第2話 黄龍の国 メイズ


 噴水ふんすい広場ひろばはじめてった少女しょうじょレディベロアと赤髪あかがみのクイーンルージュは喫茶店きっさてわ二人ふたり作戦さくせんっていた。地図ちずひらき、二人ふたりかおちかづけて地図ちずのぞく。

「まず、どこのくにからく?」

 とクイーンはき、レディはまよ様子ようすこたえた。

「う〜ん、黄龍おうりゅうくにMaize(メイズ)からこうかな。」

 クイーンはこのくにからたことがない。ほかくにのことにかんしてくわしくないのだ。

「Maize(メイズ)ってどんなくになの?」

 う〜んとかんがえるレディ。かんがえがまとまらないのか二度目にどめたのんだホットチョコレートをすする。

一言ひとことうとあつくに!」




 

 陸続りくつづきのため、Lava(ラヴァ)から電車でんしゃ移動いどうしていく。車内しゃない徐々じょじょあつくなっていく。クイーンたちもあつ季節きせつごしたことがあるが、自国じこくには湿度しつどのあるジメっとしたいやあつさだった。あつ季節きせつえ、すずしい時期じきに入っていたLava(ラヴァ)にくらべると、ぎたなつおもあつさだった。すっかり秋服あきふくわったクイーンにとって体温調節たいおんちょうせつ上手うまくいかず、ジャケットをぎ、シャツをうでまくりするがロングスカートがねつがしづらくしており、ひたいにはあせにじていた。

「Maize(メイズ)ってあつくになのね。はじめてたわ。」

「そうだね、ぼくはじめて。」

 二人ふたりあせをハンカチできながら電車でんしゃり、日陰ひかげ目指めざしてあるく。日傘ひがさなに直射日光ちょくしゃにっこうあたまらし、クラクラする。あつそうにするクイーンをてレディは心配しんぱいになるが、あせがかけない体質たいしつのクイーンはよりもくるしかった。ふと、とおりをけると屋台やたいのあるとおりにいた。



 

「おねえさんがた!ジュースでもんで水分補給すいぶんほきゅうしない?」

 ふくよかな女性じょせいがエプロンをしてニカっとわらって黄緑色きみどりいろ果実かじつっている。屋台やたいしたなにものっている様子ようすだった。

しいです!」

 と元気げんきにレディが、

「くださ〜い」

 とちからなくクイーンがこたえる。

 もう二人ふたりあつさにバテている。のどかわきでれず、おみせ日陰ひかげすわり、クイーンはってすぐくちにした。そんなクイーンを心配しんぱいになり、レディはすこもの警戒けいかいしている。

「これはなんのジュースですか?」

「ココナッツジュースというものです。んでみてください。」

 ふと店員てんいんとなりに、なりの女性じょせいっていた。いつからいたのだろうか。店員てんいんも「大丈夫だいじょうぶよ、あやしいものじゃないから。すこあま味付あじつけはしてるけどね。」とレディにウィンクした。レディはクイーンのとなりすわってジュースをんだ。クイーンは店員てんいんからもらったおおきなっぱを団扇うちわのようにあおぎ、すずんでいる。えたレディは、

貴女あなた宮殿きゅうでんの…?」

 とくと、

流石さすがでごさいますね。宮殿きゅうでんのものでございます。メイズさまがおちですよ。」

 と女性じょせいこたえた。

 日陰ひかげやすんですっかり調子ちょうしもどしたクイーンもうごけるようになった。ご馳走様ちそうさま、とおみせ婦人ふじん挨拶あいさつとおだいわたして、宮殿きゅうでんかった。


 

「あの、そちらからてくださってたすかりました。宮殿きゅうでん場所ばしょがわからなかったもので。」

 とレディがうと、

「メイズさま指示しじむかえにいくようわれましたので。」

 と女性じょせいこたえた。

 宮殿きゅうでんまで案内あんないしてくれた女性じょせいはこのあつさでも汗一あせひとつかいておらず、人間にんげんではないようにえた。不思議ふしぎおもったクイーンは、レディにくと龍以外りゅういがい人間にんげんだからおそらく人間にんげんだとおもうと。

