第20話 NOX

テレポーターで緋縅隊の6人が本部の司令室に到着する。


本部隊員:「よく来てくださいました!!!みんな緋縅の皆さんが来てくれたぞー!!反撃の準備だ!!」


モニター越しに話していた髪の毛ボサボサの隊員が、今にも泣き出しそうなのを堪えて司令室にいた全員を鼓舞する。


ゼラノス:「ったく本部の隊員ともあろうやつらが情けねぇ。お前ら、本部は緋縅支部の倍以上デカい。俺は灯守をやった能力者を探す。お前らは適当に他の雑魚を蹴散らせ」


ゼラノスが司令室を出ようとすると、先程までモニター越しに話していた隊員が呼び止める。


本部隊員:「1つ言い忘れていました!今回襲撃しているやつらは黒い仮面をつけています。」


「「「「!!!!!」」」」


ゼラノスとリーフを除いた緋縅の一同は目を開き驚く。


レイス:「今まで国家から身を潜めてた奴らがなんで急に襲撃を?」



リーフ:「このタイミングの襲撃、概ねそうだと思ったよ。きっと今回捕らえたミレネの救出か暗殺だろうね」


レイスの疑問にリーフは淡々と答える。


ゼラノス:「今まで隠してきた情報が俺ら側に渡るのを怖がったんだろうな。リーフの言う通り、口止めのために殺しに来たか、それかミレネってやつが"目覚め"持ちだから大きな戦力を失わないよう助けに来たか...」


ゼラノスは自分の見解を話し、改めて部屋を出ようとする。


ゼラノス:「敵がNOXで確定した以上、ミレネの部屋に行くのが1番強いやつに遭遇する確率が高いってことだな」


そう言うとゼラノスは体に電気を走らせ、一瞬でその場から消える。


リーフ:「僕も移動しながら敵を片付けてくる。バブルは負傷者の治療。ヴォイド達は司令室を守れ」


バブル:「了解!」


ヴォイド:「分かりましたです!」


アルバ:「うっす!」


レイス:「はい!」


リーフはそれぞれの返事から頼もしさを感じ取り、その場を後にする。


バゴォォォン

ズドーーーーン

ババババババッ


2人が飛び出して間もないが、部屋の外から激しい爆音が本部内に鳴り響く。


その音を聞き司令室にいる本部の隊員たちは再び怯え始める。

それを見たレイスが疑問に思う。


レイス:「なんでお前らそんなにビビってるんだ?戦闘経験が無いわけでもあるまいし」


本部隊員:「いや、無いです...」


レイス:「ほら、無いじゃないか。だから、そんなビクビクせずに...え?無い????」


レイスは予想外の返答に固まった顔をピクピクさせながら呆気にとられる。


レイス:「じゃあ今までどうやって任務とかやってきたんだ?」


本部隊員:「僕達は隊員と言っても戦闘よりも事務をメインに行っているんです」


面白そうな話に反応してアルバも寄ってくる。


アルバ:「この部屋の隊員だけがそうなんすか??」


本部隊員:「いえ、本部の8割は事務がメインです...」


アルバ:「えっ、じゃあなんで今みたいな襲撃が過去に無かったんすよね?」


本部隊員:「警備システムで許可の無い者はプロテクターが貼られて侵入できないようになってました。無理やり侵入しようとしても、プロテクターに高電圧の電流が流れ、それに大量のレーザーが起動して迎撃体制に入るので...」


アルバ:「そういやモニターで警備システムが発動しなかったって言ってたっすよね?」


本部隊員:「ええ。ただ電源が切れていたのではなく、電源システムを壊されていました」


レイスが顎に手をあてて深く考えこむ。


レイス:「今回の襲撃はあまりにも出来すぎてないか?醒帝の不在、警備システムの破壊、灯守の2人が外出」


本部隊員「それは確かにそうですが。でも、それじゃあ我々に裏切り者がいるとおっしゃりたいんですか?」


レイス:「それ以外ありえないだろうな。醒帝の会議も内密に行われていたんだろ。やつらが余程のマヌケじゃない限り、醒帝のいると分かっていながら強襲するとは思えない」


"本部内に裏切り者がいる"

否定する方が難しい現状に司令室内の隊員たちはざわつき始める。


バブル:「あ、あんたらねぇ。仮に裏切り者がいるならこの部屋の中にいる可能性だってあるんでしょ。怖いこと言わないでよね」


バブルが怖がりながら負傷者を治療する。


ヴォイド:「レイス君の考えが1番筋が通るねです。おかしな点が多すぎるです。あっ、それと」


ヴォイドの目の前に1つの札がプカプカ浮いている。


ヴォイド:「今この部屋目掛けて10人くらい向かってきてるよです。あと1分もすれば入ってくるです」


敵襲と分かって、事務メインの隊員たちは部屋の隅に集まり震えている。


アルバ:「ヴォイド先輩、なんでそんなの分かるんすか?」


レイスも同じことを聞こうとしたがアルバに先を越される。


ヴォイド:「僕の"目覚め"は呪符シギルムって言って、札を使って色んなことが出来るんだです。今回は半径200メートル内にいる人の把握してるよです」


アルバとレイスは感心しながら敵襲に備え、"目覚め"を発動させようと構える。


ヴォイド:「君たちはまだ力を残してていいよです。さっき幾つかのポイントに呪符を飛ばしたんだけど、もうすぐ敵がそこを通るから...」


ドゴォォォォォン


司令室のすぐ近くで爆音が轟く。


ヴォイド:「後はそのポイントを敵が通るタイミングで呪符を爆発させるだけです。呪符は全てこの部屋から半径200メートル以内に設置したから、敵か味方か把握しつつ起爆させられるんだです」


レイス:「広範囲の人間の位置を把握に、トラップまで出来るなんて...」


レイスはヴォイドをただの変人だと思っていたが能力の汎用性を知り、人は見かけに寄らないものだと学ぶ。


バブル:「やるじゃんヴォイド!さっすがー!!」


バブルに褒められて、満更でも無さそうにブカブカの袖をパタパタさせて恥ずかしがっている。


ビクッ


照れていたヴォイドがパタパタしていた手を止めた。


ヴォイド:「隊長が巨大な隠力を放つ敵と遭遇したです」


ヴォイドのポケットから1枚呪符が浮遊し、ゼラノスと敵の様子を司令室の空間に映し出す。


レイス:「おいおい、この先輩こんなことも出来んのかよ...」


レイスは既にヴォイドの能力に惚れ惚れしている。


ヴォイド: 「少しずつ遠くに呪符を飛ばし続けてたんだけど、途中で隊長が近くを通ったから尾行させてたんだ」


バブル:「隊長なら大丈夫でしょ。あの人の強さは無茶苦茶だもん」


バブルはバラエティ番組を見る時と同じくらい気が抜けている。心配する必要など無いほどゼラノスの強さは異常なのだろう。

アルバがその場で胡座を組み、じっとゼラノスの動きに注視する。


アルバ:「この前はちゃんと見れなかったからな、今度こそ隊長の強さ学ばねぇと!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る