第7話 当事者の斎藤塔子さん

 東大ではあの駒場キャンパスの有名な時計塔の中で検査を受けた。テレビやYouTube動画であの駒場キャンパスの時計塔を見るたびに自分の過去を邂逅するのだろうか。東大の中はよそ者だからわかるすごさがあった。学生が受験勉強よりも熱心に勉強している。学内から伝わるアカデミックな雰囲気。そして、でかすぎる本屋とでかすぎる図書館。

 こんなところで学べたら充実感ややりがいもあって自己肯定感も爆上がりするかもしれない。そうは思ったものの、私は東大卒で非常に苦労した知り合いを知っている。詳しいことは伏せるが彼もまた私と同じ当事者だ。

 彼の身の上話を聞いて恵まれたように見える東大卒も一歩違えば、苦労するということを知った。私と同じ当事者、というニュアンスから想像してほしい。

 具体的な名前を挙げれば、本も出版された斎藤塔子さんという方がいらっしゃる。塔子さんは東大の看護学科を卒業されて、26歳の若さで自ら命を絶った。彼女は私と同じ二次障害の複雑性PTSDを抱えていた。

 医学書院から出版された『傷の声』にはその生々しい声が記録されている。塔子さんは数度の措置入院、自傷行為、希死念慮で苦しんだ。親との関係で悩み、性被害も受けた。塔子さんの本を読むと知能指数に関係している記述がある。

 塔子さんもまた、得意分野と苦手な分野に50以上の開きがあるというのだ。記述はそれくらいしか書いていないがおそらく、言語理解のIQは私と同じくらい160近くあり、苦手な分野は平均の100ほどの数値だったのだろう。

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