第25話危険だから入るな?

 シーベルニアールの町の近く。一見町に見えるそれは、何処か不思議な感じを醸し出していた。まあ、一応は吸血鬼の町という狩場ではあるんだが、町というよりも、城塞都市と言った方が良いのかもしれない。そんな雰囲気の中、俺たちは入り口で止められていた。


「だから駄目だと言っている。レベルを上げたいのは解らないでもないが、ここは危険なんだ。はいそうですかと簡単に通して良いものでもないんだよ」


「そんなー! だって、この中に入らないと、ヴァンパイアは居ないんですよ?」


「本当に危険なんだ。俺たちだってここでは生きるか死ぬかの戦いを強いられているんだからな。それが兵役も終わってない奴らを行かせる? そんな事は出来ない。死にに行くようなだけだ」


「それはそっちが弱いからいけないんじゃないの? 私たちは十分に強くなったんですから、ここでも普通に戦えます!」


「……言ってくれるな、小娘が」


「まあまあ抑えて抑えて。危険なのは誰が見てもそうなんだよ。だから俺たちが管理している。簡単に通すわけにはいかないんだよ」


「簡単に通すわけにはいかないなら、どうしたら通してくれるんですか?」


「アーリア、もういいよ。簡単には通してくれないのであれば、強行突破するしかないって事だ。向こう側はそうしろって言っているんだよ」


「なるほどー。そうならそうと言ってくれればいいのにね」


「……簡単に突破させると思うのか?」


「簡単に通りますよ。何も、入り口は1つじゃないんだからさ。アーリア、こっちだ。全力で走れ」


「うん!」


 普通に入り口が閉鎖されていた。だが、閉鎖すると言っても、全部の入り口を塞ぐことは難しい。だから、回り道をする……と見せかけて。


「アーリア、飛ぶぞ。デーモンロードを呼んで、運んでもらう。別に門からちゃんと入る必要はない」


「あ、そっか。上から入れるもんね」


「そう言う事だ。それじゃあ、中に入るぞ」


 強行突破その1。門が駄目なら外壁を超えれば良いじゃない。そんな訳で、中に侵入した。あっさりと中に入ることが出来た。こうすれば、色々と文句を言われることはない。……問題は出る時だな。ちゃんと門を使う方が良いだろう。俺たちはここを普通に歩けるんだって事を証明しなければならないからな。ヴァンパイアカウントと契約するには、ここが一番なんだから。……ヴァンパイアの下位の魔物も居るんだけど、進化させるのが面倒だし、経験値的にはここが国内では2番目に美味しいんだ。1番はドラゴンだな。まあ、強くなれば、この位は簡単に出来るって事なんだよ。


「それじゃあ、デーモンロードとセラフィムを組ませてヴァンパイアカウントを狩って貰おう。セラフィムだけだと魔法で攻撃された時に困るからな。デーモンロードも付けておけば万全だ。そんな訳で、頑張ってきてくれよな」


「頑張ってねー」


「さあ、ヴァンパイアカウントを探すぞ。基本的には契約で止めを差す感じだ。5発殴れば、契約をしていいぞ。6発目からは必要ない。HPを半分まで削れば良いんだからな。因みに、9発叩き込めば死ぬからな。攻撃は受けても構わない。どうせHPを削るところまではいかないからな。それと、楽しいからってやり過ぎない事。ヴァンパイアカウントとの戦闘は楽しいからな。スライムなんかとは違って、楽しむことが出来る。だけど、やり過ぎは注意だ。楽しみ過ぎても問題があるからな。出来る限り効率よくだ。解ったか?」


「解ってるよ。楽しんでも良いのは良いんでしょ?」


「楽しむなとは言わないし、言えないからな。俺も目一杯楽しむつもりだし。ただ、目的を忘れては駄目だぞと言う事だ。あくまでも契約をしに来たんだから。戦闘を楽しむのは、ついでだからな。楽しいのは解るし、楽しみたいのも解る。今までが今までだったからな。中々楽しむことは出来なかったとは思う。だから、ここで一気に楽しむことだ。ただ、目的を忘れるんじゃないって事だ」


