第16話定義

二人で話していると、ある人物が会話に割り込んできた。

「あらあら、これは寂しがり屋のクワイルさんではないですか。」

クワイルは、最初無口で高飛車な印象だった………態度だったが、三ヶ月という月日を経て仲が深まったのだろう。今はクラスの頼れるかわいい弟ポジションに落ち着いている。

「そのまわりくどい言い方は直らないのか………」

「ねぇ、クワイル呑気ってどういう意味?」

そう聞くと、私たちに呆れたのか、ため息混じりに小声で話し始めた

「ウィンターホリデー前に小型試験があるだろう。それで合格ラインを取らなければ祭り期間中も補習だという話を聞いた。」

それを聞いて、リリィは少し驚いたようだったが、すぐに立ち直り始めた。

「あなたはこのリリィ・フレイム・ソリタリィが補習を受けると言っているのかしら」

「そうだが」

「そんなこと言って、足を掬われないよう。あなたの大好きな御家族と祭りを過ごせないなんてことにならないと良いですが」

「確かにそれは困る………よし、今日から毎日八時間試験勉強をやろう。お前たちも付き合うか?」

「冗談はそんな真顔で言わないでくださいまし………」


「みなさんおはようございます。もうすぐ試験がありますね。この試験に対して色々な噂が飛び交っているようですが、そんな噂に惑わされず、しっかり合格点をとってくださいね。さて、前置きはここまでとして本題に入りましょうか。」

ブラべ先生が話を進める。しかし、試験での合格が前置きって………なんだか、脅されている気分になる。

「実はうちの学校でも年明けを祝したイベント……ミニプロムみたいなものがあるんです。参加は自由なので強制はしませんが、学校側から提供する数少ない思い出作りの場なので、積極的に参加しましょう。」

プロムか……そういえば「もうすぐ正真正銘学校側主催のイベントが開催されるんだ!!」って珍しく大はしゃぎしていたような。

「では、本日も魔法について学んでいきましょう。」

そうして、授業が始まる。

「魔法の定義について考えていきましょう。魔法とは私たちが生まれてから"常識"として存在する現象です。水を望めば水が、炎を求めれば炎を出現させることが可能です。ですが、この世界の常識として無から有は生まれないです。では、何が起こって水や、炎を出すことができるのか、考えて見てください。」

物質が原子から成り立つことはみんな知っている……ということはその間のよくわかっていない部分について考えろという意図だろう。私は考えがまとまる様、髪を取り出し、そこに考えを書き連ねていく。魔法とはそこにある元素たちをくっつけてモノを生み出す。昔、聖女かなんかの影響でsdi(シディオン)という原子と原子を無理矢理"結合"させる新たな原子を生み出したとされている。偶然か必然か、シディオンの存在が露わになってから、生まれた子供にはそれを活用できる魔力が体内に存在していることが発覚し、魔法文明は発展していった。魔力とシディオンの反応にはそれ程の力が備わっている………答えはこんなものだろう。

「さぁ、それぞれ考えがまとまってきた頃でしょう。解答としては、新たな原子の誕生です。詳しくは………」

その後の説明は概ね私の予想通りだった。

「まぁ、定義としてはシディオンによる原子結合により、起こる現象と言ったところでしょう。こんなところですが、シディオンの誕生については研究中なので、先生に聞くのはやめてくださいね。」

そして授業が終わる。

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