剣鎧の戦い
月の明るさが増してスパーダの鎧がより煌めくと同時に彼女が前へと走る。それを受けて立つようにパンツァーは足に力を入れて頭を丸め金属質の太いハリを逆立てた。
刹那にハリの数本が発射され、自分目掛けて飛んでくるそれを大剣で弾き落としてスパーダはさらに進む。
(格段に腕を上げているな、前は押し留められたが……)
静かにカードを引き抜きながらクロスがスパーダの分析をすると、身構えるパンツァーの意思が聴こえ手を止める。瞬間、スパーダが勢い良く大剣を振り下ろし、発射されすぐに生えた太いハリがそれを受け止めた。
(硬い……なら、押し切る!)
両手で剣を持ってスパーダが縦一閃に剣を振り抜きパンツァーを強引に押し飛ばす、が、二歩程下がった所で止まってしまいすぐにパンツァーが針を飛ばし反撃に出る。
すかさず剣を突き立て盾とし攻撃を凌ぐスパーダだが、エルクリッド共々自分達と同様にクロスとそのアセスもまた以前より手強くなっているのを悟り、静かに息を調えた。
(スパーダさん、強化すれば切れるかな)
(防御に集中するだけであそこまでとなると、あなたの力を借りる必要がありますエルク)
スパーダの言葉を受けてエルクリッドの瞳孔が細くなり髪色に黒色が混じる。エルフとしての、
(エルフの力、か……どの程度のもんか試させてもらうぞ、エルク)
「行くよスパーダさん!
赤き光がカードより放たれ、それを受けた大剣を担ぎパンツァーを再び両断しに走る。当然パンツァーが迎撃の為にハリを発射するが、すぐに剣で弾かれ一気に間合いを詰められる。
刹那、跳ねるようにパンツァーが前へと動いてスパーダに激突し、太いハリは突き立てるも鎧に阻まれ貫くことは叶わない。しかし攻撃を出される前に体当たりを受けたことでスパーダは後ろへと下がらされ、すぐ様クロスも動く。
「ツール使用鉄条網!」
空から広がりながら四方を杭で止める鉄網がスパーダに被さり動きを封じ込める。だが身動き自体ができないわけではない事からスパーダは網を切り裂き脱出し、再度パンツァーを切らんとするも目の前に姿がないのに気づき急停止する。
舞台に空いた穴から地下へ潜ったのだとすぐに理解し足下に意識を集中させ、微かな震動からその場から離れ飛び出してくるパンツァーを避けた。
すぐに反撃とスパーダは剣を突き出すが瞬時に丸まったパンツァーの外殻が剣を弾く。幸い腹側を狙った事もあってハリを発射されても射程外だったものの、機敏に反応してくる事は厄介でエルクリッドもどうやって打ち破るか、あるいは動きを封じるかを思案していく。
(突きの威力を利用してパンツァーは距離をとったけど、エルトゥ・フォース使っても確実に当てなきゃ意味ないのはわかった。でもここでカード使うとあたしが不利になるし……)
まだ二番手での戦いとなると短期戦を挑まない限りは余力を残しておきたいものだ。手の内を知り尽くしてる者同士なら尚の事急げば逆手に取られやすく、一気に追い込まれる可能性もある。
魔力はまだ多く残しカードも十分に用意しているとはいえ、必要以上の消耗はエルクリッドも避けたいと考えていた。ならばどうやって堅牢なパンツァーを攻略していくか、クロスの控えのアセスや使ってくるであろうカードを想定し、刹那に白く光るカードを抜く。
「
弾かれ着地するパンツァーを白き光の帯が絡みついて舞台に抑え込み、背中のハリを立てて突き刺しても切れない事にクロスも目を大きくしつつ感心の声を漏らす。
相手の動きは止めて絶好の機会に、エルクリッドの意思を伝えられたスパーダは一歩下がって大剣を投げつけ、その攻撃方法にはクロスは舌打ちし抜きかけたカードを変えて間一髪発動し終えた。
「スペル発動プロテクション……流石にゴーストップチェックは読んでたな、エルク」
薄い青の膜が大剣を弾き飛ばして宙へと舞わせ、落ちてくるそれをスパーダが受け取る間にクロスがふっと笑う。
クロスが抜きかけたゴーストップチェックのスペルの事はエルクリッドはよく知る。その使い方を教えてくれたのは目の前の人物で、相手を止めた時ほど気をつけろと言われた事も。
「師匠には、ずいぶん鍛えられたもん。その時はわからなかったことも今は全部わかります、わかるから、戦える」
「そう言ってもらえると師匠冥利に尽きるな。お前とここで戦うってのも不思議なものを感じるが……」
何かを言いかけた所でクロスが小さく咳払いをし、それにエルクリッドは違和感を覚えた。何を言わんとしたのかまではわからないが、指導を受けていた時に答えを自ら言いかけた時にクロスがしていた仕草と同じで、大きな意味のあるものなのだけは理解する。
(勝たないとね、あたし)
手を強く握って思いを新たにしエルクリッドの目に光が灯る。この戦いが師を越える為だけのものでも、神へ通じる道を開く為のものでもないとわかったから。
そして答えを自分の手で掴む為に、今戦うのだと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます