第19話 本部襲撃
応援部隊の車に乗せてもらって帰ってきた3人。日は落ちかけ、辺りはすっかり夕暮れだ。
アルバとレイスは初任務の疲れが今に出てき、自分の部屋に駆け込んで数秒もせずに爆睡する。
一方でライナスは今週は晩御飯当番のため、泣く泣く全員分の晩飯の調理にかかる。
ライナス:「今日ぐらい休ませてくれーー」
________3日後の朝________
副隊長リーフは会議室に全員を招集する。
リーフ:「今回本部から重大な報告があった」
ゼラノス:「えー、仕事増えるんじゃないだろうな」
ゼラノスが文句を垂れる。
ゼラノス:「そもそも本部からの報告を隊員に説明するのもお前の仕事だろうがぁ!」
今日もいつも通りゼラノスの怠慢にキレ散らかしている。
コホン
リーフ:「と、ともかくだ。先日ライナス、アルバ、レイスが担当した任務で捕縛したミレネという男だが、NOX《ノックス》という組織に属している事が分かった」
アルバは3日前のことを思い出す。
アルバ: (そういや見張りの奴が最後にNOXとか言ってたような)
リーフ:「また、このNOXという組織は人をオーバーに変える術を持っていることも明らかになっている」
ヴォイド:「えっ?人をオーバーにですかです?」
バブル:「そんな無茶苦茶なことできんの?」
その事実を知らなかったヴォイドとバブルは驚きを隠せない。
ライナス:「昨日から気になってたんだけど、NOXのやつらはなんでゴロツキ共だけオーバーに変えて、他の町民は変化させなかったんだろうな」
ライナスの疑問にレイスも頷く。
アルバ:「そんな要らなかったんじゃないですか?」
能天気なアルバは適当に答えるが、それに対してライナスはミレネの言っていたことを思い出す。
ライナス:「いや、あのおっさんはオーバーを出す時に手持ちが少ないと言ってた」
静かに聞いていたアテナが口を開く。
アテナ:「今聞いた話だけでの想像になるけど、なにか制約とか条件があるんじゃないか?人間をオーバーに変えるなんて突拍子もないことをそう簡単に出来るとも思えない」
的を得たチンチラの言葉に一同納得する。
リーフ:「本部もまだその方法をミレネという男から聞き出せてる訳ではないらしい。現状分かっているのは、
〔NOXという謎の組織の存在〕
〔人工的にオーバーを作り出せること〕
〔そのオーバーに命令できること〕
〔非能力者でも危険な武器を持っていること〕
そして、
〔NOXはこの世界をあの方を王座に君臨させ、自分たちの都合のいい世界に変えようとしていること〕」
アルバ:「最後のは俺らも知らない情報っすね」
任務についていた3人も初めて聞く内容だった。
リーフ:「ミレネという男は情報は話さないが、ずっと『あの方が世界を変えてくださる』とだけ言ってるそうだ」
バブル:「げっ、なんか不気味なやつね」
バブルは見るからに嫌そうな顔をしている。
リーフ:「とまぁ、本部からの報告は...」
ジリリリリリッ!!!
会議室のアラームが急に鳴り響く。
ゼラノス:「緊急アラームか珍しいな、こんな朝から一体なんだ?」
ゼラノスは近くにあったリモコンを手に取り、大型モニターの電源をつける。
ピッ
モニターには慌てふためいた髪の毛がボサボサの隊員が映っている。
本部隊員:「こちら厳命護衛隊本部です。よく聞いてください!現在、厳命護衛隊本部が襲撃にあっています!敵の数は100人を超えると思われます。そのうち3人は"目覚め"持ちであることが確認されています。至急応援願います!」
この国の最高戦力である厳命護衛隊。その総本山を狙うものなど今までいるはずもなく、その報告を聞いていた全員が自分の耳を疑った。
リーフ:「本部には
リーフが落ち着いて聞き返す。
アルバは醒帝という単語を聞くとハッとする。
醒帝とはこの国ショウヨウで最強の能力者に与えられる地位であり、醒帝は厳命護衛隊の全ての指揮権を握っている。国民の希望の光であり、国民を護り導く存在である。
そして、アルバの夢を叶えるためには必ず通るべき立場である。
本部隊員:「それが今日は醒帝が他国との内密な会議に出席されておりまして本部にはいらっしゃらないんです!」
ゼラノス:「それでも本部は最新鋭の警備システムや醒帝直属の
ゼラノスの指摘に本部の隊員は顔が曇る。
本部隊員:「警備システムは発動せず、易々と侵入を許しました。そして、灯守のうち2人はそれぞれ席を外しており...」
ライナス:「外しており...の後は?残りの3人はどうした?」
本部隊員:「...残りの3人は襲撃発覚時には既に自室で殺害されていました...」
灯守を知らないアルバとレイス以外は驚愕を隠せなかった。
ライナスは机を叩いて立ち上がり、ヴォイドは固まり、バブルは開いた口が塞がらず、リーフは頭を抱え、アテナは溜息をつき、ゼラノスは舌打ちをした。
ライナス:「殺害されてましたって...灯守の実力は副隊長クラス以上だろ!それに警備システムが作動しなかったってなんだ!」
ライナスの叱責に本部の隊員は言い返す言葉もない。
ゼラノス:「過ぎたことをウダウダ言っても仕方ねぇだろ。それに灯守より実力が上ってことは結構な実力者だ。ヴォイド、バブル、まだ今日任務を受けてねぇだろ。お前らはついてこい。敵の"目覚め"持ちは俺がやるから、残りの非能力者の対処に当たれ」
リーフ:「ゼラ、俺も行ける」
ゼラノス:「けどお前は今日依頼受けてただろ」
リーフ:「書類整理が大量にあったから、依頼はこの会議の前に終わらせてきた」
ゼラノス:「流石だな、じゃあリーフは敵の"目覚め"持ちとの戦闘も視野に入れててくれ。よし、じゃあテレポーターを作動してくれ」
それを聞くと本部の隊員は緋縅隊の基地と本部をテレポートできる機械を作動させる。
ゼラノスが3人を連れて行こうとすると、アルバとレイスが真剣な面持ちでゼラノスに懇願する。
ア.レ:「「俺らも行かせてください」」
ゼラノス:「分かった、ついてこい」
一瞬の迷いもなくゼラノスは2人の同行を許可する。
リーフ:「おい、ゼラ!何考えてんだ!新人には危険すぎる!」
リーフの言う通り、まだ任務を1度しかこなしてない新人を連れていくというのはあまりに無謀な判断だ。
ゼラノス:「その代わり、お前らが相手するのは非能力者のみだ。あと、ヴォイドから離れるな。ヴォイドこいつらを頼むわ」
シュンッ
ヴォイド:「えっ、なんでですか?です」
ヴォイドが駄々をこねる前にゼラノスはテレポーターで本部まで飛んでいた。
リーフも苦笑いしながら
リーフ:「もしやばかったら俺もそっちに合流するから、まぁ頑張ってみて」
バブルはただ笑いながら何も励ましの言葉無くテレポートする。
ヴォイド:「2人ともミーから絶対離れないでよです」
アルバとレイスは同時に同じことを思った。
ア.レ: (この人の一人称ミーなんだ...)
ヴォイド:「君たちの実力は認めてるけど勝手に行動したり」
シュンッ
ヴォイドが話しながらテレポーターに入り、言葉が途切れる。
レイス:「やるぞアルバ」
アルバ:「おう行くか」
2人は気合を入れテレポーターへと入る。
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