一話 果たされない約束
「お兄様、朝ですよ」
そう呼ばれ目を開けると一人の女の子が俺を心配そうにのぞき込んでいた。どうやら作業している間にそのまま一時間ほど机で眠っていたみたいだ。
三徹もすればそうなるのも無理ないか...
「あぁ、おはよう
「しかし、お兄様。最近まともに眠れていませんよね?今日だって本当は起こしたくなかったんですよ。でも、お兄様が朝食の時間になっても起きてこないようなら起こしてくれというから...」
そう言って、俺の妹
なにをやらせても優秀、人当たりがよく、こんな俺にも優しい
本当によくできた妹だ、俺とは違って...
「面倒ばかりかけてごめんな、百花。でも、俺が頑張らなくちゃいけないんだ、父さんや母さんの代わりになれるように...」
そう、俺たち兄妹の両親は俺が十歳、百花は七歳のころに亡くなっている。
当時の俺は親がいなくなったことに絶望もしたし、これからどうしていけばよいか分からなかった。でも、いつまでも落ち込んではいられなかった。
妹である百花の存在があったからだ。
俺よりも幼い百花のため、亡くなった両親の代わりとなるためにできることをすると決めた。
今思えば妹がいたから人生に絶望していた自分に発破をかけることができていたのだと思う。
そこから俺たち兄妹は幸いにも親戚の家に住まわせてもらうようになり、いろいろなことをさせてもらった。
俺には全く成果がなかったが、百花の成長はすさまじかった。
勉強・芸術・スポーツ・武道など習ったことをすぐものにしていった。
おかげで今では、名門大学に通い容姿も相まって「
「二人とも、早く来ないとせっかく作ったご飯が冷めてしまうじゃないか」
そういって部屋に入ってきたのはいとこの
俺と同い年にして一道場を任せられるほどの武術の達人だ。
ちなみに俺ら兄妹が引き取られた親戚一家の一人娘でもある。
百花といい、湊といいみんな非凡でうらやましい限りだ...
「すまん、すぐ行く。いつも朝食ありがとう」
と、いやな雑念は払いつつ感謝の意を述べる。
「いやいや、好きでやってるんだから気にしなくてもいいよ。じゃ、百花と待ってるから。」
そう言って二人は俺の部屋を出る。
「二人には心配をかけるな...」
二人がいなくなった部屋で支度をしながらひとり呟いた。
それからは三人で朝食をとってから俺は会社へ向かおうとして玄関を出たとき百花が
「今日は早く帰ってきてくださいね、お兄様のために夕食を用意して待っていますから」
それに対して「分かったよ」と。守る気もないのに言った。
俺の真意に気づいたのか気づいていないのかわからないが百花は笑みを返し大学に向かった。
それが妹との最後の会話で約束ももちろん果たされることもなかった。
そして今現在おそらくこれまでの生活が祟って死んでしまったであろう俺の前にはおっとりとしたそれでいてえも言えぬ威圧感を感じさせる女性が俺に
「あなたには転生か、魂の輪廻に戻るかを選んでもらいます」
両親が死に己を殺しひたすらに妹のために身を粉にしてきて止まったかのようだった時間が心臓の高鳴りともに再び秒針を刻み始めたのを感じた。
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思い付きで書いているところがありますので不定期になりますが何卒よろしくお願いします。
前世人間、今オーガ 有馬 雫 @macaronipoteto2007
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