第4話 外伝『創世の修行者』

——最初に、闇があった。

音も、形も、時間さえも存在しない。

ただ、果てのない「沈黙」だけが、世界を満たしていた。


その中で、ふと“考える”ものが生まれた。

それが、後に修行神と呼ばれる存在——ルオ・ザルである。


「……なぜ、私はここにあるのだろう。」


それは、宇宙で初めて発せられた“問い”だった。

問いが生まれた瞬間、世界はわずかに震えた。

その震えが“始まり”となり、やがて存在の波が生まれた。


ルオ・ザルは、まだ形を持たぬ意志だった。

自らを知ることもできず、ただ存在し、揺らめくだけ。

だが彼は気づいた——

「考える」ということは、変わるということ。

変わることこそ、存在する意味なのだと。


「変わるには、苦しみが要る。

苦しみこそ、存在を磨く“修行”だ。」


そうして、彼は自らに課した。

痛みを知る修行。孤独を味わう修行。沈黙に耐える修行。


闇の中で、彼は自分の内に“敵”を作った。

疑念、恐怖、傲慢、怒り。

それらと戦い、克服するたび、彼の光は強くなった。


そして、初めて“涙”が零れた。

その一滴が虚空に落ち、光となった。

それがこの世界で最初の星——**始星(しせい)**である。


「私は理解した。

苦しみを超えた先に、光が生まれるのだ。」


彼はその星に名を与えた。

「修(しゅう)」——修め、行う、成す。

この言葉が、後にすべての“修行”の源となる。


千の時が過ぎた。

ルオ・ザルはついに形を得た。

光の衣をまとい、瞳に宇宙を宿した存在。

それが、神の原型だった。


「私は“完成”を望まぬ。完成は終わりだ。

永遠に未完成であること、それが修行である。」


彼は一人、闇の中で手をかざし、言葉を紡ぐ。


「汝らすべての存在よ、変わり続けよ。

それが、私の祈りであり、私の理(ことわり)だ。」


その声が響いた瞬間、

世界の彼方で幾千もの光が生まれた。

それが、後の“神々の種”だった。


だが——彼はまだ知らなかった。

その中から、修行を忘れ、力だけを追い求める存在が現れることを。

やがて訪れる「神々の堕落」の時代を。


ルオ・ザルの長き修行は、まだ始まったばかりだった。


📖 次回外伝第二話:「孤独なる創造 ――神々誕生」

修行を続けたルオ・ザルが、ついに“他者”を創り出す。

だが、その選択が世界の歪みを生み出してしまう——。

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