。

「なんで王族の皆様がこちらに?」

「アビー様今日も愛らしいです。」

「……王族が来ているみたい。珍しいことも……ってプレッテ、プレッテ!」

「え……い、はい。すいませんボーっとしてました。王族方が来ているのでしたよね。」

(プレッテ……早く用事を済ませないと)

「私すぐ見てくるからここで待ってて。」

すぐに行こうと思ったけどプレッテに袖を掴まれて引き止められた。

「私も行く!」

必死に言うプレッテの手を振り払うことはできなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る