入部テスト ~調査編~
調査開始!
戻ってきた部長は制服は血まみれで首元には縄がまだ括り付けてあった。一体何を着替えてきたというのだ。
「よし。今度こそ入部テストを始めたいと思う。準備はいいか?」
「はい。大丈夫です」
先輩の服装は一旦無視して、僕は姿勢を正して気合を入れなおした。その様子を見ていた部長は頷いた後、室内にあったホワイトボードに入部テストの流れを書き込んだ。
「これから君には今日の監視カメラの映像を見てもらう。その動画には私が殺される一時間前と一時間後までの映像が保存されている。さすがに殺されるシーンはカットしてあるが、十分手がかりになるだろう。その後は事件を解くのに必要な手がかりを探してもらう。同時にそこの三人に聞き込みをしてもらって最後に答え合わせという訳だ。ここまでで質問は?」
なるほど。まさしく探偵をやれということか。そうだな。聞きたいことは・・
「この中に犯人がいますか?」
「ノーコメントだ」
「三人が嘘をつく可能性は?」
「当然ある。だが三人は共犯ではない」
「神崎部長と犯人はグルですか?」
「まあ、グルといえばグルかな。私が私を殺すための計画を考えて犯人に伝え、そして犯人が実行した。私が殺された後は、当然私は死んでいるので自分から動くことは一切していない」
「犯人以外は殺人が起きることを知らなかったのですか?」
「犯人以外は知らなかった。私が死んでいるのを発見した時の皆の反応はとても面白かった。そして皆にもまだ犯人は知らせていない。証言が正確ではなくなるからね」
「回答の期限はいつまでですか?」
「そうだな。明日の18時までかな。ちなみに今日のリミットは19時までであと2時間だ。・・・質問は以上かな?」
「はい。大丈夫です。」
思いついたのはこれくらいかな。また疑問が出てきたら質問しよう。
期限は明日の18時か。あまりのんびりはしていられないみたいだ。動画を見る前にまずは現場検証から始めたい。
「先に室内を調べてもいいですか?」
「ああ。構わないよ」
先輩に許可をもらって、僕は一旦教室を出て廊下に出た。もう一度教室に入るところから始めてみようと思ったからだ。中から先輩達の話し声が聞こえる。
「私たちはどうすればいいんだ?」
「それぞれいつも通り過ごしていてくれ。そして佐藤君が質問してきたら答えてくれればいい。」
「うい。散乱している机と椅子は戻してしまっていいかな?」
「大丈夫だ。事件当時の状況は監視カメラにも映っているから問題ない。」
「えっと。しーちゃん。この床の血とかはどうするの?」
「片付けよう。それと窓も開けて換気もしようか?」
「ちょっと。ほんとにあいつを入れるの?」
「まあね。だが入部テストに合格できない場合は、残念だが別の新入生に入ってもらおう」
「そうなの?!さっきの誓約書は?」
「あれは所詮ただの紙だ。私は能力の無い人間をここに入れるつもりはない。さあ片付けに入ろう」
「栞。それは・・」
教室からガタガタと掃除をする音が聞こえる。もう少し小声で喋れないのか。
森山先輩はさっき歓迎会と言っていたのに言ってることが違くないか?僕はてっきり数合わせで呼ばれたと思っていたのに。
能力の低い人間?おそらくここでは推理能力の事だろうが・・そもそも探偵部とは何だ?普段何をしているんだ?
しばらく考えていると、窓の黒いカーテンは取り外され、ドアの窓に貼られている白い紙も撤去されて中の様子が伺える。そういえば岸先生は部長の事をしーちゃんと呼んでいた。生徒と先生にしては仲が良すぎる気がする。プライベートでも親交があるのだろうか?
いけない。とにかく今は事件の調査だ。僕は窓から教室の中を改めて観察した。
先輩達はテキパキと掃除をして数分で元の教室に戻った。僕は元の教室の様子を知らないのでそうなのだろうと思っただけなんだが。
この教室の広さは20畳くらいで真ん中に机と椅子が四つ置いてあり、2対2で向かい合っている。そこには森山先輩、ギャル、岸先生の三人が座っている。奥には机が一つあり、そこには部長が座っていた。
出入り口のドアは一つしかなく、窓は入口と反対方向の壁に一つずつしかない。
そして天井にはイギリスを思わせる黒基調のシャンデリアがぶら下がっている。天井からは大きな頑丈そうな鎖が一本伸びており、その鎖がさらに6方向に伸びていてそれぞれに明かりが灯っている。とても高そうだが、部長の私物だろうか。
ある程度観察したところで僕は教室に入り中の様子を確認する。教室に入って左側には掃除用具を入れるためのロッカーがあり、左右の壁沿いにはそれぞれ大きな収納棚があり、仲には様々なものが置かれていた。
収納棚をそれぞれの部員で分けて使っているのだろう。カテゴリーごとに綺麗に四つに分かれている。よく見ると棚の上にはそれぞれの名前が記載されていた。部長の棚にはミステリー小説の本や縄。制服。赤いろうそく。血のりが置いてあった。いかにもミステリー小説が好きな人のスペースだ。日頃からトリックに使えそうなものは集めているのだろう。
部長に巻き付いてあった縄と血のりは部長の私物らしい。
「これらの棚の私物はいつからここに置いてあるんですか?」
「そうだな。一週間前くらいかな。」
なるほど、部員の皆もここに縄と血のりがあることは知っていたという事か。
そのまま一番下の棚を覗くとなぜか赤いブラジャーとパンツが置いてあった。なんだこの派手な下着は。
「えっと。この一番下の赤い下着は、何かのトリックで使われるものなんですか?」
「違う。それはただの私物だ。」
「・・・へー。そうなんですね」
僕がそのまま下着を眺めていると、背後に人の気配を感じた。僕はとっさに頭をガードするが、ガードした手を上履きで思いっきり叩かれた。とても痛い。
「きもい」
それだけ言ってギャルは自分の机に戻っていった。
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