第21話 繋がり

【記録編集者による註釈 IV】

根本氏が提示した「皮を着替える怪異」という仮説。そして、被害者家族のルーツが伊豆に集中しているという事実がこれから発覚する。

この二つの要素は、先輩たちの調査に、明確な方向性を与えた。怪異の「核」は、東京ではなく伊豆にある。

次に示すのは、先輩がその仮説を補強するために接触した、民俗学の権威・宗像教授へのインタビュー記録と、その直後に、全く別の周辺取材として行われた、ある人物へのインタビュー記録である。



▼水野のPCメモ:2025.06.28_羅針盤

根本氏の証言は、俺たちの仮説に強力な背骨を与えてくれた。だが、まだだ。まだ、憶測の域を出ない。

だが『皮を着替える怪異』。

根本氏の言葉が、悪夢のように頭から離れない。 もし彼の仮説が正しいとすれば、我々が追っているのは、単なる誘拐犯ではない。何十年……いや、もっと長い間、この土地に巣食い、子供を捕食してきた、正体不明の「何か」ということになる。

そんな馬鹿なことがあるか。 俺の中の理性が、全力でその考えを否定している。


だが、根本氏のインタビュー映像を繰り返し見直している中で、俺は一つのファイルに釘付けになった。それは、これまでの取材で集めた、被害者三家族の家族構成や経歴をまとめた、ごく事務的なデータだ。


橋本家(第一被害者):父方の祖母が、伊豆半島西部の出身。

鈴木家(第二被害者):母方の祖父が、伊豆半島西部の出身。

斎藤家(第三被害者):両親は東京出身だが、母方の曾祖母が、伊豆半島西部の出身。



伊豆。 それも、三家族全員が、同じ港町の周辺にルーツを持っていた。 東京の西側で起きた事件。その根が、遠く離れた伊豆の、寂れた一つの町に繋がっている。これは、偶然で片付けていいものなのか?

根本氏が語った「古い何か」。 その正体は、東京ではなく、伊豆の地に眠っているのかもしれない。

俺は、この仮説を、専門家の見地から検証する必要があると感じた。武蔵野文化大学の宗像教授。彼なら、この奇怪なパズルの、最後のピースを埋めてくれるかもしれない。


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