第21話 五重夜
ビュンッビュンッ
あまりにも早い閃光に敵は為す術もなくバタバタと倒れていく。
ゼラノス:「全員弱いな。道中で灯守を殺った能力者も気付かずに倒してたりして」
スピードを落とすことなくミレネが収容されている部屋を探している途中、大きな隠力を感知する。
ゼラノス:「奥の部屋か」
バァン
勢いよく隠力を放つ部屋の扉を蹴り破る。
すると部屋の中では複数人の黒仮面達が必死に何かを探している最中だった。
そして、部屋の奥には1人だけ仮面をつけていない男がいる。その男は立派なほど髪の毛がツンツン逆立っており、そして何故かイライラしている。
???:「なんだ?バチバチうるせぇな、気が散るだろうが!失せろ!」
ゼラノス:「一応ここ俺らの城なんだけど。まさか不法侵入者に出てくように言われるなんてな」
ゼラノスがさっさと終わらせようとゆっくり隠力を解放する。
その陰力に気付いたツンツン男はイライラが止まって機嫌が戻る。
???:「ほぉ、結構やりそうだな」
そして対抗するようにツンツン男も隠力を解放する。
???:「お前名前は?」
ゼラノス:「ゼラノス・ラザップだ」
ネメシス:「イカした名だな。俺は
ゼラノス:「知らない肩書き披露してるところ悪いけど、帰って寝たいからさっさと終わらせるわ」
ネメシス:「かなりの自信家と見た。退屈させてくれるなよ」
ゴゴゴゴゴゴ
2人は向かい合ってお互いの隠力をぶつける。
それを見ていた黒仮面達は命の危機を感じ、急いで部屋から出ていく。
最初にしかけたのはゼラノスだった。
ビリリリッ
目に見えぬ速さでネメシスの背後をとり、雷をまとった手刀を縦に振りかぶり切り裂く。
ザクッ
血しぶきが飛び散る。致命的な一撃がネメシスを襲う。だが、なんとかネメシスは体を逸らし即死は回避する。
ゼラノス:「よく避けれたな。これ避けたやつ片手で数えれるくらいしかいないのに」
ネメシス:「想像以上だ!ハハハハッ今日は運がいい!"目覚め"持ちを2人も殺せるんだからな!」
ゼラノス:「へぇ。じゃあお前が灯守の1人を殺ってんのか」
ネメシス:「なんだ?お友達だったか?ならあの世で再開すればいい」
ネメシスは背中の傷から流れる大量の血をまるで自分の手足かのように動かしだす。
そして、みるみるネメシスの血は形を成していき、まるで蜘蛛の触手のようなものが4本背中から生成される。
ゼラノス:「気色悪ぃな。そんなもん見たら寝つき悪くなるだろうが」
ネメシス:「安心しろ。次寝る時は一生起きることの無い眠りだ。その眠りに睡眠の質なんて関係ないだろ」
もう一度ゼラノスは一瞬で背後に回りこみ、触手の付け根を狙って手刀で貫こうとする。
バッ
先程は避けるのに精一杯だった攻撃を見ることも無く触手を使い止めてしまう。
そのまま触手はゼラノスの腕に巻き付こうとしてきたが、それを察知して後ろに間合いをとる。
ゼラノス「ちっ、お前どういう原理だ」
ネメシス:「俺の"目覚め"を使っただけだ。俺は血を自由自在に操って、血が流れれば流れるほど強さもそれに比例して上がんだよ」
ゼラノス:「面倒臭いやつだな。最初の一撃で決めとかなきゃいけなかったか」
ネメシス:「俺の
ゼラノス:「さっきから弁当ギブスだかペントハウスだか知らねぇけど、それがお前らNOXの幹部集団の名称か」
ネメシス:「ペントニクスだ。お前の言う通り、NOXで特に武力に長けている5人がそれぞれ"復讐" "死" "苦痛" "悲嘆" "不和"の意味を授かって
ゼラノス:「今厳命護衛隊が拘束してるお前らの仲間も
ネメシス:「ん?あぁミレネのことか。あいつは違ぇよ。あいつは下の下、雑用担当のクソ雑魚ちゃんだ」
ゼラノス:「その感じだとそいつを助けに来た感じじゃなさそうだな」
ネメシス:「まぁな。俺らの目的はある物を探すことと、口封じのためミレネを殺すこと。この2個だな」
ゼラノス:「お前口が軽いとかよく言われるだろ」
ネメシス:「今から死ぬやつに何を話しても一緒だろ」
ネメシスは背中の触手を4本同時にゼラノスに勢いよく伸ばす。
シュッ
3本は避けれたが、1本は頬に擦れて微かに血が流れる。
ゼラノス: (さっきよりも速くなってやがる!)
