【イの国】

「フィーの……言ってたことが分かった」


 ミーレスを強化するためにクエストを受け他麻葉は、森で10M級のカマキリ【ジャイアント・マンティス/LV:3】と対峙していた。


 そんな敵と戦ってる最中に、『オーラ・モニターがいらない』と言っていたフィーの言葉の意味がやっとわかったのだ。


「モニター邪魔!!」


 普段なら邪魔にならないのだが、360°全てがモニターになっている【テラ・レギオンズ】においては、戦闘中『目に入ってしまう異物』にしかならないのだ。


「ほら、邪魔でしょ?」


「なるほどな!わかったよ!だけど、負けるわけにもいかない!!」


 剣と鎌がぶつかり合う中で、必死に異物が目に入らない様にするが、どうしても気になってしまう。


「邪魔なんだよ!!」


 モニターに対する気持ちを敵に向け、八つ当たりする形で剣に意識を集中させ、オーラを纏った剣を振るう。


(確かにこの剣は扱いやすい)


 オーラが前よりも乗りやすし、軽く、鋭い。


 その証拠に、ジャイアント・マンティスはガードが間に合わず、右腕の鎌を肩ごと地面に切り落とすことができた。


「キィィィィィィィィイイ!!」


 痛みで怯んだところにブーストをかけ、突撃をかける。


「いい加速だ」


 麻葉本人のレベルが【レベル3】になったことで、【オーラ・パワー:LV4】となり、ミーレスのパワーも随分上がった。


 そのパワーに抗えず、ジャイアント・マンティスは吹っ飛ばされ、地面に倒れ伏す。


「じゃあな!!」


 そのまま飛び上がり、脳天を剣で突き刺すことでジャイアント・マンティスは絶命した。


「はーー、帰ったらモニター外してもらおう」


 戦闘の緊張感から解放され、深いため息を付く麻葉。


「ねぇアサ」


「うん?」


 そんな麻葉に対して、フィーの様子は何処か暗い。


「どうしたんだ?腹痛いのか?」


「違うわよ。いつまでイの国にいるつもりなの?」


「あー……」


 フィーからしたら、ミーレスを作っているイの国は『反逆者の国』だ。


 そんなところに長居して欲しくないというのも分かる。分かるのだが、


(ミーレスの強化クエスト、全部こなしたいだよなぁー)


 どんどんとミーレスを強化していきたい麻葉は、しばらくの間はイの国にいたいのだ。


(大体機械がダメって言われても。いや、ルールを破るのは良くないんだが)


 陸上部に所属していた麻葉にとってルールは順守すべきものであり、必要なモノだ。


 どちらにも『正義』があると感じてしまう麻葉は、その答えに対してどう答えればいいか、分からなかった。


「分かった。麻葉はミーレスに夢中なのね」


「うっ」


 実際今の麻葉の【テラ・レギオンズ】活動は、ミーレスを中心にして動いている。


 ミーレスに乗るのが楽しいからプレイしているし、ミーレスが好きだから強化したいし、ミーレスが好きだから強化ができるクエストを受けたい。


「いや、うん。ごめんフィー。しばらくな……?」


 手を合わせて頭を下げ、何とか許しを請う麻葉。


「はぁ……分かったわ。だけど、イの国は危険なんだからね。

 ミーレスを作ってるのだって、きっと他国を侵略するためなんだから」


「……肝に免じとく」


 実際ミーレスを作っているイの国は怪しい。


 だが――


(これから、どうなるか)


 先のことは分からない。兎に角今は、ミーレスを強化して新たな脅威に備えるのみだと、麻葉はイの国のことを保留にした。


 麻葉はまだ、この海の底の世界のことを何も知らない。


 だが、この世界では確かに異変が起こっている。


 ――その異変の一端こそが、【麻葉自身】だと麻葉はまだ気付くことはなかった。

―――――――――――――――――――――――

テラ「この異世界に、地上人が来てること自体ね……。

朝姫ちゃん結構こういうところ鈍いよね」

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