第9話 レイスの過去
理解に困る発言を耳がキャッチし、頭が考えるのをやめていた。
"レイスは死んだ"
じゃあ目の前にいるコイツは誰なんだ。
もし死んでないなら、ヤンキー先輩があんな真面目な顔でジョークを言ったのか?
だとしたらジョークの腕前は最悪だ。
アルバ:「し、死んでるって、、じゃあ死んだまま喋ってるってことですか?」
ただただ疑問をぶつける。
ライナス:「てめぇはバカか?死んだ人間が喋るわけねぇだろ。見たら分かるだろ生き返ったんだよ」
アルバは馬鹿にされた理由が分からない。
アルバ:(いや見ても分かるわけないでしょ!死んだ人間は喋らないけど、生き返るのは当たり前みたいな喋り方されても無理だから。理解無理だから)
冗談はさておきとでも言わんばかりにライナスはまた神妙な面持ちに変わる。
ライナス:「レイスはな、5歳の時に家族と一緒に殺された。この村の人間は能力者を恐れたんだ」
アルバ:「まさか、そんな、、、、、、」
"目覚め"を使えることが己の誇りだったアルバには到底信じられない話だった。
アルバ:「けっ、けど!レイスは俺と同じ光の柱が現れた年に産まれた!5歳だったってことは能力者達が現れて5年経ってることになる!その頃"目覚め"持ちは国家が誇る戦士として黄色い歓声を浴び始めた頃じゃないですか!」
残酷な話を信じたくないアルバはなんとか嘘であってほしいと話の穴を探す。
先程まで黙って聞いていたレイスが口を開く。
レイス:「言ったろあの村の話を。他の場所との交流を嫌う。国中のお祭り騒ぎしてる情報もクロレドには入ってこないんだよ...」
強いおろし風が吹く。今日はよく風が立つ。
レイス:「毎日エスカレートする嫌がらせに俺ら家族は耐え続けた。貧しかったからその場所から引っ越すことも出来ずただただ耐え続けたんだ...」
レイスはあの村でのことを思い出し、拳を強く握り苛立ちと恐怖を必死に押さえ込んでいる。
ライナス:「もういい、ここからは俺が話す。よく話してくれたな、あんがとな」
ライナスはレイスの肩に手をおき、レイスの心を落ち着かせる。
ライナス:「レイスが能力者になって5年経ったある夜、その村で英雄を気取ったアホが、家に侵入して寝ている一家全員を刺殺した」
アルバ:「そ、そんな残酷な...」
アルバの胸が締め付けられ、思うように言葉が出てこない。
レイス:「全員が全員レイスの敵だったわけじゃない。こいつの幼なじみだった女の子だけは味方してくれてたらしいが、当時幼かったその子にその凄惨な事件を止める力なんてあるわけ無かったからな...
そこからだ。レイスが人間を嫌い、自分の力を極め自分のことしか信じなくなったのは。隊に入ってからはそれを隠してるつもりだったろうが、隊長は最初から見抜いてた。だから、人を信用する気持ちを持たせるためにあの村の任務を隊長が受諾して、俺らに行かせたんだ」
アルバ:「やっぱり分かりません。人嫌いを治すなら別にあの村じゃなくても...」
実はアルバの問いと同じことをライナスも感じていた。
ライナス:「俺も隊長から詳しいことは聞いてない。だが、隊長はクロレドじゃなきゃレイスの人嫌いは治らないと言ってた。逆に言えば、クロレドに行けばレイスの人嫌いは治るってことだろう。それと何故かアルバも必ず連れてけってな」
あんな偉そうに2人を連れ出し基地から飛び出したのに、結局のところ全てライナスもゼラノスに言われただけだった。
アルバ:「まだ!まだ1番気になることが残ってますよ!どうやってレイスは生き返ったんですか?」
やはり1番の謎は死人が生き返ることだ。仮に能力者のおかげで、そんな凄い"目覚め"があるなら全国的なニュースになってるだろうし、アルバが知らない訳が無い。
ライナス:「これは言っちゃいけないトップシークレットってやつだから、絶対他言禁止だぞ!秘宝の力らしい」
アルバ:「秘宝?」
随分な名前の物がライナスの口から飛び出した。秘宝、それがレイスの生き返りに大きく関係しているという。
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