幼少期編 ー2章ー 1話 「小さな日常、森の始まり」
青々と茂った森の木々が、穏やかな風に靡いて葉音を響かせる。
鳥たちは歌うように囀り自然が奏でる音楽のように、日々僕たちの耳を楽しませてくれる。
「アレン、顔を洗ったら朝食にするぞ。あと寝坊助たちを起こしてきてくれ!」
「はーい」
あれから僕は成長して三歳になった。
体はまだ小さいけれど、ちゃんと動き回れるようになっていた。
赤ちゃんの時には分からなかったけど、ガルド・リシア・ルナは三つ子ちゃんだったらしい。
歳も僕と同じ三歳だ。
ここで一つ疑問が生じるのだが……なら、僕は誰の子供なの?
この疑問にオルセアは「ガルドたちの親兄弟の子だ」と説明した。
僕たちの親はどちらも早くに亡くなったという話だ。
僕の方の話が嘘なのは分かっている。
でも、ガルドたちの親の話は本当なのだろう。
きっと当時のオルセアは、自分の子供を亡くし、孫三人を育てなければならないという複雑な思いがあったのだろうと、話を聞いて思った。
そういった過去の出来事も、言葉を交わせるようになった今、少しずつ分かってきた。
三人を起こしに部屋へ行くと、リシアとルナは起きていた。
「おはよう」と挨拶をして、いつもの問題児ガルドを叩き起こす作業に取り掛かる。
「おーい、ガルド。朝だよー!ご飯の時間だよー!」
現世で一人っ子だった僕は兄弟の接し方が分からなかったが、そこは赤ちゃんからの付き合いだ……もう慣れた。
優しく声を掛けるが、いつも一回で起きてはくれない。
「……ん~、もう一時間だけ……」
「長いわっ!!」
バシッという音と共に、リシアがお決まりのチョップを炸裂させる。
この光景は、赤ちゃんの時から変わらない。
ガルドはきっと、そういう星の元に生まれたのだろう。
「ふわぁ~。私、顔洗ってくる」
ルナはおっとりとしたマイペースな子だ。
だが、時折何を考えているのか分からない時がある。
ルナは毎朝寝ぼけ眼でガルドを踏みつけていく。
「グェッ!?」と悲痛な叫びが部屋にこだまする。
「みんな困ってるよ。早く起きなさーい」
おっとりとした口調で大胆な事をするのだ。
これはリシアよりも怖いかもしれない。
餌食になるのは、いつも決まってガルドだけだが。
朝食はボルンから買い付けているパンと牛乳、採れたての野菜と目玉焼き……なのだが。
今日に限って目玉焼きがなかった。
取り忘れたのかな?
疑問に思ったのでオルセアに聞いてみた。
「オルじい、目玉焼きは?」
じいさん扱いするにはまだ若いと思うが、子供からしたら“じいさん”でも通用するのだろう。
みんなが「オルじい」と呼ぶので、僕もそれに習った恰好だ。
「実はな……卵を温めているから、ヒナが孵るかもしれないぞ!?だから暫く目玉焼きはなしだ」
新たな命の誕生に心踊る一同。
また森が賑やかになるな……そんな期待と楽しみを感じる朝だった。
大工さんはと言えば、僕たちの家から少し離れた位置に材木置き場と工場、大工さんたちの家を去年完成させた。
作業の音がうるさいだろうからと、配慮して建てたようだ。
朝食を取り終えると、いつものようにオルセアは畑仕事を始める。
僕はと言うと、森の散策をするのが日課だ。
遠くには行けないけど、色々な植物や小動物が居て見ているだけでも楽しい。
良い運動にもなるから、一石二鳥だ。
いつものように散策をしていると、「ガサガサッ」という音が近くの茂みから聞こえた。
この前発見した野ウサギかと思った瞬間、茂みから見たこともない巨大なイノシシが現れた!
え……嘘でしょ……!?
僕はあまりの大きさと威圧感に驚いて、腰を抜かしてしまった。
どう対処したら正解なのか分からず、ただ後ずさりするしかできない。
ジリジリと詰め寄るイノシシ。
ダメだ……殺られる……!
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