第11話会議

「それでは成績会議を始める………まずは一年生からじゃな」

緊張感のある空気から急に和やかな雰囲気にかわった。

「ではポウェル先生のクラスから順に見ていきましょう」

「オディナ・アクア…………彼女も退学で良いでしょう」

そう言い切るのはポウェル・フレイムだ。

「ポウェル先生、お言葉ですがあなたのクラスの退学者もう三人目ですよ、流石に判断が厳しすぎるのでは」

それに意を唱えるのはメルシー・グレース。

「メルシー先生あなたは甘すぎます、これからの魔法界を引っ張っていく素質がない者はこの学校に通う意味がない」

「ですが、それを決めるのは時期尚早では?!」

「お二人とも静粛に、校長に判断を仰ぎましょう」

そう話すのは教頭のセフレ・オール・クリエイトだ。教師の視線が校長に集まる。

「ふむ、オディナくんの才能のなさは一目瞭然だな」

「……では、退学処分と」

「だがしかぁぁし、彼女………とてもプリティーじゃないか?」

「校長ふざけないで下さい。」

「では校長、オディナさんはこのまま学校に通えるのですね!」

「ん?……退学処分じゃが……っとこれでポウェル先生のクラスは終わりかね、次はメルシー先生のクラスじゃな」

「……はい」

そんな、無慈悲な選別は着々と進んでいった。


「それでは次、ブラべ先生のクラスですね」

「これは、優秀な生徒が多いですね。ですがリト・ホーリー彼女が気になりますね。」

フレド・アクア・ヘロンが言う。

「……確かに、特筆できるものとして、魔力量と精神力が挙げられますが、魔力量は多少多い程度、精神力に至っては個性でしかありません。逆にそれ以外が微妙となると退学処分は妥当かと……なにより、なんですかこの筆記試験の点数は!」

彼女の試験の点数は第一試験が平均より大幅に下回っているのに対し、第二試験の点数は上位一桁に余裕で入る点数をしていた。

「彼女は退学にすべきです。応用はなっているが、基盤が整っていない。これでは遠からず躓いてしまう。」

「だが、ホーリーの入学者は今年二人そのうちの一人を退学にしてしまえばあと一人になってしまいます。」

「それになんの問題が?それに、ドレアン先生が肩入れなんて珍しい、普段はそんなこと一才なさらないのに」

「肩入れしていたらなんなんですかね?

「認めるのか。」

「仕様がないじゃないですか、彼女には才能があるんだから。」

「ふん、教え子だからそう見えるのでは?」

「ポウェルよ落ち着け。」

場が静まる

「……ふむ、ブラべ先生から見て、リト・ホーリー天才なのかね?」

「私から見たリト・ホーリーは……………秀才になれない天才に思えます。」

「秀才になれない天才とはどういうことか説明してもらいたいな」

イロン・アースがいう。

「その理由としては、彼女の媒介物が挙げられます」

「媒介物ですか……そう言えばリト・ホーリーの媒介物は石でしたね」

「それはなにかの原石なのでしょうか」

「いえ、ただの石でした」

教師が響めく

「みなさん知っての通り、魔力量と媒介物には密接な関係があります。魔力量の多い者は宝石や自然物、思い入れの深い物を媒介物としています。それは、それ以外のものでは己の多大な魔力を制御することができないからです。ですが、リトの魔力と媒介物はそれに当てはまらないのです。」

「要するに、リト・ホーリーの魔力は石っころと釣り合っていないと?」

「えぇその通りです。もし、それが本当なら彼女の精神力ともに技術力は才能と呼べるかと。」

「ふむなるほど。ブラべ先生ありがとう。では次にドレアン先生よ、お主の意見も聞かせてくれ」

少しの沈黙の後ドレアンが言った。

「…………リト・ホーリーは願ってないんです」

「願っていない、それはどういうことなんですか?」

「簡単に言うと魔文の省略だ。実力に伴い魔文を省略し、魔法を発動させることが可能だ。一年生でやってのける生徒も複数いる。」

「魔文を省略している、ということか………しかも願いの部分を…………ん?」

イロンはそこで、ある疑問が浮かんだような仕草をした後言った。

「彼女ホーリーだったよな?」

「それは妙ですね」

それに同調するように他の教師も声を上げる。

「ホーリーにとって願いは全てだ。だからどんな高位な者であれ、願いの省略などあってはならない。」

「それなのに彼女はそれをやっている。」

「まぁ毎回ではないがな」

「はぁ、ドレアン先生それを先に言ってください」

「リト・ホーリー彼女はいいじゃろう、才能があるにしろないにしろ。暫く見守ろうではないか」

「な、校長待ってくだ」

「ポウェルくん」

「……………わかりました。」

教頭が一つため息を溢して言った。

「それでは次のクラスに移りましょう」


「結果的に七十八名中、十九名が退学処分となり、十一名が補習となりました。」

「いやぁ〜、今年は退学者少なかったですね。」

「それもだが、トップ二名に驚いた……総合一位、二位が頭何個も抜けてるんだから」

「これからが楽しみです!」

「では、一年生の成績会議を終わります」

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