第39話 横取り
カインの飛ばした空間の球がネメシスの眼前に迫る。
ネメシス:「見てたぜ。これに当たると肉が抉られんだろ」
軽々と避けようとした瞬間に、急に空間が膨張し表面積を増やす。
ネメシス:「なっ、なに!?」
急な形態変化に虚を衝かれるが間一髪で避ける。
カイン:「やっぱり避けられるよな、分かってたよ」
膨張した空間の球の下から急にアルバが姿を現す。
ネメシス:「あの空間はこいつを近づかせるための布石かっ!」
体勢を崩したネメシスは、アルバの光を纏った拳を防ぎきれない。
アルバ:「どりゃぁぁぁ!!!」
ネメシス:「チッ」
ネメシスは空中で受け身をとるも、数メートルほど飛ばされる。
カイン:「お前の能力は血が出ないと意味が無い。その割にお前は体を鍛えてそうだったから、大抵の打撃じゃ吐血しないだろうと思ってな」
ネメシス:「姑息なマネしやがって」
カイン:「俺は全ての"目覚め"をある程度なら把握してるからな」
レイス:「カインさんの方が黎明調査の資料より有益じゃね」
ネメシスは立ち上がって上着を脱ぎ捨てる。
すると、ネメシスの体に刻まれた大量の傷跡が
ネメシス:「この傷はお前らの隊長に付けられてな。今日はゼラノスがいないみてぇだから、お前らで落とし前つけさせてもらうぞ」
ネメシスは傷跡を自ら抉って流血させる。
アルバ:「あの野郎なんつー惨いやり方だよ」
カイン:「これはまずいな...」
ネメシスは体から流れる血を
カイン:「アルバ!戻ってこい!!」
カインの呼び声にアルバは無心に足に光を纏ってカインの方へ走る。
ネメシス:「參ノ業 空隠す血雨」
空に飛ばした血が弾丸のように一斉に降り注ぐ。
カインは頭上に平面上の空間を作り攻撃を凌ごうとするが、アルバが間に合わない。
ドドドドドドッ
降り注ぐ血は容赦なく全てを貫く。
アルバ:「な、何してんだよ!」
先程までカインの頭上にあったはずの空間の屋根は今はアルバの頭上にある。
そしてカインは血に打たれ、身体中穴だらけだ。
血の雨が降り止み、アルバはカインに駆け寄る。
アルバ:「おい、しっかりしろ!ダサいことすんなって言ったよな!」
アルバの目に涙が浮かぶ。
カイン:「いや、ほんとに死ぬかと思ったなハハハッ」
カインはアルバの前にいるはずだが、違う場所からカインの声が聞こえる。
レイス:「あいつの隠力のせいで麻痺してたからギリギリでしたけど危なかった」
アルバ:「へ?」
するとアルバの目の前にいたカインが影になって消える。
訳の分からなそうなアルバにレイスは説明する。
レイス:「お前に次元の屋根を渡してカインさんは死ぬ気だったから俺の"弐ノ業 日常に潜む影人"で、カインさんの影と本体を入れ替えたんだよ」
カイン:「レイス君のおかげで影に隠れて無事助かったよ」
零れそうだった涙を押し込みアルバは怒る。
アルバ:「マジで死んだかと思った!ふざけんな!そんな業俺は聞いてねーぞ!」
ひとしきりキレると
アルバ:「でもまた助けられた。ありがとう」
カインは笑い、アルバの頭をわしゃわしゃ撫でる。
カイン:「俺がいるうちはお前を絶対死なせねーよ」
ネメシス:「なかなかやるじゃないか」
ネメシスは機嫌良さそうに笑みを浮かべている。
ネメシス:「特に片腕のお前!なかなか良い!」
カイン:「あいつの隠力がさっきからずっと増え続けている。このままじゃ本当に手が付けられなくなる。その前に終わらせるぞ」
アルバとレイスはカインに続いて構える。
そして、レイスが影に潜む。
ネメシス:「それならもう知っていると言っただろ」
アルバ:「これならどうだ?」
アルバは両手に光を集めて、その光を一気に放出する。
光が強ければ影も強くなる。
光が眩しく、目を開けることが出来ないネメシスは大きく伸びた影を目で捉えられない。
ネメシス:「いかにも力無き奴らの戦術だな!」
ネメシスの真横から出現したレイスは影で作った刀で首を狙う。
カイン:(上手くいきすぎている...)
カインはネメシスが降らせた血の雨が地面に溜まっているのをじっと見つめる。
プクプク
血が動き始める。
カイン:「2人とも下だ!奴の降らせた血に気をつけろ!」
ネメシス:「貮ノ業 血染めの鬼槍」
カインの忠告通り、2人の下に溜まっていた血が槍のように下から突き上げてくる。
アルバは避けられたが、手の光が途切れる。その瞬間、ネメシスは目を開き、レイスが刀で血の槍を凌いるところに跳んで回し蹴りを入れる。
レイス:「ぐはっ!」
レイスはアルバの方に飛ばされ、2人は激しく衝突する。
お互いに気を取られている間にネメシスは傷から触手を作り出して、2人を突き刺そうとする。
ジジジジ
2人の前に作り出された空間にネメシスの触手は削られる。
カイン:「余所見は命取りだぞ!やばい状況だけど、俺は奴の動きを観察しながら援護するから2人は突っ込め!」
シュンッ
???:「余所見が命取り。確かにそうだな」
最初からそこに居たかのようにカインの横に包帯で顔全体を巻き付けた男が現れる。
命の危険を感じ取り、カインの時間の流れが急に遅くなった気がする。全てがスローに見える。
アルバが叫んでいるのが見える。
レイスが影を伝ってこっちに向かって来ているのが分かる。
そっと風を吹き、砂が散る。
カインの脇腹に穴が空く。
そして、カインは血を吐いてその場に倒れ込んだ。
ネメシス:「てめぇ何者だ?今いい所だったのに邪魔しやがって...死ぬ覚悟は出来てんだろうな?」
???:「悪いがこの男にしか用が無い」
謎の男はカインを肩にかつぎ上げると男の周りに砂が舞い始める。
アルバ:「待て!まだ兄ちゃんと話が終わってねぇんだ!」
カイン:「へへっ、兄ちゃんか...ようやく呼んでくれたな...」
カインは力なく笑う。
砂が包帯男とカインを包む。
アルバ:「待ちやがれぇ!!!」
カイン:「必ず生きて戻る。お前らは目の前の敵に集中しろ...」
サァーー
砂が風に飛ばされると、そこに2人の姿は無かった。
ネメシス:「ふざけんなぁ!!!横取りするとかありえねぇだろーー!!!」
ネメシスの怒りの咆哮と共に血を大量放出する。
レイス:「アルバ、カインさんの言う通りだ。今はこいつに集中する方が先だ。勝てるかどうかは置いといて...」
レイスの額からは冷や汗が吹き出る。
アルバ:「くそっ。また家族が目の前で...」
レイス:「カインさんは必ず戻ると言ったろ。そんな顔してると笑われんぞ」
ドゴーン
残っていた黒仮面達が緋縅支部に砲撃を始める。
アルバ:「このままじゃ俺たちの支部が...」
バンッ
支部の扉が物凄い勢いで開く。
すると、中からは小太りでメガネをかけた男が機嫌悪そうに出てきた。
???:「いい加減にしてくれ!集中出来ないだろ!」
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