第5話 電話

『聞きたいことって?』

「……い、いつから私のこと好きなの?」

あー。顔見えてなくてよかった……。

真っ赤なのばれませんよーに。

『ゴンッ』

鈍い音が聞こえた。

「え、嘉賀さ…嘉賀くん?」

いえたぁ!言えたよ!嘉賀くんって!

『もうやだ…好きになった時期は聞かれるし嘉賀くん呼びになるし…』

弱弱しい声が聞こえる。

「い、嫌だった?」

『いや。全然』

おー。早。即答じゃん。

『あー。んと、俺が好きになったのは…幼稚園の入学式…?』

だから入学式って噂たってたんだ…じゃない!え?なんで!?

『その~、いわゆる一目惚れ…?そのー、泣いてたじゃん?』

そう、私は幼稚園の入学式でギャン泣きした…らしい。

「……」

今の私には黙って聞くことしかできなかった。

『本当に気持ち悪いことにその顔に一目ぼれして…話しかけました。』

気持ち悪い。なんて思わなかった。

ただ、付き合ったとして私泣かされる…?

ドンッ

…?

物音がしたほうを見ると波留香が珍しく目を輝かせていた。

そして美夏がよくやった、というようにガッツポーズしいた。

……聞いてたな…?

『あ、あの……亜紗妃?』

「あっ、ごめん。その~、聞いた後に…初恋いつだったかなぁ、なんて…思って」

『…いつだったの?』

うっ、痛いしはずいとこついてきた…。

「幼稚園…」

『誰?』

怖いっす、嘉賀くん。

「……」

『え?なんでだまんの?』

え、こわ。恥ずかしいから言いたくないんだけど。

「……嘉賀くん」

『……え?』

何度も言わせんな…。

「嘉賀くんだってば」

『……今もって思っていい?』

「いいんじゃない?ハルくん」

一気に飛んじゃったぁぁ!名前呼びしちゃった…。

わー、絶対真っ赤じゃん。

『……っ、ほんとに?』

「うん」

少し気になって二人のほうを見る。

美夏が真っ赤な顔を隠し、少し涙を流していた。

波留香も優しく、やわらかく笑っていた。

「じゃ、また明日。」

「……あ、俺迎え行く」

「ん、ありがと」

そういって電話を切る。


ドンッ


……え?

「ちょっ!」

なんで抱き着いてくんの!?

「おめでとぉぉぉ!」

「亜紗妃っち~!これからもあそんでよぉぉ!」

……え、うれしい。

「もちろん。当たり前じゃん」

そのまま解散して、ぽわぽわした状態で眠りについたことは言うまでもない。


「ん……朝…?」

「あああっ!亜紗妃?!男の子来てるけど⁉」

お母さんが叫んだ。

……今起きたんだけど???


「……あ、俺迎え行く」


って言ってたじゃん!私バカ?!バカか!

いくら毎日すっぴんだからって寝起きは見せられないよ!?

「ちょ、今から着替える!」

「急ぎなさいよ!?」

……嘉賀くんが余計なこと言いませんように。

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甘々な彼氏がうざすぎる 春木維兎 -haruki-yuito- @KOBAYUI

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