「解ってるって。それじゃあ、やるぞー!」


 そんな訳で、ヴァンパイアカウント狩りが始まった。拳で戦うんだけど、相手は霧化して回避をしてくる。ただ、そんな事を許すAGIはしていない。攻撃が当たるよりも早くに霧化なんてさせない。確実に攻撃を当てていく。実体化しないと攻撃が出来ないから、実体化した場所を攻撃すれば問題ない。魔法攻撃はしてくることもあるんだけど、ヴァンパイアカウントは近接戦闘が得意な魔物なんだ。遠くから捕捉されても、普通に近づいてきてくれる。まあ、偶に魔法で攻撃されることもあったけど、こっちだってDEXやAGIを育てているからな。回避も容易い。その為のステータスなんだからな。上げられるのであれば、上げておくのが基本中の基本だ。それでも攻撃が外れる時だってあるし、ダメージは無いけど、攻撃を受けることもある。工夫して戦わないといけないんだ。それが楽しいのなんのってな。作業でスライムと契約していたことを思うと、非情に楽しい。


「いいねいいね! 戦闘はこうじゃないとね!」


「だな。やっぱり苦戦する方が楽しいし、まだまだ強くなれる余地はあるんだって教えてくれるからな。これだけのステータスにしておけば、普通に攻撃を受けることもなくなるんだし、思い切って攻撃が出来る。契約は、思った以上に失敗しているが、それも仕方がない。端から成功するなんて思っていないからな。どんどんと契約していくぞ。そして、目指すのは最強なんだからな」


「格闘戦でも最強を目指せるんじゃない? これだけ戦えるのは良い事だよね?」


「まあ、乱戦で強くなるってのは良い事だからな。剣での攻撃が効かないってなってくると、拳の距離まで一気に詰められる。そこからが本当の戦いだって事を意識しないとな。拳で戦うって事は、そう言う事でもあるからな。距離を縮めて、どんどんと懐の中に入っていけばいい。向こうは爪が来るが、拳で弾けばいい。こっちの攻撃力は、そもそもそこまで弱い訳ではないからな。一気に畳み掛けるように戦わないと」


「こんなに楽しいのは久しぶりだもんね。いつもは魔法でちょこちょこやっていたり、スライムでの作業だったりしてたからさ。こうやって思いっきり戦えるのってゴブリン以来じゃないのかな?」


「そうなのかな? そうなのかも。まあ、久々に暴れられるんだから、暴れれば良いさ。楽しんでいこうぜ。楽しんだものが勝つんだからな」


「解っているって。必死になって戦うのも良いけど、こうやって思いっきり戦えるのっていいよね。私、兵役が終わったらここに住んでもいいかもしれない。ベル君も一緒だよ? 一緒にここに住もうよ。楽しいんだよ?」


「そうだな。それもいいかもしれないな。ここだと、辺境にも近いから、冒険するならそっちへ行ってもいいし、気軽に遊ぶのであれば、ここで遊んでもいいしな」


「そうしようね。ここでベル君と一緒に暮らすんだよ。ここなら、簡単に遊びに来れるし、いい場所だと思うんだよね。子供が何処でレベルを上げるのかが心配になるけど、それはそれでいいんじゃないかな。私たちと同じように強くなるんじゃないかな?」


「さあな? 子供の人生は子供のものだからな。俺たちが関与するのは間違っているとは思うぞ。子供だって楽しみたいだろうし」


「そっか。そうだよね」


 まあ、気軽に楽しむためには、召喚士に選ばれないといけないんだろうけどな。ファイターかマジシャンでもレベルを上げれば何とかなるとは思うけど、上限が解らないからな。レベルを上げれば、どんどんと強くなるのは知ってるけど。

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