この部はやばいかもしれない

「それではこれから佐藤奏君の入部テストを始める!」


僕の正面で仁王立ちしている彼女が楽しそうに声を張り上げる。すると岸先生が一台のノートパソコンを持ってきて机の上に置いた。僕は椅子に座るように促され、ノートPCが置かれた机の前に座った。画面にはこの教室らしき風景が映っていている。


「と。その前に私は着替えてくる!薫!後は頼んだ!」


そう言い残し部長は教室から出て行ってしまった。


「何で私には頼まないのかしら。」


「まあまあ。たまたまだよ。」


不満そうにギャルが呟くと、森山先輩がギャルの頭を撫でた。その様子を羨ましそうに見ていた岸先生に気づいて、先生の頭も一緒に撫でる。


それを羨ましそうに見ていた僕に気づいて、森山先輩が手招きする。僕はすかさず頭を突き出すと、感じたのは鈍痛だった。


「いた!何するんですか!」


「駄目よ!部活にすら入っていないのに!入っても駄目よ!」


やはり僕の頭を叩いたのはギャルだった。いずれ仕返ししてやるとこの恨みを脳に刻み込んだ。とにかく今は入部テストだ。部長とのデートもかかっているので頑張らないと。


「まだ聞いてなかったですが、入部テストって何をするんですか?」


「神崎から渡された紙があっただろう。 「さあ、私の死の真相を解き明かせ!」と。君には神崎がどうやって殺されて誰が犯人なのかを推理してもらう。見事当てることができたなら晴れて探偵部の一員という訳だ。」


「それは分かりますが、このノートPCは何に使うんです?」


「そうだな。見てもらったほうが早いか。」


森山先輩は少しの間PCを操作した後に僕に画面を見せる。


そこには三人の女子に囲まれてノートPCの前に座っている男子生徒が映し出されていた。


これは、まさか!


僕が立ち上がると、画面の男子生徒も立ち上がった。


さらに画面にはカメラに向かってそれぞれ決めポーズをしている女三人組の姿があった。


「ちょっと!岸先生!教室に監視カメラなんていいんですか?」


「ううっ。この教室は普段は探偵部しか使っていないし。。あの。その。ばれなきゃいいかなと思って。」


先ほどまでノリノリでポーズをとっていたというにのに僕と目が合わないようにしゃがみ込んで机の影に隠れる。なんだこのダメ教師は。僕の中で岸先生の威厳というものが急激になくなっていく。


「まあ動画として残っているのは三日前の映像までだし、今までだって探偵部以外はほとんどいなかったわ。」


確かに空き教室に出入りする人間などほとんどいないだろう。そういえばなぜ探偵部は部室棟を使わないんだ?部活は基本は部室棟を使うようにとそこの先生に教わったのだが。


「そういえば何で探偵部はこの教室を使っているんですか?」


皆に視線を向けると全員が気まずそうにこちらを見た。口を開いたのは岸先生だ。


「えっと。部活動は四人以上が必須なのだけど。探偵部はその・・元もと三人しかいないから・・」


「え?探偵部って部じゃないんですか?!てっきり後一人いるのかと思ってました。・・・あれ?じゃあ入部テストとかしてる場合じゃないのでは?」


「まあそうなんだけれどね。君が部に入るのは確定しているというか。まあ歓迎会みたいなものだよ」


確定している?森山先輩は先ほど僕が血判を押した紙を持ってきて長ったらしい文章の途中の一文を指さした。


そこには「私は入部テストの合否に関わらず探偵部に入ることを誓います」と書いてあった。


ばっと顔を上げて皆を見ると誰も目を合わそうとしない。その時勢い良くドアが開き、着替えたはずなのに再び血まみれになっている部長がいた。ドアに手をつきながら誇らしげに口を開く。


「ほら見たまえ!血のりだとまた大変なことになるからね!水性の絵具で血を再現したんだ。どうだ?なかなか血みたいだろう?・・ってみんなどうしたんだ?」


僕は心の中で思った。


「この部は思ったよりやばいのかもしれない」








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