第11話 閉鎖的な村
クロレドに着いた3人。だが、村人の姿が見当たらない。
アルバ:「村人ってめっちゃ少ないのか?」
アルバのアホみたいな疑問にレイスは冷静に答える。
レイス:「いや、小さな村だが村人は200人ほどいるはずだ。最南端の村だけど、他国との境界線付近は地形が険しくて侵略行為も特に無いはず」
ライナスが村の建物に近寄る。
ライナス:「オーバーは生きてるものしか襲わねぇがよぉ...それにしては建物が壊れて無さすぎる。襲われた村にしてはなんとも綺麗な見た目してやがる」
不気味なほど静かな村に3人は身の毛がよだつ。
アルバ:「もしかしてオーバーから逃げてこの村去っていったとかじゃないんすか??」
アルバは帰りたそうに自分の考えを述べるが、レイスに否定される。
レイス:「いやそれは無いな。クロレドの人間がなぜ外とコミュニケーションを取りたがらないのか。それは自分たちが1番だと思っているから。他の場所に逃げ込むのは自分たちが弱いと認める行為と同じだから、それは死んでも拒むだろうな。それに頑固なやつが多かったから、この地を捨てる決断を下すのも考え難い」
ガシャンっ
すると数軒奥の家から物音が聞こえる。
3人はお互いの顔を見るやいなや、急いでその家に向かって走り出す。
ガララララ
アルバ:「大丈夫ですか!?」
アルバが勢いよく扉を開け中を確認する。
すると小さな人影が家の奥で動くのが見えた。
近づくと8歳くらいの小さな女の子がただ1人震えていた。
少女:「来ないでっ!嫌っ!」
その少女は酷く怯えている様子だ。
アルバ:「大丈夫だ、俺たちは厳命護衛隊。君を助けに来た」
少女:「げんめいごえいたい?」
アルバ:「厳命護衛隊を知らないのか?この国を守る正義の味方だよ」
少女はアルバの澄み切った目を見てなのか、それとも正義の味方という分かりやすい言葉を聞いてなのか、安堵し極度の緊張がほどけて泣き出す。
レイス:「あーあ、アルバが女の子泣かせた」
レイスの冷やかしにアルバは自分のせいじゃないと必死に弁明する。一旦、近くにあった切り株に3人は腰をかける。少女は座ろうとはせずアルバの横で溢れる涙をずっと拭っている。
それから10分程経って少女の気持ちも落ち着く。
ライナス:「嬢ちゃん名前は?」
ライナスが優しく話しかけるが、アルバの後ろに隠れてライナスにだけ警戒心を抱く。
ライナス:「俺も正義の味方だぜ、バカ強いヒーローだぜ。そんな怖がらなくてもいいのに」
柄にもなくしょんぼりする。
アルバ:「ハハハッきっとチンピラだってバレたんじゃないですか?」
ライナス:「てめぇ、おれのどこがっ!」
笑いながら言うアルバに言い返そうと立ち上がるが、また少女に泣かれたら困るため、ギリギリのところで思い留まってもう一度座る。
今度はアルバが少女に同じ質問をする。
アルバ:「君の名前は?」
リサ:「リサ、リサ・アトラス...」
レイスは少女の自己紹介が終わるとすぐにリサに問いかける。
レイス:「ヒナ・イートレアという女性を知らないか?16歳で目の色は綺麗な桃色の」
リサはコクンと頷き話し始める。
リサ:「ヒナお姉ちゃんは私たちによくお菓子を焼いてくれたよ...」
レイス:「ヒナは、ヒナは今どこにいる?」
リサはまた涙目になりながらゆっくりと話し出す。
リサ:「ヒナお姉ちゃんはあいつらに...真っ黒な仮面を付けたやつらに連れてかれたの...」
黒い仮面の集団という知らない情報が出てきて3人はお互いの顔を見合わせる。
アルバ:「黒い仮面?リサ、俺たちはオーバーっていうドロドロのモンスターを退治するようにって言われて来たんだけど」
リサ:「ドロドロの怪物もいたよ、何日か前から怪物が町に来ることが増えたの。それで昨日、町のみんなを体の中に埋めて連れ帰っていったの」
ライナス: (オーバーが人を攫う?オーバーは目に映る生物を見境なく攻撃するだけの奴らのはず)
ライナスに嫌な予感がよぎる。
ライナス:「嬢ちゃん、俺のことが怖いのは分かるが、聞きたいことがある。昨日そのドロドロの怪物と一緒に黒い仮面の奴らが町を襲ってきたってことか?」
リサはアルバの服をギュッと掴み頷く。
ライナス:「その黒い仮面の奴らはドロドロの怪物に襲われてなかったか?」
リサ:「襲われる訳ないよ、だってあいつらが怪物に命令してたんだもん」
『『『!!!!!』』』
3人は衝撃の事実に目を丸くする。
オーバーを操るなんて前例の無いことだからだ。
ライナス:「こいつはお前らの初任務にしては少しヘヴィかもなぁ、1度隊長に連絡して立て直す必要がある」
レイスはそれを聞くと
レイス:「駄目だ、そんなことしてる間にヒナに何があるか分からない。殺さず連れ帰ったってことはなにか利用するつもりだからだ。まだ死んではないだろうが、あいつは正義感が強くて、要らないことをしかねない。そうなりゃすぐ殺されてもおかしくない。俺は1人でも行かせてもらう。リサ、そいつらはどこに行った?」
ライナス:「可愛い幼なじみが心配なのは分かるが、未知の敵勢力がいるんじゃ話が変わってくる」
レイス:「あんた強いんじゃねぇのかよ」
ライナス:「当たりめぇだ俺はバカ強い!だが、俺はお前らを隊長から任されてんだ。最悪のケースも考える必要が俺にはあるんだよ」
チッ
レイス:「リサ、ヒナ達がどっちに連れてかれたか分かるか?」
リサ:「う、うん」
レイスは一瞬で姿を消しアルバの後ろに隠れていたリサを抱える。
レイス:「ライナス先輩の立場も分かるが、あんたに頼らなくても俺は充分強い。あんたの実力を知らない以上、俺の方があんたより強いかもしれないしな」
そう言い残すとリサと共に影の中に姿を消した。
ライナス:「あんにゃろぉ、クソっ、アルバ準備しろ追いかけるぞ」
アルバ:「えっ、でもリサを連れてかれたし、レイスがどこに行ったかなんて」
ライナス:「
アルバ:「隠力?」
ライナス:「おまっ、隠力も知らないのか?時間が無い、移動しながら簡単に説明してやる」
そう言うとライナスは走り出した。
ライナス:「早速あいつの短所のチームワークの無さが出たな、ちくしょう」
アルバはライナスの後ろにピッタリついて走る。
ライナス:「あいつの影の能力は影から影へ移動できるだろ、その能力のせいでかなり差をつけられちまった」
レイス:「けどアイツ強いし、もしかしたら全員倒しちゃうかも」
ライナス:「いくらあいつが強くても、せいぜい新人にしては強いってだけだ。それにレイスの強みの冷静さが今は無い。返り討ちにあって終わりだろうよ」
アルバ:「それじゃ、リサは?」
ライナス:「あいつは唯一信頼しているヒナって幼なじみを助けることしか頭にない。リサの無事はあいつの眼中に無いだろうな」
アルバ:「レイス、あいつ、、」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます