第2話 最上階の牢獄
誠 「君は大学生?」
純 「はい、、法学部の一年です」
そんなたわいもない話をしていると誠の運転する車が豪奢なマンションの地下駐車場に滑り込んだ。
車を降りエレベーターに乗り込むと、誠は最上階のボタンを押した。
密室に二人きりの状況に純はますます緊張した。
エレベーターがゆっくりと上昇していく。
窓の外には東京の夜景が広がりつつあった。
純は言葉も出せずガラスに映る自分の姿を見つめる。
濡れた髪に赤らんだ頬。
見るからにみすぼらしい大学生が最上級のホテルのような内装の中で浮いていた。
誠 「緊張しているのかい?」
誠が穏やかに尋ねる。
純 「あ、はい。こんなところ初めてなので」
誠 「遠慮しなくていい。我が家だと思ってくつろぐといい」
チンという静かな音と共にエレベーターの戸が開く
誠が家のドアを開ける
誠 「さあどうぞ」
恐る恐る入口に近づく
純 「おじゃまします」
誠 「まずはシャワーを浴びてきなさい。服は乾燥機に入れればすぐ乾くだろう」
バスルームへ向かう純の背中に誠が声をかけた。湯気で曇った鏡越しに見た彼の表情はどこか優しかった。
純 「ありがとうございます、、」
温かいシャワーを浴びていると、純は現実感がなくなっていくのを感じた。ついさっきまでホームレス同然の状態だったのに、今は最上階の億ションで湯に浸かっている。しかも相手は年上の謎めいた男性だ。
浴室を出ると清潔なタオルと共に新品のTシャツとスウェットパンツが用意されていた。誠のサイズだからか大きすぎるが、今の純にはありがたい。
ダイニングテーブルには湯気の立つ料理が並べられていた。ステーキ、サラダ、焼きたてのパン……どれも高級店でしか見たことがない品々だ。
普段の安食堂とはまるで別世界の食卓だった。
純はまるで夢の中にいるかのように呆然としていた。
誠 「どうぞ座って」
誠がグラスにワインを注ぐ。赤紫色の液体が揺れる様子さえ優雅に見える。
誠の声に我に返り、ぎこちなく椅子に腰掛ける。
純 「あの、、、本当にいいんですか?こんなご馳走、」
誠はワイングラスを傾けながら微笑んでいる。
誠 「遠慮なく召し上がれ。冷めてしまうよ」
フォークを持つ手が震える。緊張と空腹が交錯する。
一口ステーキを口に入れると、肉汁の濃厚な旨味が広がった。
純 「おいしいです……!」
感動のあまり言葉が詰まる。普段の生活では決して口にすることができないであろう食事に涙が滲んだ。
誠の目が細くなる。
誠 「喜んでいただけて何よりだ。ところで純くん」
グラスを置いた指先がテーブルを軽く叩く音が響いた。
誠 「これからどうするつもりだい?」
問いかけは穏やかだが、その奥に潜む威圧感を純は感じ取った。
純 「そ、それは……」
返答に窮する。現実は甘くなかった。バイト先には財布紛失の相談はしたが、次の給料までどう凌ぐか皆目見当がつかない。
誠の唇が薄く歪んだ。
誠 「僕の提案を聞いてみるか?」
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