第15章「語り、レオニスの沈黙に届く」
──帝国・戦術研究院。
記録映像は止まっていた。
語りの火が兵士の剣を止め、民の記憶に触れ、構造設計者の沈黙を揺らしたその後、
レオニス・ヴァルグレイは、ただ静かに立っていた。
腕を組み、映像の残光を見つめながら、彼は沈黙していた。
語りは、風のようだった。
鋼鉄の構造をすり抜け、命令の隙間に入り込み、記憶の奥に触れてくる。
それは、彼の沈黙にも届いていた。
──あれは、いつの記憶だったか。
まだ帝国に入る前。
まだ「英雄」と呼ばれる前。
私は、剣を握っていた。
守るために。
誰かを。
何かを。
──その「誰か」は、もういない。
戦場で失った。
守れなかった。
だから、私は沈黙した。
言葉は、剣よりも脆い。
語れば、崩れる。
だから、私は語らなかった。
──語りは、剣を止める。
それは、命令よりも深く届く。
それは、記憶に触れる。
それは、私が封じたものに触れてくる。
ユグ・サリオンの語りは、構造の外にある。
それは、痛みを見つめる火。
それは、誰かのためではなく、自分自身のために語るもの。
──私は、語っていいのか。
沈黙を破ってもいいのか。
守れなかった者の記憶を、もう一度見つめてもいいのか。
あの夜、私は剣を握っていた。
命令は届いていた。
構造は稼働していた。
でも、私は動けなかった。
目の前で、彼女が倒れた。
私は、語ることができなかった。
──語れば、崩れる。
それが、私の信念だった。
沈黙は、強さだった。
語りは、弱さだった。
でも、ユグの語りは違った。
それは、痛みを分け合うものだった。
それは、誰かに届くかもしれないという希望だった。
──私は、語ってみたい。
まだ言葉にならないけれど。
まだ震えているけれど。
それでも、語ってみたい。
沈黙の奥にある火を、風に乗せてみたい。
語りは、命令ではない。
語りは、祈りでもない。
語りは、沈黙の奥にある火。
──私は、英雄ではない。
私は、沈黙を守ってきた者だ。
でも、語りは、沈黙を揺らす。
語りは、記憶に触れる。
語りは、私の剣を揺らす。
私は、目を閉じた。
その奥に、幼い日の記憶が揺れていた。
剣を握った理由。
守りたかったもの。
語りが、そこに触れていた。
──紅蓮王国・語りの座。
ユグ・サリオンは遠くを見つめていた。
風が吹き、ルクスが肩で揺れていた。
彼は語りの火が、誰かの沈黙に届いたことを感じていた。
(語りは、届いた。
それは、構造ではなく、記憶に。
誰かの沈黙に)
| 語り、レオニスの沈黙に届く。
| 火は、記憶に宿り、守れなかったものに触れた。
| 精霊は、剣を選ばず、心に灯った。
| まだ、誰も知らない。
| この火が、世界を変える日が来ることを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます