第10話精神試験

そう思ったのも束の間ですぐに精神力を計るテストが行われた。

「それでは最後に精神力の試験についての説明を行います。精神力を計るため、みなさんには悪夢を見てもらいます。」

先生はそういうと香水のようなものを取り出した。

「これは悪夢を見せる香水、名付けて………アク〜むです。これを使い悪夢に誘い込み心の揺れを検知します」

なんて、単調な名前なんだろうかと思ったのとは裏腹に、性能はすごいらしく、先生は香水についてノリノリで、説明していた。


「……おや、もうそろそろ試験を開始しないといけませんね。」

あれから二十分もの間香水について話され、限界まで疲れていた私たちは、それを超える疲れを背負ってしまった。試験は全員同時に行われるようで、もちろん成績に反映されるがそれよりも自分の精神力について知ることを目的とされた試験らしい。だから気楽に受けよとのことだった。床に寝転がり試験が始まるといつの間にか景色が変わっていた。


あたりを見渡すと夜の森にいた。どうすれば良いのか分からなかったが、目の前に灯りの灯った家を見つけたため、そこに向かうことにした。そこはどうやら教会だったらしく、夜なのに礼拝をしている様だった。窓から中の様子を伺うと、神父らしき人がなにか呟いている。よく聞こえないので耳をもっと近くに傾けると

(うわっ……体が壁を通り抜けた)

その後声を出しても誰も私に気づかないのを見るに、自分が透明人間状態にあると分かった。

それが分かると同時に神父が語り出した。

「あぁ神よ……なぜ我々にこの様な試練をお与えになるのでしょうか……魔獣に民も畑も壊されました。唯一残ったものがこの教会と私だけ……ですがそれももう時間の問題でしょう。」

教会のドアから目を赤く血走らせた、一匹の魔獣が入ってくる。

「あなたを愛せたらどれほど良かったのか……あなたに愛される存在になれたらどれほど良かったのか……あぁ神よ、彼を一人この世に残してしまう我々をどうかお許しください………彼の未来に幸多からんことを。」

神父がそういうと魔獣により、全てが壊された。



周囲が暗くなり場所が変わる。そこにも魔獣がいた。

「消えろ、気持ち悪りぃんだよ」

「うちの子を殺そうとして、害獣はどっか行きなさい」

「あっ、あいつ俺ら人間を殺す悪いやつなんだ、みんなで追い払おうぜ!」

魔獣はどこか悲しそうに、その場を後にした。

(待って)

そう思い、魔獣の後を追うと魔獣が私を見つめた。魔獣は私の額に頭をぶつけてきた。魔獣は人間に害を与える生き物だが、少しも怖くなかった。逆にどこか安心するような感覚になった。


(あれ、ここは?)

気がつくと目の前には見知った天井が広がっていた。

「あぁ、リトさんお疲れ様です。」

「リトさん、おはようございます!」

「リト、起きたんだな!」

目が覚めるとダズとゲニウスが声を掛けできた。他にもクレラゼとプレッテが目覚めていた。

「うん、そうみたい。」

「リトさん、全員終わるまで待機らしいですよ。」

プレッテにそう言われて、周りを見てみると寝ている人たちはみな呻いていた。

「……私もこんなんだったんですか?」

「いいえ、リトさんはとても静かに眠っていましたよ。彼らは少し悪夢にうなされているだけですのでご安心を。」

先生はそういうけれど………。

「ぅ、うわぁぁぁぁぁ」

これがうなされるで済まされるのかが分からない。何より……。

「ぐっ、っうぅ」

いつも中心でまとめ役を担っているシオルが辛そうにしているのを見ると心が痛む。

「ぁああああああ」

(えっ?)

シオルを見ていると急に光の欠片が飛び散った。そして、飛び散った欠片が無雑作に刃を向ける。

「お、おいシオル正気か?!」

「どうみても、正気じゃないねぇ」

「これは、これは、かなり危ないですね。リトさん緊急連絡でドレアン先生を呼んでもらえますか。テストの検査中で目が離せないのでお願いしたいです。」

「わ、分かりました。石よドレアン先生に緊急連絡を」

すると、一秒もせずドレアン先生が現れた。私たちが状況を説明しようとするがその前に魔文を唱えた。

「保護膜よ彼らを守りたまへ、十字架に祈りを捧げる。……で良かっただろ、ブラべ……先生?」

「えぇ感謝します。」

す、すご……い。

「すっげぇぇ!誰も何も言ってないのにすぐに対処した、なんで自分のやるべきことが分かったんだ?!」

「ん?……あれくらいできないとホーリーとしては失格だ。ホーリーである意味がない。」

頼むからこっちを見ないで、それ言って欲しいですよ。

「おー、リトさん試験は順調か?」

「は、はい……それなりに」

「リトさん、俺ははなんで保護魔法を即座にかけれたと思う」

「……この試験では、そういう理由でしか呼ばれないからですか?」

「…………はぁ」

「なんですかそのため息」

「お前の不器用さに悲しみが込み上げちまってなぁ」

私の不器用さ………何のことを言っているのか見当がつかない

「不器用さが私の解答とどう関係するんですか」

「はぁ………無駄な遠回りをしているんだ、お前の答えも一理あるが、もっと簡単な答えがある。」

「簡単な答え……まさか全クラスの試験を監視」

「俺が天才だからだ」

「うぅ、頭が痛いですわ」

「リリィさんお目覚めですか?」

空気が冷え切ってしまいそうだったがリリィが目覚めたことによって会話を終わらせることができた。ありがとうリリィ。


その後、全員が無事に目を覚まし、試験は終了となったが、シオルは安静を計るためドレアン先生と共に保健室に行くことになった。上級生のテスト期間も終わり、私たちは四日間の休日が与えられることとなった。

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