第6話


 すると、リーダーは頭がをガシガシ搔きながら「あー。俺も詳しくは知らねぇんだが」と前置きをしつつ。


「どうやら誰でも入れはするらしいんだが魔物だらけな上に整備された道なんてないらしい」

「それは……この国を通り抜けた場合とは違うのですか?」


 国を通り抜けてしまえば結局は森の方に出る。それならば条件はあまり変わらない様に見える。


「この国を抜けた先の森の方にはある程度道があるらしいな。しかも冒険者もいるらしいから色々と整備されているらしい」

「……なるほど」


「後は……まぁこれはあくまで噂だが、正式なルート。つまり国を通らずに森に入った人間に魔物をけしかけているのは山の主って話があんだよな」

「山の主……ですか」


「ああ。それが確かせいじゅう……って言われている――」

「聖獣!?」


「おいっ!」

「!」


 思わず出てしまった大声に、ソフィアは急いで自分の口を手で塞いだ。


 そしてリーダーは申し訳なさそうな苦笑いで周囲に「すみませんねぇ」と言いながら周囲に頭を下げた。


「なんだよ、そんなに珍しいのか」

「珍しいって言うどころじゃありません」


 しかし、そんな声が出てしまう程「聖獣」というのは本当に珍しい。それこそ神話レベルの逸話とも呼ばれる存在だ。


「でも、聖獣が絡んでいるのであれば先程の話も納得が出来ます」


 ただ、確かに「聖獣」な上に「山の主」とまで呼ばれる存在であれば山の治安の為に魔物をけしかけるのは何となく想像が出来た。


 そして「冒険者」などの話から察するに、多分。この国はその「聖獣」と何かしらの契約を交わしているのではないか……という推察も出来る。


 ただそれがいつ結ばれたもの。どの範囲など詳細は定かではないものの、それでも分かっているのはリーダーの言った「漁港の端はその範囲の中には入っていない」という事なのだろう。


「そうかい。で、どうすんだ? 検問所の方に行くのかい?」

「そう……ですね」


 検問所の方に行った方が一般的。そして、山の方にもある程度は安全に向かう事が出来るだろう。しかし、それはあくまで「一般的な話」と仮定した場合だ。


 正直、今のソフィアがホゼピュタ国の検問所に行くにはかなり不安が残る。


 そもそも自分が国外追放……というより、国外逃亡してきた身だと言うのも当然あるが、検問所を通る際に何やら設置された魔法具の間を通り抜けなくてはならない様だ。


 これで何かしらの反応があり、ソフィアの事がバレてしまった時の事を考えると……ソフィアとしては「安全」とは言えない。


 それならば……とソフィアは漁港の端。森の方へをジッと見つめ、神経を集中させたのだった。

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