 宮殿きゅうでん敷地内しきちない神域しんいきに入るためすずしく、そととは別世界べつせかいだった。あつさでバテ気味ぎみだった二人ふたりには大助おおだすかり。

「メイズさま、おいたしました。」

 と一言ひとことうと案内役あんないやく女性じょせいはいつのまにかいなくなった。



 

「おひさしぶりです。メイズさま。」

きみれいのユニコーンくんね。お名前なまえもらったといたけどなんとうのかしら?」

「レディベロアとつけてもらいました。」


 

 え!?あれはあくまであだ程度ていどでは!?とクイーンがおどろき、あせ表情ひょうじょうかくせていない。

「ご一緒いっしょかたは?」

「クイーンルージュ。ぼくのクイーンなんです。」

 姿すがたおぼろげでクイーンにはあまりえていなかった。りゅう姿すがたえたり、人型ひとがたえたり。とりあえずペコリとお辞儀じぎをした。

「Lava(ラヴァ)のくにからたのでしょう?どうでした?いましたか?」

つけられませんでした。最後さいごにもう一度いちどってさがそうとおもっています。」

「うん、わかりました。わたしからいま報告ほうこくについてはみなつたえておきます。をつけていくように。」

 失礼しつれいします。と宮殿きゅうでんあとにした。かみのご加護かごけたからかからだのだるさはくなり、かろやかにうごけるようになった。メイズの姿すがたおぼろげでえずらかったのがになり、レディにいた。



「あの、メイズさま姿すがたおぼろげであまりえなかったんだけど、レディにはハッキリえていたの?」

 レディはおどろいた。

「え?クイーンにはえなかったの?」

りゅうえたりひとえたり、全部ぜんぶぼやけていたけど……わたしがおかしかった?」

 レディがすこうつむいてかんがえ、口元くちもとをやる。

だれでもえるはずなんだけど、クイーン相手あいてにはずかしかったのかな。」

 真面目まじめかおこたえた。ずかしい?女性じょせい女性相手じょせいあいてれているということ?とクイーンのあたまにはハテナマークがならんだ。

「このMaize(メイズ)の国民こくみんなら人間にんげんでもだれでも姿すがたることはある。もちろん人型ひとがたで、でもりゅうのようにもえたなら本来ほんらい自分じぶんせたっていうことじゃないかな。ぼくにはどっちもハッキリえたよ。」

 ニコッとわらってレディはこたえた。

「メイズさまって女性じょせいなのでは……?」

 とレディにくと、

女性じょせいりゅう性別せいべつはないよ。自分じぶんせる姿すがたえることができるんだ。女性じょせいにも男性だんせいにも。」

「えええ〜〜〜〜〜〜〜!?」

 とクイーンはこしかしておどろいた。レディはおどろき、す。

「えっえっえ!ごめん!そんなにおどろくことだった?」

 おどろくもなにもそんなことがこの現実げんじつにありえるのか?とクイーンのあたまなか大混乱だいこんらんだった。ピヨピヨピヨとあたまのあまりをひよこがんでいるようだ。

人間にんげんではありないことだからおどろいちゃった。」

 とレディのり、がる。

「そうなんだ、ぼく性別せいべつないんだけどね。」

 二人ふたりあいだ沈黙ちんもくながれる。クイーンの表情ひょうじょうかたまり、あまりのうごかなさにレディはあせりクイーンの顔色かおいろうかがう。


 レディのみみごえこえて上空じょうくう見上みあげると黄龍おうりゅうんでいた。応援おうえんしてくれているようだった。

「ありがとう、メイズさま



 いつのまにか、むねおさえたクイーンがあががった。びっくりしたわ〜といながら。

 ふとLava(ラヴァ)の上空じょうくうると、白龍はくりゅうんでいた。レディに視線しせんけると、

「やっぱりLava(ラヴァ)にいるんだ。そりゃそうだ。あのくにから出られないんだから。」

「なぜつからなかったかわからないけど、次行つぎいってみましょう。」


 宮殿きゅうでんから二人ふたりまわりを見渡みわたす。まわりは屋台やたいがずらりとならんで活気かっきあふれている。みんなきとたのしそうにきている。

「Maize(メイズ)もくにね。」


 二人ふたりはMaize(メイズ)をあとにした。

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