第17話 レイ兄さま
「シン坊っちゃま、新聞はご覧になりましたか。新しい聖女さまが発見されたようですよ」
開いていた本を閉じ、振り返る。
いとこのレイ兄さまは、母の甥。つまり、いとこにあたる。母の若い頃に生き写しで、見目麗しい。
「それがどうしたの」
ミーハーな人ではなかったはず。レイ兄さまが、テーブルの上に紙面を広げる。
「新しい聖女さまは、サッシャー・グレイスさま」
肝腎の場所を指差す。聖女さまは所望する。運命の
「きっと、シン坊っちゃまの運命の番ですよ! 間違いありません」
腰に手を当て、目をキラキラさせている。
「ああ……」
写真に目を遣る。この能天気な笑顔。この人は、前世から契った恋人に違いない。
今じゃない。頭を抱える。
「お父さまに言ってしまったの。僕は、オメガとは結婚しないって……」
母の墓前で誓ったばかりなのに。レイ兄さまが身じろぐ気配。肩に手を置かれる。
「大丈夫ですよ。私の叔父上、シン坊っちゃまの母上のことですね」
こくんと頷く。
レイ兄さまは、その場でしゃがんだ。
「あなたのお母さまは、あなたに生涯独身でいることを望みませんよ。むしろ、運命の番を見つけてほしいと……」
目を逸らす。そんなことは解っている。
「
レイ兄さまが固まる。
「え?」
完全に忘れていたな。
「申し訳ありません! シン坊っちゃま!」
ぎゅうと抱き締められる。年の離れたいとこが可愛いのは解る。でも、一応、王子だぞ。
「まあ、言っても、王子ですからね。どうにもならなければ、最終的にミナさまがおられますから……」
これが本音か。全く相手にされていないけれど。小さく溜息を吐く。
「ミナさまって、レイお兄さまと同い年でしたっけ。確かもうすぐ入学式ですよね。もしかしたら、お二人が運命の番だったりして」
二人して、あははと笑う。まさかね。
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