第3話 俺の悪癖
突然だが、俺はクズだ。急にどうしたんだと思う人も多いと思うし、なぜそう思うのか疑問に思う人もいると思う。原因の大きな1つとして俺の悪癖がある。俺は、前世のものごころ着く頃、それこそ産まれた時からそうだったんだが、俺はガードが硬い相手を自分に依存させることに悦楽を感じていた。小さい頃はかわいいもので単純に友達の優先順位の1番になりたかった。しかし、小学校3年生になるころから変貌していった。きっかけは友達がサッカーに自信を無くししかも、サッカーを続けるには無理をしないといけない状況になったときだった。辞めるか迷っているあいつにみんな、辞めた方がいいと言ったことしか言わない。確かに、現実的に考えればそうなんだが、あいつは明らかに続けた方がいいと言って欲しそうな顔をしていた。
だから、帰り道あいつと2人きりで帰るときに、
「サッカーのことなんだけどさ、お前続けた方がいいよ。好きなんだろ?」
「好きだけどさぁー、無理してまでしたいかって言われると…」
「でも、お前サッカーうまいじゃん!ドリブルとか丁寧だし、もったいないよ。」
サッカーの上手い下手はぶっちゃけよくわかんなかったけど、あいつがドリブルにこだわってたのは見てればわかったし、そこら辺を褒めて辞めたくないあいつに辞めない方がいいって言ってみた。そしたら、あいつ嬉しそうに
「そっかな、じゃあ、俺頑張ってみる!」
っていってそれから俺に何でも話すようになった。この瞬間俺はこいつの特別になった。家庭環境の話、将来の夢、好きな女の子全部話してきた。ペアを組むときは俺のところにいの一番でくるしで、浅く広くで行きたい俺はわずわらしくもあったが同時に面白かった。この面白かったってのは俺を信頼してるそいつじゃなくてたった一言でここまで気を許すこともできる人間の心の動きだった。
それから俺は自分の言葉でどれほど人からの親密が変わるか試した。ついには、言葉だけじゃなくて体や表情筋、筋の使い方まで理解した。俺は、意識して人の心のやわいところに居座れるようになった。慣れてくると難易度は高ければ高いほど面白くなる。そうして俺は、"仲良し"、"絆"そういうものに縛られそうになったら離れてを繰り返していた。
◇◇◇
ある日、小説を読んでいた時に俺は気づいてしまった。その小説の黒幕は俺がしていることにそっくりだったからだ。しかも、その黒幕は作中最悪のクズだだった。俺は、取り入った人間を使って悪さや人間関係を悪化させるようなことを唆したことはなかったが、人の弱さにつけ込んで取り入るところはまるで同じだった。俺はその作品の主人公が言った「人の心をもて遊ぶなんて、そんな権利どこにもない!」という言葉に強く動揺した。今まで悪い事をしてきた奴のうちどれほどの人間がそれを悪い事だと認識しているのか?…まあ、つまりそういう事だ。それから俺は意識して辞めるようにした。しかし、無意識とは怖いもんで、『心の脆い部分を持つ人間っていうのは同時に外に対して警戒心が強い。そこを突破して相手の全幅の信頼を任せられるようになる。』この悦楽に気づけば浸っている。そこで、俺は自分に絶対的な"ルール"を作った。
1つ、友達を大事にする
2つ、人をむやみに傷つけない
3つ、自分より年下は自分よりも価値があると考える
4つ、人に害をなす時は本当にしても大丈夫かシュミレーションをすること
5つ、恩は返す
6つ、執着せず、中立であること
この5つを主軸に無数のルールを作ってどうにか制御をしていた。しかし、隙だらけな、心があまりにも他人からの言葉を必要としているのを見るとどうしても自分にどろどろにしてしまいたくなる。そして、安定したら興味がなくなるためまた離れる。これの繰り返しだ。
分かってる、こんなことやめた方がいいって。
でも、この行為は何にも変えられない最高の快楽なんだよ。
これ以上"タノシイ"ことなんてないんだ
クズがおくる異世界生活~結果的にいい方向に進んだからいいだろ?~ @nanntekottapannnnakotta
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