第7話


 結局……ソフィアにとって「安全」と思った道。つまり漁港の端にある森に入る事に決めたソフィアだったのだが……。


 これがとにかく……草が多い! 枝が邪魔をする! とにもかくにも歩きにくい!といった具合で魔物には遭遇していないものの、何とか道なき道を歩いていた。


『教えてもらったところから行きます』

『――そうかい。じゃあ頑張んな』


 リーダーはそう言ってソフィアの頭を少し乱暴に撫でた。


『っと、悪ぃな。ついいつもの癖でやちまった』

『いつもの?』


『ああ、こいつらにやっているみたいな』

『そう……ですか』


 これを聞いた瞬間。ソフィアは思わず「羨ましいな」と思ってしまった。


 なぜなら教会で自分より年下の子たちを相手にする事はあったが、自分よりも年上の子はいなかった事もあり、今までこの様な感じで接された事がなかったのである。


 それこそ聖女になってからはむしろ教会にいた頃よりも距離を取られてしまい、もはや初対面も含めてどう人と話していたのか忘れてしまった。


『――っと。じゃあな~!!』

『嬢ちゃんも頑張れよ~!』


 リーダーを含めた船員たちの激励が思ったよりも大きく、ソフィアはちょっとだけ恥ずかしい気持ちになりつつ小さく手を振ってそれを見送った。


 ただ、この様に別れを惜しんでいる人もそれなりにいたが、その場合はほとんどの人が泣き別れの様だったのでむしろ笑顔の別れという意味では目立ってはいたのかも知れない。


 ちなみにソフィアの事を船員たちが「お嬢ちゃん」や「嬢ちゃん」と呼んでいたのはもちろん聖女とバレない様にするための彼らなりの配慮だ。


 ホゼピュタ国に向かって航行していく中で、彼らが気さくでなんだかんだ言って気遣いの出来る人たちだという事はすぐに分かった。


 最初こそソフィアにいきなり攻撃を仕掛けて来た人間ではあったが。


 でも、それも理由があっての事でこんな人たちがお金に困ってしまう程に庶民は貧困にあえいでいるという事なのだろう。


 それを利用し、しかも魔法道具まで使って自分を襲わせようと画策するアーノルド殿下には怒りを通り越してもはや呆れるしかない。


 ただ、ここまではしないものの私利私欲にまみれているのがアーノルド殿下だけかと言うと、残念ながらそうではない。


 あのガルフツスカ王国のごく一部……と信じたいが貴族の中には自分の懐だけを心配し、領民の生活の困窮を見て見ぬふりをする人たちもいる。


 そしてもちろん、それとは真逆にその庶民や領民たちの置かれている状況に目を向けてどうにかしようと奮闘している人もいる。


 国王陛下はもちろん。ミリア嬢もその一人だとソフィアは思っていたが、これはものの見事に裏切られた。そしてもう一人、ジェラルド殿下。彼もその内の一人だとソフィアは思っていた。


「……」


 自分にはもう関係ない。そう頭では理解していても、どうしても気になってしまう。あの後、みんなどうなったのか……と。

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