第9話 そんな甘い話じゃないよ
「ってなわけで、ララのお願いを聞こうか迷ってるんですけど、どうすればいいでしょうか?」
翌日、私は学校の屋上に来ていた。昨日のララの話を聞いて、私だけでは判断できないと考えたため、千代たちに相談することにしたのだ。
「えっと? 状況がよくわからないんだけど。つまり、ダンジョンを攻略するために動いてほしいってこと?」
由利原が弁当を口にしながら言う。
「みたいですね」
「ふ~ん」
興味なさげである。
まあ、当然と言えば当然だ。ダンジョンなんて私一人が何をしたところで攻略できるものではないからな。
言ってしまえば、日本の政治を変えるために、学校で何か呼び掛けてみようと言っているようなものだ。しかも期限は数週間という制限付き。どう見ても見当違いというか、突拍子のない話だ。
「ははっ、頭悪すぎてびっくりしたー! ルリちゃん流石にそれは無茶すぎると思うよ?」
「…うっ。で、ですよねぇ、はい。それはわかってます」
容赦のない言葉である。
できるかどうか、という話をするならできないというのが正直な話。そもそも私でなくとも千代でもそんなことは不可能だ。ダンジョン攻略はそう甘くない。
「一つ言っとくけどさ。あんたは自分が言っていることの無謀さは理解してるんだよね?」
「はい。人並みは」
千代の真剣な言葉に私は答える。
「千代ちゃん辛辣! いくら何でもそんな言い方したらルリがかわいそうだよ!」
「いや、あんたも結構ひどいこと言ってたでしょ。頭悪いとかなんとか」
「あれは冗談だよ冗談! マジレスしちゃっただけじゃん!」
「それ冗談って言わないから。しっかり本音でしょ」
二人がツッコミ合っている。
でも、やっぱそうだよねぇ。いくら何でも難しいものは難しいか。流石に聞くまでもない話だったわ。
ダンジョンを攻略するにあたって、必要なのはやっぱり力だ。私に力があれば話に現実味が帯びるが、そんなものはない。
精々がララに喧嘩で勝てるくらいだ。中学生が、小学生相手に……。
「まあ、でもルリちゃんだってそのお願いが難しい話だってのは分かってるはずだよね。そもそもなんでそんなお願い受けようと思ったの?」
「それはーー」
由利原に聞かれて、私はお願いを聞くに至った経緯を説明することにした。
私も最初はララのお願いを聞こうとは思わなかった。だってそもそもダンジョン攻略とか私の専門外だし、そのための力だって備わってないから。でも昨日ララに言われたのだ。
『私の友達がさ。ダンジョンの近くに住んでるの。っで、今回モンスターパレードを引き起こすのを理由に引っ越すらしくて。それに伴って学校も転校するんだって。もちろん、私はそれを引き留めることはできないし、命のほうが大事だから納得もしてる。けどその子私の親友で保育所の頃からずっと一緒だからすごく寂しくてさ。せめて私にできることをしたくてルリ姉に相談したの』
こんなことを言われたら誰だって気持ちが揺らぐだろう。
ただでさえ馬鹿なのに、感情で訴えられたらもっと馬鹿になる。
『馬鹿なことを言ってるのは分かってる。けどどうしても解決してあげたいの! 今回のダンジョンだって、その子が魔物から逃げたのが原因でダンジョン化したって言ってたし。このままじゃ私は人殺しだって泣いてたんだよっ。そんな親友の姿、私見てられないの。だからルリ姉……私のお願い、どうか聞いてください! お願いします!』
そう言ってララは土下座してきた。
人の本気の土下座、初めて見た。ララがそこまでするってことは、それだけ本気なんだろう。
「……」
(くっ……断りずらい)
というのが私の感想。そして今に至るというわけだ。
「なるほど。こりゃ完全に情に流されてますわ。押しに弱いルリちゃんがちゃんと押しに負けてるパターンだわ」
「まったくだね。できないこともあるのに、はっきり断らない。そういうところルリらしいよ」
「面目次第もございません……」
こればかりは言い訳のしようもない。
そこではっきり断れば話は終わっていたのに、無駄に迷うからみんなに迷惑をかけてしまう。
本当そういうのよくないところだ。
「まあでもそれがルリちゃんのいいところでもあるよね」
「?」
由利原が突然そんなことを言った。
「間違いない。ルリは情に流されやすいけど、誰かのために動けるやつだ。そういうのはルリのいいところだよ」
続いて千代も同じようなことを言う。
てっきり、ボロカスに言われるかと思ったけど、そんな様子はなかった。
むしろ二人とも納得している様子だし、清々しい顔をしていた。
「まあだからと言って、情に流されて出来もしないことを迷うのはよくないけどな。そのせいで相手に変な希望を持たせるのはその子が可哀想だ。もう少し考えて行動するべきだと思うよ、ルリ」
「だね。ルリちゃんのいいところでもあり悪いところでもある。もし私が同じような嘘をついても、ルリちゃん動いてくれそうだし」
「たしかに」
千代と由利原がそんな会話をして笑っている。
「みんなぁ……」
それを聞いて私は感極まった。
二人とも……本当にいい人だな。
私の突拍子のない話をちゃんと受け入れてくれて。納得してくれて。
まだダンジョン攻略の手伝いをするのかは決めてないけど、それでもこの二人はちゃんと私の話を受け止めてくれた。
それだけで気分が少し軽くなった気がする。
「でも問題はどうやってダンジョン攻略を進めるかだ。私はもちろん手伝ってもいいけど、それだけじゃ戦力が足りない。何か策でもあるの?」
「あー……うん。一応。というか、ここからがララのお願いの話になるんだけどさ」
「「「?」」」
問題はそこだ。どうやってダンジョンを攻略するのか。
千代が手伝ってくれるのはありがたいしうれしいけど、それだけじゃ戦力が足りない。
ララもその辺が分からないほど無鉄砲じゃない。だからこそ、
『あのねルリ姉ーー』
それは昨日話した、ララからの『お願い』。
私は息を呑むと昨日のララの話を思い出しながら言った。
『「同じクラスの
それは奇しくも昨日由利原が出した名前だった。
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