提案
ビル内のサイゼに入った。
パピ美さんと旦那は仲睦まじかった。
「僕たち合コンで初顔合わせだったんだよ」
旦那が「ね?」とパピ美さんにはにかむ。
パピ美さんは「うん、そう。全然タイプじゃなかったけど話してたら面白かったんだよね」と声を弾ませる。「パピちゃんはじめは僕と喋ってくんなくて、相手にされてないってかんじだったんだ」口をとがらせわざとらしく拗ねた顔をする旦那にパピ美さんはあははと笑い飛ばした。「でも結婚っていいもんだよ。 パピちゃんに会えて良かったしね。
きみ結婚とか興味ある?まだ恋愛してたいかんじかな」
なんだ、おめー…ぐいぐい聞いてきやがんな?と思った。でもなんだろうこの不快感ないナチュラルな距離感の近さは。営業で押し売りとかしてそうだ。
わたしは恋愛にも結婚にも興味がない、他人自体に興味がないしなんなら人間が嫌いだからだ。人間って性格わるいし臭いしアホだし最悪の生き物だと思う。「恋愛も結婚も日頃からあんまり考えることないですね…」
私たちの間に気まずくない沈黙が流れる。
沈黙を吹き飛ばすように店員が料理を持ってきた。「パンナコッタです」パピ美さんが注文したパンナコッタがプリプリ揺れながらパピ美さんの前に到着した。スプーンも到着した。わーいとパピ美さんはスプーンを手に取りさっそく口に運んでうま!と目を輝かせる。わたしは「おいしいですよね」と言う。食べたことないけど。わたしと旦那はなにも注文せず水だけ口つけている。実はサイゼに入ってすぐ旦那が「実はお腹すいてお昼食べてきたんだ」といい、食事を観察されるの嫌なので「わたしも食べすぎないようにおにぎり1個食べてきたんですけど、お腹いっぱいになっちゃってます」咄嗟に言った。本当はハンバーグステーキが食べたい。
旦那さんがじっとわたしの顔を見ている。くっきり二重に長いまつ毛のぱっちりした眼力がうざったくて顔を旦那へ向けた。
「ぼくたちはじめましてだけど、きみすっごくいいこだってわかるよ」
「え、あ、そうですか?ありがとうございます」
控えめに笑って流そうとしたのに「あのさ」と神妙な顔つきになる旦那とパンナコッタをパクパク口に運び我関せずなパピ美さん。なにを言おうとしてんだ?冷や汗が額をつたう。
「ぼくの会社の後輩に、心配な男がいるんだよね。ついてないっていうか女運がないっていうか…ハッキリ物を言えるし根はいい奴で」
わたしは頷き相槌を入れながら、この人なんの話してんだろうかと上の空だった。
パンナコッタを食べ終わったパピ美さんが「紹介したいのよ、あなたとなら合う気がするから」
「は…」
はあ〜?と吠えそうになったのを堪えたわたしを褒めてくれ。
初対面で紹介したい職場の後輩?会う前から紹介することを決めていたかのような口ぶりに不信感を抱き、さすがに眉間に皺が寄った。
「職場に優しいいいこがいるってパピちゃんから毎日聞かされてたんだよ、パピちゃんからの話と実際今日会った感じから正直にいうと、かなり紹介したいし彼に会ってみてほしい」
隣でパピ美さんが首を縦に振ってうんうんいっている。
「お見合いしてみない?」
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