ネメシス:「驚くことは無い。血が流れれば流れるほど俺の力は増すと言っただろ。今話してた間にも血は流れていたからな。長引けば長引くほどお前に勝ち目は無くなる」
ゼラノス:「長引けばお前だって出血多量で死ぬだろ」
ネメシス:「俺は血を冠する"目覚め"だぞ?自分で血の生成くらいできるに決まってるだろ」
ゼラノスは久しぶりのハードワークを覚悟する。
ゼラノス:「はぁ、もっと楽な仕事選べばよかった...」
ボソッと愚痴を吐いてからゼラノスは体中に雷を走らせる。
ゼラノス:「壹ノ業 雷神の自棄」
ゼラノスから四方八方に高威力の雷がはじける。
ネメシス:「ハハハハッ!こいつこの建物の事など考えずに暴挙に出やがった!!!」
血の盾を作って防御の構えをとるが、ネメシスの体をゼラノスの雷が容赦なく焦がしていく。
ネメシスの体中から血が飛び散る。
ネメシス:「チッ、一気に血が出すぎてやがる」
自身で血を生成出来るとは言ったものの、ゼラノスの攻撃を防ぎつつ超速で血を生成するにはネメシスの負担がかなり大きかった。
ネメシス:「壹ノ業 呼応する血流」
するとゼラノスの体を巡る血の流れがピタリと止まる。
うぐっ!?
命の危機を感じたゼラノスは瞬時に大量の隠力を放出する。
無事ネメシスの業から開放されるが、一瞬で多くの隠力を使ってしまった。
ネメシス:「この業は俺が傷つけた部位に予め俺の隠力を注ぎ込んで相手の血流を止める業だ。俺の注ぎ込んだ隠力よりも多くの隠力を放出すれば簡単に解除できる」
ゼラノス:「ハァハァ、どうやらそうみたいだな...」
ネメシス:「普通のやつは何も出来ず死んでいく。けどな、お前みたいにセンスのあるやつは隠力を解放させて抜け出す。そして、お前みたいにテンパって大量の隠力を使ってヘタる」
ゼラノス:「その抜け出し方を知っていれば最低限の隠力消費だけで済むが、知らなければ一気に追い詰められる。初見殺しすぎんだろ...」
ネメシス:「"呼応する血流"を抜け出す奴はそうそういない。誇ってもいいぞ。そうだな、記念にいい事教えてやる。今日襲撃に参加してる能力者は俺を含め3人。全員が
ゼラノス:「おいおいまじかよ。このレベルがあと2人か...今日は残業だな」
ネメシス:「まだ勝つ気でいるのか。おつむの可哀想なやつだな」
ネメシスの背中から新しく2本触手が生えてくる。
ネメシス:「俺も鬼じゃない。お前に敬意を表して苦しまないよう殺してやろう」
合計6本の触手が今までよりも速くゼラノス目掛け伸びる。
血の触手は1cm進む事に加速していく。
ゼラノスのスピードを持ってしても避けることなどほぼ不可能。
誰が見ても絶体絶命の状況だ。
だが何故かゼラノスは慌てる様子を微塵も見せない。
ゼラノス:「本気出すの嫌いなんだけどなぁ...
めんどくせぇ...」
シュゥゥゥ
ゼラノスの口から白い息が漏れ出る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます