第3話 ひと休み


 黄龍おうりゅうくにMaize(メイズ)をはなれたレディとクイーンは、ふたたびガタンガタンとれる電車でんしゃたびはじめた。

 徐々じょじょにコトンコトンとやさしいらぎにわり、クイーンはうとうとふねはじめた。となりすわるレディは、グラグラぐらつくクイーンのくび心配しんぱいになる。そっとかたあたませると、スースーっと寝息ねいきはじめた。レディも一安心ひとあんしんし、かるねむった。





 レディがますとクイーンはまだねむっていた。あつかった気温きおんも、ジャケットを丁度ちょうど気温きおんもどった。まどからの景色けしきるともうすこしでとなりくにくとわかった。レディはクイーンのかたやさしくらしこす。

「クイーン、きて。」

 ハッとましたクイーンはあわててからだこす。

「ごめん、もたれかかっちゃった?」

ぼくが、かたせたんだ。勝手かってさわってごめんね。」

 レディのあわ笑顔えがおまぶしくて、クイーンのほほほころぶ。



 キーーっとブレーキをかけ、電車でんしゃまる準備じゅんびをしている。

 えきえてきた。客達きゃくたちりる準備じゅんびをし、荷物にもつをまとめる。

 コツコツコツコツと革靴かわぐつやヒールのおと駅構内えきこうないひびく。レディたちあとつづいてりた。人々ひとびとったあと、とてもしずかだった。


 ぐぅ〜〜〜っとおとる。

 レディがおとほうると、クイーンがかおあかくしている。

「おなかいたね、ごはんべようか。」

 とレディがうと、クイーンはこくんとうなずあるはじめた。



 あるきながら、ご飯屋はんやさんをさがした。

 クイーンはキョロキョロ、おみせさがす。レディはそれよりもきたいことがあった。

「ねえクイーン、どうしてまだLava(ラヴァ)にいたの?」

 はた、とクイーンのあしまる。あるきながらでいいよ、と催促さいそくするとあしうごかしはじめた。

「そうねえ、Lava(ラヴァ)がきなのよ。まれそだったくにだもん。」

 ととおくをるようなこたえた。

わたしね、もと王太子妃おうたいしひ候補こうほなの。候補こうほ、ね。わたし家系かけい王族おうぞく家系かけいでもあるんだけど、わたしいえ分家ぶんけ分家ぶんけというくらい国王こくおうとはとお親戚しんせきなの。いま王族おうぞくられてしまった。王妃様おうひさまがおよめてから、このくにわってしまった。」

 にがかおをしてくるまぎれの笑顔えがおつくる。

いま王族おうぞくなら、絶対ぜったい加担かたんしたくないとおもって、候補こうほりたの。」

 クイーンの表情ひょうじょうくらくなる。レディがそっと背中せなかてる。

兄夫婦あにふうふからもCrimson(クリムゾン)にしてきなさいとわれているのだけれど、そだったいえ手放てばなしたくないから、Lava(ラヴァ)をはなれられないの。」

「それって、守護龍しゅごりゅう白龍はくりゅうわってから?」

「そうね、わって三年経さんねんたってからかしら。」

 レディのかおけわしくなる。やはりその時期じきかぶるか……とぼそっとった。

「クイーン、つづきはそこのおみせはなそう。」

 とうしろのおみせ指差ゆびさした。




 レディにられながらはいったおみせ高級こうきゅうそうなおみせおもわぬ出費しゅっぴにクイーンはドキドキした。

「レディ、このおみせたかいんじゃ…」

大丈夫だいじょうぶ、お手頃てごろなのもあるよ。」

 とレディが紋章もんしょうせると、個室こしつ案内あんないされ、お手頃てごろうらメニューをってきてくれた。その紋章もんしょうじつすごものなのかもとまたクイーンはドキドキした。



何食なにたべる?」

 とレディは無邪気むじゃきにワクワクしていた。

「じゃあ、パスタサラダ。」

 とクイーンがうと、

随分ずいぶんヘルシーなものにするねえ」

 とキョトンとクイーンをた。

ぼくはねぇ、ステーキ!」

 注文ちゅうもんえ、たのんでいた料理りょうり到着とうちゃくした。ジュージューと熱々あつあつおとこうばしいけたかおりが食欲しょくよくそそる。レディのヨダレはいまにもれそうだ。食欲しょくよくけそうなレディをてクイーンはわらった。クイーンのまえにはおおきな海老えび野菜やさいいろどなら甘酸あまずっぱいソースがえられている。もたれしない料理りょうり一番いちばん!とつばむ。

「「いただきます!」」


 おおきめの一口大ひとくちだいにカットしたステーキを大口おおぐち頬張ほおばる。レディのほっぺはおにくまっている。おにくふくらんだほほがリスのように可愛かわいくて、クイーンは微笑ほほえんだ。くるくるとフォークでいたパスタをくちはこび、ゆっくり咀嚼そしゃくする。やっぱりパスタは美味おいしいわね〜と余韻よいんひたった。

 半分はんぶんほどすすめたころ、レディははなはじめた。



白龍はくりゅうのラヴァは王族おうぞくいじめられているとおもうんだ。」

 クイーンのまる。クイーンにも心当こころあたりがあった。ちいさいころ王妃おうひ親戚しんせきいじめられたことがあった。あの親族しんせきってはいけない、とクイーンの家族かぞくはない、親戚しんせきながらえんった過去かこがあった。そのことをレディにはなすと、うなずくばかりだった。



「このかんがえはぼくかんかえだけではくて、龍達りゅうたちみんなかんがえでもあるんだ。Lava(ラヴァ)にたらすぐ居場所いばしょがわかるとおもったけど、気配けはいえたりたりするから監禁かんきん…されているかも。ラヴァが脱出だっしゅつこころみてはつかまえられてをかえしてるとみた。」

 レディは真剣しんけんかおをしてテーブルに両肘りょうひじをつき、口元くちもとゆびんでいる。想像以上そうぞういじょう深刻しんこくになっていそうな事態じたいにクイーンはショックをけた。

「そんな……はやく、はやつけてあげないと……!」

「あくまで、あくまで想像そうぞうだから……でも半分はんぶん本当ほんとうかも。」



 

 沈黙ちんもくながれる。おたがいになんともえないかおをしていた。

 とりあえずめるまえべてしまおうと、もぐっとまた一口ひとくちステーキを頬張はおばった。またリスのようにほっぺにんだレディをてクイーンはなごみ、フスっとわらってしまった。こえがしたため、レディがクイーンのほうるとクスクスと微笑ほほえわらっていた。レディはなにわらっているのかさっぱりわかっていない様子ようす。その光景こうけいてよりツボにハマった。

「そんなにまなくたって、ゆっくりべればいいのよ。だれらないんだから。」

 とレディのほっぺをつんとやさしくいた。

元気げんきいっぱいでよろしいけどね。」

 とクイーンはくるくる自分じぶんのパスタをいている。いたパスタがおもったよりおおかったのか、クイーンのほっぺもリスのようになってしまった。クイーンはひとのことがえなくなり、すこあかくなった。レディはその様子ようす可愛かわいいと素直すなおおもった。




「さあ、はらごしらえもしたし、くらくなるまえ挨拶あいさつきますか。」

 とクイーンが自分じぶんのおなかをぽんぽこたたく。

「うん、こう!」

 とレディは満面まんめんみであるはじめた。

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