4日目 お化け屋敷『おばけなんてこわくないもん!』
ニアが目を覚ますと、ゼルがじっとニアを見下ろしていた。
「今日は何をして遊びましょうか?」
「オバケごっこがしてみたい!」
「おばけごっこ、とは?」
「オバケになって、大人を驚かすの」
ニアは村の子供たちが、オバケの恰好をして大人を驚かす祭りをしていたのを見ていた。ニアはあかぎれだらけの手を抱えて、子供たちを見ないようにしてせっせと林檎の皮を剥いていた。しかしその林檎はニアの口には入らず、アップルパイになって遊んで帰ってきた子供たちが美味しそうに食べるのだった。
「それでは、まずはお化け屋敷を作りましょう」
ゼルが手を振ると、豪華な内装の部屋は消え失せて埃まみれの納屋のような空間に変わった。錆びた農機具に走り回るネズミの音、蜘蛛の巣が垂れていて如何にも不気味な空間であった。
「まあ、怖いところね」
「私は悪魔ですので、こういうところのほうが落ち着きますよ」
「そうなんだ。悪魔って変わっているのね」
「さて、ニアはどんなオバケになりますか?」
ゼルは虚空からオバケに変身する道具やメイクをたくさん取り出し始めた。
「それじゃあね、シーツのオバケがいい!」
「少し簡単ではないですか?」
「これがいいの!」
そう言うとニアは真っ白なシーツを頭から被ってしまった。
「ふふふ……ゼル、私が見える?」
ゼルはしっかりとシーツニアを見ていたが、敢えてこんなことを言った。
「あれ、ニアの姿が見えませんね……どこに行ったんでしょう?」
するとニアはゼルの背後へ忍び寄り、「わっ」と声を出した。
「うわあ、ニア! そんなところにいたんですね!」
真面目に驚いた声を出すゼルに、ニアは大声で笑った。
「まあ、ゼルの驚いた顔の可笑しいこと!」
「そんなに私の顔が面白かったですか?」
「だって、そんな無表情で声だけ慌てているんですもの!」
笑い転げるニアに、ゼルは決まりの悪そうな顔を見せた。
「……人間とは、難しいですね」
それからニアは黒猫のノクスに飾りをつけてオバケに仕立てたり、ゼルにもシーツをかぶせてお化け屋敷ごっこをたくさん楽しんだ。そしてお化け屋敷ごっこを終えた後は豪華な部屋に戻って玩具でたっぷり遊んだ後、キャンディを貰って眠りについた。とても笑って過ごした日であった。
『4日目:終了』
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