帝王揺るがす
ローレライとその反射を受けるエルクリッドが倒れる刹那にヤサカが動く。左半身が焼けただれたマダラの懐に入ると太刀を受け胸まで裂かれてしまうが、構わず刃を投げつけ喉元を刺し貫いた。
さらに繋がる鎖を引いて傷をより深く大きくし致命傷を負わせ、マダラも太刀の向きを変え一気に振り上げヤサカを討つ。
相討ち、だが高等術ディバイダーを使ってる分デミトリアには反射はなく、反面ヤサカが受けた傷と同じように身体が切られ血を飛ばすシェダはよろめき、だが踏ん張ってすぐにヒーリングのカードを切って治療しつつヤサカのカードを手にとった。
「シェダさん、大丈夫ですか?」
あぁ、とノヴァに返しながらヤサカのカードをしまうシェダにタラゼドも回復魔法を無言で施して支援し、マダラのカードを手に取るデミトリアをじっと捉えて警戒を続け、またリオに迫るミナヅキが健在なのも捉え咄嗟に手を上へ上げる動作と共に彼女の周囲に氷の壁を作り守りを作る。
(忙しいですが、それもまた致し方ないですね……!)
氷の壁を作ってからすぐに手を下ろして広げ、そして握る動作と共にミナヅキめがけて霧を集めそのままタラゼドは拘束魔法へ繋ぐ。
デミトリアがカードを抜いて切り返しに入ると、それを見て膝をついていたエルクリッドが歯を食いしばりカードを切った。
「スペル発動スペルアウト!」
バチっと静電気が走るかの如くデミトリアの使おうとしたカードが弾き飛ばされ、その刹那にリオが氷の壁ごとミナヅキ目掛けて霊剣を振るってその斬撃が閃く。
ひと呼吸置いてミナヅキの身体に線が走ってずるりと二つに分かれて倒れ、そしてカードへと姿を変えデミトリアの手元へと飛んで戻り、エルクリッドに妨害され足元に落ちたカードを拾いながら二枚をカード入れへとデミトリアは戻しフッと不敵に笑った。
「マダラとミナヅキを退けるか、中々の連携であったぞ」
偽りない賛辞に対してエルクリッド達は小さく頷いて応えるものの、十二星召筆頭リスナーの強さに戦慄する。
一対一で戦っていればまず勝てはしないのは言うまでもなく、たとえ勝てたとしてもデミトリアの消耗に対し大きな対価を払う結果となり敗北へ繋がっていくと。
詠唱なしで魔法を行使しその魔力も高いタラゼドの支援がなければ勝てていたかはわからない、そして、デミトリア側の余力はまだ十分にあり底知れぬ強さを秘めたままでいる。
エルクリッドとシェダはアセスを倒された反射を受け傷を癒やしたとはいえ消耗した事に変わりはなく、リオも霊剣アビスを手に戦っている事で身の危険は増した状態だ。タラゼドも余力はあれども複数同時に魔法を使わざるを得ない場面が多く、戦い終わるまでに立っていられるかはわからない。
(ここでイリアのカードを……ううん、それはまだって決めてますからね)
深呼吸しながらノヴァはイリアのカードを抜きかけるもすぐに戻す。デミトリアと戦うにあたって神獣イリアは重要になってくるが、彼の手にあるカードを退けるまでは使わないと取り決めた。
ゆっくりとエルクリッドが立ち上がりシェダも手当を終えると次のカードを引き抜き臨戦態勢へ、リオも一度仲間の所へ引き返して立て直し剣を構える。
「皆さん、まだ戦えますね」
「大丈夫だよリオさん」
「もちろんっすよ」
エルクリッド達の士気は高い。ノヴァもそれを見て安堵し、タラゼドと目を合わせ彼の微笑みでよりいっそう気を引き締めながらも良い状態で次へ備えた。
そんな相手の姿を見てデミトリアはかつて同じように挑んだ者達を重ね見ながら、ならばと次の試練たるカードを引き抜く。
「大地捻じり天を喰らいし生命の化身、その身を赤色の鱗に包み世界を呑み込む姿を現せ……いでよ、
その名と共にカードが赤き閃光となって消え、大地を揺らしながら大樹を思わせる巨体が蠢く。
真紅の鱗持つかの神獣は鎌首をもたげ、銀の飾りを持つ荘厳な姿をもって万物を睥睨する。
「生命を司る世界蛇エトラ……出てきましたね」
エタリラ最大の生命体にして神獣の一角を担うかの存在を前にタラゼドが魔力を滾らせ備え、応えるようにエルクリッドらもアセスを呼ぶ。
「仕事の時間だよセレッタ!」
「聖槍持つ英雄よ、黒き迅雷を穿き栄光を掴め! 迅雷槍士ディオン、神を貫いちまえ!」
エルクリッドは
世界最大の生命にして神獣の一角たるエトラ、それを己のカードとし扱うデミトリアは流石と言うべきだが、同時にエルクリッド達はエトラは単独で召喚した事や雰囲気から高等術ディバイダーは用いてないのを直感し、そこから筆頭リスナーの思考を読む。
(デミトリアさんにとってはエトラも戦力ではあるけど切り札じゃない、消耗がまだないから余裕をもって使えてる証拠でもある)
(ディバイダーなしで出してるならエトラを倒せば反射は与えられる、それがどのくらいかってのが鍵か……)
これまで戦ってきた経験が最適な戦術を導き出し、それは言葉として伝えずとも仲間同士で通じ合っていた。
確かな繋がりがそうさせる、相対するデミトリアはそれを感じながら尾錠に手をかけカードを抜いた。
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