第5話
「おじさん、ここの蕎麦美味しいね」
「ああ、選んで正解だった」
千鶴と合流し、昼を回っているという事で手打ち蕎麦屋へと俺達は入って行った。
昔ながらの店を
昼時だからか席は七割がたは埋まりかけ繁盛してる様子。
値段も少し高めだが、それでも気にしないほどに蕎麦の香りが鼻腔を通り味わいが舌に絡まる。
食感ももっちりしていて歯ごたえがある。
「おじさん、つゆ貸して」
俺はつゆの入ったカップを千鶴に渡すと、おもむろに麺をつゆにつけすする。
「~~~~~~っ!!」
声に出せないほど顔を強張らせ。
足をバタつかせ、涙目になりながらも麺を飲み込んだ。
「大丈夫か?」
「うん……。けど、やっぱ辛い……。おじさんよくこんなのすすって食べてるね」
俺は蕎麦の食い方何て気にしないから、つゆにワサビを入れて食べていたのだが。
確か、千鶴はそのまま何も入れずに普通に食べてたな。
自分でやると食べれない自信からか俺ので試してみたのか。
「お嬢ちゃん大丈夫?」
店の女性店員、多分店主の奥さんと思わしき人が心配したからか、お茶を差し出してきた。
「うん、平気。ありがとうおばちゃん」
「制服にはつゆ飛んでなくて良かったな」
「そうだね。そういえばおじさん、図書館に居たって事は調べ物はどうなったの?」
「ああ、ちと気になった事があってな」
俺は手帳を千鶴に見せた。
ふーんと云いながら手帳に書いてる文字をまじまじと千鶴は見る。
「この本の著者を知らないか?」
「著者って云うと富加実さんって人?」
「そう」
「うーん、知らないなあ。あたしの神社に来る人も聞いた事ないかも」
「そっか、どうするかな」
困ったな。
俺は腕を組みうーんと唸ると、先ほど千鶴にお茶を出したおばちゃんが突如声をかけてきた。
「富加さんならのこの近所に住んでるわよ」
「え、本当ですか!?」
「ええ、何かの研究がてら毎週日曜にはここに食べに来てくれるのよ」
まさかの情報に俺達は食いついた。
「もしよろしければ、富加さんってどんな方か教えていただけないでしょうか?」
「そうね、聞いた話によればここらの調査研究を長年してるそうよ。大学の講師もしてるそうだし」
「大学? 教授ってことですか?」
「ええ、
この町、いや合併するまえの村と風習に関する事と打ってつけってわけか。
だからあの本も出版したのは納得した。
「情報ありがとうございます」
「いいのよ。こんな……ってあらあら」
癖になったのか、千鶴は俺のワサビ入りツユに蕎麦を入れ口に運ぼうとしていた。
案の定、すすると再び足をバタつかせた。
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